碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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雑誌『広告批評』、ついに最終号

2009年04月29日 | 本・新聞・雑誌・活字


本当に終わりなんだなあ、と思った。

白い表紙に「30年間 ありがとうございました。」の文字。

雑誌『広告批評』、ついに最終号である。

創刊時から、ほぼ全部を購入し、読んできた。

広告とかCMとかに留まらない、いわば“文化”や“時代”に関する総合誌として読んできた。

この雑誌が伝えてくれたのは、たぶん、“ものの見方”だったのだ、と思う。

特に、番組にも出ていただいた天野祐吉さんには、ある意味で「育ててもらった」部分が、すごくある。

私より先に、この最終号を手にした娘が、巻末の天野さんの文章「広告批評の三十年」と、いろんな企業からの“さよならメッセージ広告”を読んで、「泣けちゃった」と言っていた。

例えばソフトバンクのものは、あのホワイト家の世帯主、白いワンちゃんが涙を流しているビジュアルに、「広告批評はもう叱ってくれないぞ!(ソフトバンクは、さみしいぞ!)」のコピー。

今、大学生の娘にとっても、高校時代からの愛読誌を失ったことになる。


書棚から、印象深いものを、取り出してみた。

1986年の6・7月合併号。分厚い。特集は「東京名物評判記」だ。

役者、戯作者、娘、瓦版屋などの“評判”が並んでいる。つまり<人物評判記>である。

パラパラとめくれば、「瓦版屋」(マスコミ人)の中には、久和ひとみさんがいる。逸見政孝さんもいる。

「絵師」のページには、伊丹十三さんがいる。岡本太郎さんもいる。

さらに「楽師」なら、尾崎豊さんや、懐かしのラジカルTV(原田大三郎+庄野晴彦)まで登場しているのだ。

「誰が、どんな評判になっていたのか」を通じて、1986年の6月のこの国が、どんなだったか、“体感”できる。


こうして、バックナンバーを次々と開いていくと、確かに何かが変化してきたことを実感する。しかも同時に、「何も変わっちゃいないんじゃないか」と思ったり・・・。

流行と不易、と言ってしまえば理に落ちるが、一つの雑誌が映し出してくれていたものは、(少なくとも私にとって)とても大きかったのだ。

天野さん、島森(路子)さん、ありがとうございました! 

そして、おつかれさまでした!

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