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本当に終わりなんだなあ、と思った。
白い表紙に「30年間 ありがとうございました。」の文字。
雑誌『広告批評』、ついに最終号である。
創刊時から、ほぼ全部を購入し、読んできた。
広告とかCMとかに留まらない、いわば“文化”や“時代”に関する総合誌として読んできた。
この雑誌が伝えてくれたのは、たぶん、“ものの見方”だったのだ、と思う。
特に、番組にも出ていただいた天野祐吉さんには、ある意味で「育ててもらった」部分が、すごくある。
私より先に、この最終号を手にした娘が、巻末の天野さんの文章「広告批評の三十年」と、いろんな企業からの“さよならメッセージ広告”を読んで、「泣けちゃった」と言っていた。
例えばソフトバンクのものは、あのホワイト家の世帯主、白いワンちゃんが涙を流しているビジュアルに、「広告批評はもう叱ってくれないぞ!(ソフトバンクは、さみしいぞ!)」のコピー。
今、大学生の娘にとっても、高校時代からの愛読誌を失ったことになる。
書棚から、印象深いものを、取り出してみた。
1986年の6・7月合併号。分厚い。特集は「東京名物評判記」だ。
役者、戯作者、娘、瓦版屋などの“評判”が並んでいる。つまり<人物評判記>である。
パラパラとめくれば、「瓦版屋」(マスコミ人)の中には、久和ひとみさんがいる。逸見政孝さんもいる。
「絵師」のページには、伊丹十三さんがいる。岡本太郎さんもいる。
さらに「楽師」なら、尾崎豊さんや、懐かしのラジカルTV(原田大三郎+庄野晴彦)まで登場しているのだ。
「誰が、どんな評判になっていたのか」を通じて、1986年の6月のこの国が、どんなだったか、“体感”できる。
こうして、バックナンバーを次々と開いていくと、確かに何かが変化してきたことを実感する。しかも同時に、「何も変わっちゃいないんじゃないか」と思ったり・・・。
流行と不易、と言ってしまえば理に落ちるが、一つの雑誌が映し出してくれていたものは、(少なくとも私にとって)とても大きかったのだ。
天野さん、島森(路子)さん、ありがとうございました!
そして、おつかれさまでした!