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4月だ。
4月1日だ。
学校なら新入生、会社なら新入社員の登場だ。
今から数十年前の4月1日、私も某出版社の入社式に臨んだ。
といっても、板の間の社長室で、創業社長(故人)のお話を聞いただけだったが、やはり緊張していたのを覚えている。
以前、毎年4月1日には、作家の山口瞳さんの新入社員(新社会人)に向けたエッセイが新聞に載ったものだ。
山口さんが亡くなって一時中断し、その後は伊集院静さんのものが掲載されるようになった。(提供は、ずっとサントリー)
もちろん伊集院さんの文章は素敵だが、この日は、今でも、山口さんの“激励”が読みたくなる。
山口さんには『新入社員諸君!』というタイトルの、ありがた~い本があるので、新入社員諸君は、ぜひ読んでみていただきたい。
たとえば、こんな文章があるのですよ・・・
まず、会社へはいったら、学校とちがっていろんな人間がいることを知っておいてください。年齢が異なるのですから。
立身出世の本やマネージメントの書物を読むこともムダではありませんが、まず同僚・上役と仲良くすることが先決です。これは決して妥協でもイヤラシイことでもありません。人間と人間のおつきあいということです。
つぎに申し上げたいことは、一所懸命にはたらきなさいということです。
誠心誠意ではたらき有能な社員になってください。有能な社員とは、役に立つ社員のことです。役に立つ社員とは、何か自分のものを持っている社員のことです。
誠心誠意はたらきなさい。ミミッチイ考えを起こしなさんな。給料分だけはたらけばいいだろう、なんて薄ぎたない根性をお持ちになったらオシマイだよ。
つぎに、こんなこともいいたいね。自分の会社の悪口は金輪際いうな。どんなことがあろうと、クチがくさっても悪口をいうな。同僚のワルクチ、上役のワルクチを外部に向かっていうな。
なぜでしょう。いったら損だからです。そんなツマラナイ会社に勤めていると思われたら、その人がバカにみえるからです。くだらない上役につかえているなどといえば、あなたがバカに見えますよ。
新入社員よ、勇敢に発言しなさい。たたきなさい。たたかれなさい。それが勉強です。会社のタメです。自分のためです。
新入社員よ、ボヤキなさんなよ。ブウブウいうなよ。キミタチは新人なんだよ。一所懸命やれよ。勉強しなさいよ。勉強といってもいろんな勉強があるんだよ。それを知るのが勉強なんだ。
新入社員よ、どんなことがあろうと、どんな変な会社にはいっても、どんなポストにつこうと、どんなに意地の悪い上役の下につこうと、最低三年間は辛抱しなさい。なぜか。
新入社員を一人いれるために、会社はどれだけの費用をつかっているか。どれだけの神経をつかっているか。それも考えてください。それを考えれば三年間の辛抱はできるはずです。
三年間辛抱して、どうしてもイヤならやめなさい。しかし三年間は誠心誠意つくしなさい。それが「義理」というものです。三年間の辛抱は決してムダにはなりません。私は、そう断言する自信を持っています。
困ったことがあれば、私のところへ聞きにいらっしゃい。誠心誠意(シツコイくらい)教えてあげます。
ああ、いい気持ち。
・・・ほらね、すごいでしょう(笑)。
他にも、紹介していたら全文転載てなことになりそうなくらい、素晴らしいアドバイスがてんこ盛りなのだ。
でも、新人じゃなくなった頃に、また読み返してみると、そのすごさが、もっとよく分かるはず。
今日、4月1日の入社記念として入手し、熟読することを、強くオススメします。
というわけで、新入社員諸君、おめでとう!
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