4月になりました。
街で、新入生や新入社員の姿を見かけます。
新人たちがスタートを切る季節。
今から12年前の4月、「東京新聞」に寄稿したコラムがあったことを思い出しました。
当時は大学の教員だったこともあり、自分のゼミの卒業生を含め、新たに社会に出る皆さんへのエールのつもりで書いたものです。
ちょっと懐かしさもあり、再録してみますね。
新入社員の皆さんへ
毎年、この時期に読み返すのが、山口瞳さんの『新入社員諸君!』だ。
今、手元にあるのは、社会人になった昭和五十三(1978)年の春に購入した角川文庫版。かなりよれよれだが、今年もページを開いた。
どんなに時代が変っても、変わらない真理みたいなものが、ここにはあるからだ。
山口師曰く、
「まず、会社へはいったら、学校とちがっていろんな人間がいることを知っておいてください」
そう、キツネもタヌキも、オオカミだって生息するのが会社だ。でも、だからこそ一人ではできない仕事も可能になる面白さがある。
また師曰く、
「誠心誠意ではたらき有能な社員になってください。有能な社員とは、役に立つ社員のことです。役に立つ社員とは、何か自分のものを持っている社員のことです」
これも至言だ。いま“自分のもの”として何を、どれだけ持っているのか。新人じゃなくても、常に再点検すべきなのだ。
さらに山口さんは言う。
「新入社員よ、ボヤキなさんなよ。ブウブウいうなよ。キミタチは新人なんだよ。一所懸命やれよ。勉強しなさいよ。勉強といってもいろんな勉強があるんだよ。それを知るのが勉強なんだ」
社会に出ると、自分が、いかに無知であるかがわかってくる。そんな時、この言葉に励まされた。
新入社員の皆さん、しばらくは大変だけど、まずは一人前を目指そう。
(東京新聞 2012.04.04)