碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

テレ東「ナンカゲツマチ」は、“ゆるふわ”な深夜版「和風総本家」

2015年12月16日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今回は、テレビ東京「ナンカゲツマチ」を取り上げました。


テレビ東京系「ナンカゲツマチ」
“ゆるふわ”な雰囲気が心地よい
深夜版「和風総本家」

待つのが苦手なせいか、いわゆる「行列のできる店」に並んだことがない。ディズニーランドなどでは、待つこともイベントとして楽しむのがコツだというが。要するに“待つだけの意味があるか”の問題で、それは待つ人のもつ価値観にも関わってくる。

テレビ東京系で先月末から始まった深夜バラエティ「ナンカゲツマチ~よくそんなに待てますね~」が面白い。登場するのは、何かを手に入れるために、長い間ずっと待ち続けてきた人たちだ。

たとえば、20万円の「世界に一台の手作りミニカー」を5年待った男性がいる。オスカードロモスという幻のスポーツカーの実物を入手したことを記念し、そのミニカーを発注したのだ。番組では制作者の精緻な仕事ぶりも見せてもらった。

また、3年待ちで220万円の木製自転車も出てきた。ロードバイクと呼ばれる高速走行のための自転車だ。マホガニー製のそれは美しいだけでなく、性能も優れていた。

簡単に入手できない商品や、待たされるサービスには、プロたちの卓越した技が潜んでいることがよく分かる。いわば“深夜の和風総本家“だ。

スタジオ代わりの銭湯「松の湯」には、松嶋尚美、松井玲奈、クリス松村の3人と司会の松丸友紀アナウンサー。「松(待つ)」に引っかけた面々だが、感想トークの深夜らしい“ゆるふわ”な雰囲気が結構心地よい。

(日刊ゲンダイ2015.12.15)

WOWOWとマツダ “同級生”社長、奮闘中!

2015年12月14日 | テレビ・ラジオ・メディア



松本深志高校時代の同級生2人が、現在発売中の雑誌に、“社長”として登場しています。

一人は、WOWOWの社長の田中晃君。

放送批評専門誌「GALAC」の1月号、その巻頭インタビューです。

現在、WOWOWの契約数は、過去最高の280万を超え、300万をにらむ勢い。

ドラマWなどオリジナルコンテンツも好評で、元気なWOWOW。

「国内外の出演者やアーティストたちが、WOWOWで番組を作りたいと集まってくるような、“最強のプロデューサー集団”をわれわれは目指します」と語っている。

田中君には、ますます頑張って欲しいです。


もう一人は、マツダの社長である小飼雅道君。

発売中の「週刊文春」(12月17日号)の記事、「経営トップが明かす なぜマツダは復活できたのか」の取材に応じています。

「引き締めることも重要だが、自由闊達な風土も維持したい。(中略)報告しやすいように私の部屋はいつでも入れるようにしている」とのこと。

その好調を支えるのは、スカイアクティブエンジンや、ラインナップにおける「共通化」と「差別化」などもさることながら、「常識」の否定という“トライする精神”が大きいのだと思います。

小飼君も頑張れ。



週刊文春の記事「好きな俳優」「嫌いな俳優」でコメント

2015年12月13日 | メディアでのコメント・論評



発売中の「週刊文春」最新号に、恒例の『「好きな俳優」「嫌いな俳優」2015冬』が掲載されました。

アンケートの回答は3700通。

この特集記事の中で、コメントしています。

まずは、
「好きな女優」ランキング

1位(2) 能年玲奈
2位(1) 綾瀬はるか
3位(5) 満島ひかり
4位(-) 松 たか子
5位(-) 吉田 羊
6位(-) 天海祐希
7位(-) 北川景子
8位(4) 吉永小百合
9位(-) 宮崎あおい
10位(-) 新垣結衣 
10位(-) 波瑠 

カッコ内は前回。(-)は前回ランク外。



こうして眺めると、やはりドラマの主演や、話題作への出演が大きく影響しているみたいですね。

ちなみに、私が聞かれたのは、綾瀬はるかさんについてでした。

記事全体は、ぜひ本誌をご覧ください。

以下、コメント部分です。


今年公開の映画「海街daily」での演技を高く評価するのは、上智大学の碓井広義教授(メディア論)。

「しっかり者の長女役でしたが、綾瀬さんのたたずまいがすごく印象的です。凛とした美しさと強さが同時にあり、往年の原節子さんを思い出しました。

一方で綾瀬さんが持つ自然なユーモアもとても良くて、昨年の主演ドラマ『きょうは会社休みます。』では“こじらせ女子”という恋に臆病な三十路OLの役。

他の女優さんなら見ていて気恥ずかしくなるような役柄も、綾瀬さんが演じると自然に見えてしまう。美人なのに少し天然、ここが一番の魅力ですね。コメディもできる“平成の原節子”です」



「嫌いな女優」ランキング

1位(1) 泉ピン子
2位(1) 藤原紀香
3位(10) 上戸 彩
4位(2) 石原さとみ
5位(-) 前田敦子
6位(4) 広瀬すず
7位(-) 米倉涼子
7位(8) 綾瀬はるか
9位(-) 有村架純
10位(-) 沢尻エリカ


・・・うーん、「好きな女優」とダブる人もいますね。

味方が多ければ同時に敵も、でしょうか。


「好きな俳優」ランキング

1位(1) 木村拓哉
2位(2) 阿部 寛
3位(5) 西島秀俊
4位(-) 斎藤 工
5位(7) 岡田准一
5位(-) 松坂桃李
7位(-) 鈴木亮平
8位(3) 堺 雅人
8位(9) 福山雅治
8位(-) 佐藤浩市


「嫌いな俳優」ランキング

1位(1) 木村拓哉
2位(2) 福山雅治
3位(5) 堺 雅人
4位(-) 向井 理
5位(7) 水谷 豊
6位(-) 綾野 剛
7位(-) 東出昌大
8位(3) 小栗 旬
8位(9) 香川照之
8位(-) 斎藤 工
8位(-) 福士蒼太


(週刊文春 2105.12.17号)

書評した本:『NHKはなぜ、反知性主義に乗っ取られたのか』他

2015年12月11日 | 書評した本たち



「週刊新潮」の書評欄に書いたのは、以下の本です。

上村達男 『NHKはなぜ、反知性主義に乗っ取られたのか』
東洋経済新報社 1620円

NHKの長い歴史の中で、これほどひどい人物が会長だった例はない。元・経営委員長代行の著者は、巨大組織のトップにふさわしい素養・知見が備わっていないだけでなく、コミュニケーション能力の欠如も指摘する。いくつもの「なぜ」に答えた重要証言だ。


西田宗千佳 
『ネットフリックスの時代~配信とスマホがテレビを変える』

講談社現代新書 821円

膨大な数の映画やオリジナル作品で、ネット配信ビジネスの世界的覇者となった「ネットフリックス」が日本に上陸した。その魅力と衝撃度。迎え撃つ日本の状況。先行する音楽産業の大変化。「見放題」と「イッキ見」がテレビにもたらすものは何なのか。


菊池紗緒 『ハミル、時空を飛ぶ』 
世界文化社 1080円

著者は科学ジャーナリスト。素粒子論、量子論、一般相対性理論といった物理学理論を、巧みなストーリーテリングでファンタジー小説に昇華させた野心作だ。主人公の少年ハミルと共に物語世界を巡りながら、自然科学の不思議と面白さを再発見できる。眠れる想像力にさわやかな刺激を。

(週刊新潮 2015.12.03号)


斎藤美奈子 『ニッポン沈没』
筑摩書房 1728円

話題の本3冊をベースとした、鋭い社会時評である。震災、原発事故、安倍晋三再登場、集団的自衛権、原発再稼働など、この5年間で世の中がいかに危うくなってきたかがよく分かる。さらにメディアのチェック機能低下も大きな罪だ。沈没をどう防ぐのか。


水川薫子、高田秀重 『環境汚染化学』 
丸善出版 3688円

現在、1億種を超えているという化学物質。その中から汚染物質が生まれ、環境汚染が進行していく。本書が伝えるのは、汚染の分布と動態を予測する研究の最前線である。石油汚染、プラスチック汚染、ダイオキシンなど、今後の環境汚染問題を考える際の必読書だ。

(週刊新潮 2015.12.10号)


週刊朝日で、「流行語大賞」についてコメント

2015年12月10日 | メディアでのコメント・論評



流行語大賞でクレーム殺到 
“アベ政治”タブー化で沈黙

今年話題になった言葉を選ぶ「2015ユーキャン新語・流行語大賞」。12月1日に発表されたが、「世相をあらわしていない」と疑問の声が上がっている。

年間大賞の発表に先立ち、選考委員らは「今年は政治の季節だった」「政治色が強かった」「主役は永田町にいた」と「政治」を強調したにもかかわらず、大賞に選ばれたのは「爆買い」「トリプルスリー」。

「爆買い」は中国人ら訪日観光客が大量に日本製品を買うこと、「トリプルスリー」はプロ野球で打率3割、30本塁打、30盗塁以上の好成績を残したソフトバンクの柳田悠岐選手、ヤクルトの山田哲人選手の活躍を指すが、一体どれだけの人が聞いたり使ったりしただろうか?

「トリプルスリーは野球好きでないと知らないですよ。それって流行語なの?と思いました。我々の感覚とずれがあるのではないか」

上智大学新聞学科の碓井広義教授は不満をあらわにする。


トップ10には、「アベ政治を許さない」「一億総活躍社会」「SEALDs」と、政治に関わる言葉が三つ入った。ノミネート段階では50語のうち13語が政治に関わる言葉だが、それに対する「クレーム」があったという。

「ノミネートが発表されると一般の方から電話やメールがありました。これを入れないのはおかしい、というものから、政治関連が多すぎる、(選考委員の考え方に沿って)左寄りなのではないのかという意見までありました」(新語・流行語大賞事務局)

それを意識してか、選考委員のやくみつる氏は授賞式で「各委員にはそれぞれの政治スタンスはあるが、選考はそれに左右されることはない」と強調していた。

だが、政権に遠慮して、政治に関する言葉は大賞に選ばなかったのではないかとの疑念もくすぶる。

「今年は当然、『安保法案』や『イスラム国(IS)』が入っていておかしくない。むしろ、なぜ『安保法案』が入らないのか。安倍首相に配慮したのではないかとさえ勘ぐってしまう」(碓井教授)


選考委員長でジャーナリストの鳥越俊太郎氏は言う。

「大賞は言葉の存在感とインパクトで選ぶが、今回はバランス感覚も多分に働いた。政治には賛否両論があるが、どちらかを選んでどちらかを選ばないわけにはいかないでしょう」

物言えば唇寒し。

(週刊朝日 2015年12月18日号)


・・・「不満をあらわにする」って言われても(笑)。

成長した“朝ドラ女優”瀧本美織のドラマ10「わたしをみつけて」

2015年12月09日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今回は、NHKドラマ10「わたしをみつけて」について書きました。


NHKドラマ10「わたしをみつけて」
修業の旅に出ていた朝ドラ女優が
成長して“故郷”へと帰還

土曜ドラマの秀作「破裂」に続き、ドラマ10「わたしをみつけて」の舞台もまた病院である。しかし、こちらの主人公は医師ではなく准看護師だ。

弥生(瀧本美織)は、生まれてすぐ病院の前に捨てられ、養護施設で育った。自分の“居場所”を守るため、子どもの頃から「いい子」であることを自分に課してきた。一種のトラウマだ。

勤務する病院で、院長(本田博太郎)の誤診が原因で患者が死亡する。隠蔽する院長と、患者の命を守ろうとする看護師長(鈴木保奈美)。自分の殻に閉じこもっていた弥生も、がん患者の菊地(古谷一行)との交流を通じて変わり始める。

決して明るい物語ではない。ヒロインの内面も複雑だ。しかし瀧本美織の繊細な演技が見る者を引っ張っていく。また鈴木保奈美の存在感と余裕のアシストも、ドラマ全体に大きく寄与している。

瀧本といえば、2010年秋のNHK朝ドラ「てっぱん」を思い浮かべる人は多い。大阪でお好み焼き屋を再開させようと奮闘したヒロインは、当時19歳だった。あれから5年。宮崎駿監督作品「風立ちぬ」の菜穂子もよかったが、今回その表現力を再認識させられた。

このドラマの制作はNHK大阪。制作統括の三鬼一希は、「てっぱん」のプロデューサーでもある。修業の旅に出ていた朝ドラ女優が、成長して故郷へと帰還したのだ。

(日刊ゲンダイ 2015.12.08)


NEWS23「意見広告」問題について

2015年12月08日 | 「北海道新聞」連載の放送時評


北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。

今回は、「NEWS23」意見広告をめぐる問題について書きました。


圧迫される放送の自律と報道の自由
事業者の見解 示すべき

11月の中旬、紙面全体を使った意見広告が読売新聞と産経新聞に掲載された。題して「私たちは、違法な報道を見逃しません」。

広告主は「放送法遵守を求める視聴者の会」という団体。報道番組「NEWS23」(TBS―HBC)のキャスター、岸井成格氏(毎日新聞特別編集委員)を非難する内容だった。

今年9月、参議院で安保関連法案が可決される直前、岸井氏は番組内で「メディアとしても廃案に向けて声をずっと上げるべきだと私は思います」と述べた。この発言を、意見広告は番組編集の「政治的公平性」の観点から、放送法への「重大な違反行為」に当たると断じているのだ。

確かに放送法第4条には「政治的に公平であること」や、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」が規定されている。

しかし、それは一つの番組内における政治的公平ではなく、事業者が放送する番組全体のそれで判断されるべきものだ。その意味で、岸井発言は決して“違反行為”などではない。

個人に対する新聞での意見広告というのも異例だが、それ以上にこの意見広告を目にした時の違和感は、“視聴者(市民)の意見”という形をとりながら、メディアコントロールを強める現政権の思惑や意向を見事に体現していたことだろう。

「NEWS23」は、政権に対しても“言うべきことは言う”姿勢を持った貴重な報道番組だ。故・筑紫哲也氏がキャスターを務めていた頃と比べて弱まってはいるが、岸井氏が孤軍奮闘して引き継いできた大事なカラーである。

昨年の11月、同番組に出演した安倍首相は、VTRで紹介された街頭インタビューで自身にとって厳しい意見が流れると、生放送中にも関わらず「これ、ぜんぜん(国民の)声を反映していませんが。おかしいじゃないですか」と抗議した。そうした経緯も、今回の異様な意見広告で思い起こされた。

また、もう一つ気になるのは、この意見広告に対してTBSが反論や抗議を行っていないことである。岸井発言についてはもちろん、放送法や報道番組に対する認識を、放送事業者の見解として明確に示すべきだ。

沈黙している間に、一部の報道では、岸井氏の番組降板説まで伝えられている。もしも今回の件を受けて、トカゲのしっぽ切りのように降板させるようなことがあれば、放送の自律や報道の自由を自ら放棄することになる。強い関心をもって推移を見つめたい。

(北海道新聞 2015.12.07)


女性セブンで、好調の「あさが来た」について解説(2)

2015年12月07日 | メディアでのコメント・論評



発売中の「女性セブン」最新号で、好調のNHK朝ドラ「あさが来た」について解説しました。

その記事がNEWSポストセブンにアップされたので、転載しておきます。

先日の続き、という感じです。


『あさが来た』あさ 
大変なことが起きる直前目が大きく開く

朝の連続テレビ小説『あさが来た』が絶好調だ。視聴率は放送開始から7週連続20%を超え、11月20日には番組史上最高視聴率25%を記録した。

ヒロインのモデルが魅力的なだけではここまでの人気にはつながらない。『あさが来た』にはヒットの仕掛けがいたるところにちりばめられている。

主人公・あさを演じる波瑠(24才)、そして姉のはつ役の宮崎あおい(30才)のダブルヒロインが、ドラマの見どころのひとつだ。

「もしも、はつが描かれていなかったら、ここまで奥行きのある物語にはならなかったでしょう。あさとはつという、同じ時代を生きながら対照的なふたりを描くことで、見ている側はあさの気持ちになったり、はつの気持ちになったりで、1粒で2度おいしい(笑い)。これは非常に効果的な設定です」(上智大学文学部教授の碓井広義さん)


そのふたりのヒロインを巡る物語は山あり谷ありで実にテンポよく進んでいき、はらはらしたり涙したり。次回が気になって仕方がない。

「1回15分の放送の中に、泣けたりドキドキしたりする山場、“次はどうなるの?”というシーンが毎回入っています。最近、発見したんですが、何か大変なことが起きる直前にあさは必ず目を開きます。その開き具合で、どれくらい大変なことが起こるのかわかります。そうした細かい演出は、視聴者も見ていて楽しいですよね」(コラムニストのペリー荻野さん)

そうした物語を私たちがワクワクドキドキ楽しめるのは、時代と場所が絶妙だから。ペリーさんが続ける。

「江戸時代の関西は商人、庶民の街です。庶民目線で動乱の時代をたくましく生きようとする商人には、たとえ、あさがお金持ちでも共感しやすい。これが現代劇だと、自分とヒロインを重ねすぎて疲れてしまう。江戸時代なら現代とは別の世界なので、安心してドラマを楽しめます。江戸時代の関西は、ほどよい舞台設定なのです」

大ヒットする朝ドラには、視聴者は共通してこんな思いを抱くという。

「私たちはみんな、登場人物の親戚になるんです。親戚のように彼女たちの喜怒哀楽を見守り、人生が心配になって仕方ない。そうでないと半年間も見られません。今や全国には、はつやあさの親戚がたくさんいます」(ペリーさん)

モデルの広岡浅子の波瀾万丈な人生に加え、スタッフや出演者の創意工夫で作り上げている『あさが来た』もそんな朝ドラといえるだろう。明日のあさが楽しみだ!

(女性セブン2015年12月17日号)

芸歴50年目で「石倉三郎」映画初主演のワケ!?

2015年12月06日 | メディアでのコメント・論評



石倉三郎が芸歴50年目で映画初主演
大ベテランによる初主演続く

名脇役として知られる石倉三郎が11月22日、都内で行われた初主演映画『つむぐもの』(16年春公開)の完成報告舞台挨拶に登場した。

同映画は、日韓国交正常化50周年記念作品で、ある日突然、脳腫瘍で倒れた石倉演じる頑固な和紙職人と、ひょんなことから彼の介護をすることになった韓国人女性との交流を描いたヒューマンドラマ。

石倉にとっては、芸歴50年、68歳にして初の主演映画となる。

上智大学文学部新聞学科教授の碓井広義氏は、「いわゆる“強面”と言われる風貌ですが、観る人はその奥に一本筋の通った男らしさのようなもの、一般的な役者では表現できない人間の凄みを感じるんではないかと思います。そこが魅力。まさに「昭和の男」で、言葉はもちろん、背中、手、表情だけで魅せることのできる石倉さんには、今回の職人役はぴったりなのではないでしょうか」と初主演作に期待を寄せる。

また、先週末21日には、笹野高史が67歳にして初主演を務めた映画『陽光桜』が公開と、大ベテラン俳優による主演が目立つ昨今の状況についても「今どきの若くてかっこいい俳優を主役に据えればいいという風潮が変わってきたのはとてもいいことだと思います。それなりの年齢の役者が主役を務めるということはこれまで海外でなら十分にあり得ましたが、日本ではなかなかなかった。日本のエンタテインメントの世界に多様性が生まれてきた証拠でもあり、1つには楽しむ側の成熟もあるのでしょう」と語っている。


(オリコン「コンフィデンス」2015.11.30号)

女性セブンで、好調の「あさが来た」について解説(1)

2015年12月05日 | メディアでのコメント・論評



発売中の「女性セブン」最新号で、好調のNHK朝ドラ「あさが来た」について解説しました。

その一部がNEWSポストセブンにアップされたので、転載しておきます。


あさが来た 
有名ではない題材のため
期待感持て人気との分析

宮藤官九郎脚本のNHK連続テレビ小説『あまちゃん』(2013年)は業界から注目を集めて世間に広まった朝ドラだったといわれる。それに対して、現在放送中の『あさが来た』は、一般視聴者から火がついた朝ドラだといえるだろう。あさのお世話係・うめ役の友近(42才)が言う。

「『あさが来た』は脚本を読んだ時、めちゃくちゃ面白くて、絶対人気出るだろうと思ったんです。でも、あまり騒がれず静かにスタートしました。ふたを開けてみれば、ありがたいことにお茶の間のみなさんが見てくれています。最近、ようやく芸人やタレントが“そんな面白いんや”って、騒いできました。遅いわって(笑い)」

友近の言う通り『あさが来た』が絶好調だ。視聴率は放送開始から7週連続20%を超え、11月20日には番組史上最高視聴率25%を記録した。つまり、日本人の4人に1人が見ている計算になる。

幕末から明治・大正を生き抜いた実業家・広岡浅子をモデルにしたヒロインの人生を描いたドラマが、なぜここまで人気なのか。

まずは、なんといっても広岡浅子自身の人生がびっくりぽんなことだろう。

上智大学文学部教授の碓井広義さんは言う。

「もともと、誰もが知っている有名人ではありませんが、あまり知られていないことがかえってよかった。“これからどんなすごいことをやるんだろう”という期待感を持ちながら見ることができますね」


実在の広岡浅子とは、どんな女性だったのか。『あさが来た』の原案『小説 土佐堀川』(潮出版社)の著者・古川智映子さんはこう話す。

「ドラマのように子供の頃から自己主張を持っていた女性でした。彼女は、自分の人生を『七転八起』ではなく『九転十起』と言っています。九回転んでも十回立ち上がるような人間でありたい。この言葉に彼女の波瀾万丈な生き方すべてが表れています」

現在ドラマでは、炭坑経営に尽力しているが、史実ではこれからどうなったのか。

「炭坑が成功するまでには、10年以上の歳月がかかりました。その炭坑を政府が高額で買い取って、彼女は全国的に有名になっていったのです」(産経新聞編集委員の石野伸子さん)

持ち前の『九転十起』根性で炭坑ビジネスを成功に導いた浅子は、それから、さまざまな事業に着手していく。

「大隈重信や伊藤博文、渋沢栄一といった、当時の政財界の大物と交流をして、彼女は実業家としてますます成長していきます。その知識と人脈で、日本初の女子大・日本女子大学の設立にかかわりました。また、大同生命保険の創業にも深く携わります。まさにスーパーキャリアウーマンでした」(石野さん)

(女性セブン 2015年12月17日号)


まだ見てないなら、お急ぎを!今期ドラマ「最終案内」

2015年12月04日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

10月に始まった今期の連続ドラマが、いずれも終盤に入った。「下町ロケット」ばかりが話題になっているが、中には隠れた名品もある。まだ見てないなら、お急ぎを。

●TBS系「コウノドリ」
綾野剛がノンシャランと魅せる異色の産科医


「下町ロケット」の大ヒットで影が薄くなっているが、同じTBS系の隠れた佳作としてオススメしたいドラマがある。「コウノドリ」だ。

まず、主人公である鴻鳥サクラ(綾野剛)のキャラクターが興味深い。患者の気持ちに寄り添い、出産という大事業をサポートしていく優秀な産科医である。しかも天才ピアニスト(病院にはナイショ)という別の顔も持つ。実の親を知らずに育つ中で、自分の思いをピアノで表現することを知ったのだ。この謎の部分が物語に陰影と奥行きを与えている。

毎回の読み切り形式だが、一組の夫婦の症例を軸にしながら、他の患者たちの妊娠や出産をめぐるエピソードも同時進行で織り込んでいく。思えば、妊娠・出産は病気ではない。だから健康保険などは適用されない。しかし、さまざまなリスクを伴うことも事実。産科には日常的に生と死のドラマが共存するのだ。この構成は、「ゲゲゲの女房」(水木しげる先生に合掌)などの脚本で知られる山本むつみのお手柄である。

産科医にもわからないことはあるし、出来ないことも多い。当然のことだ。だが、鴻鳥はその当然を真摯に受けとめ、自分たちに何が出来るかを徹底的に考えていく。生まれたばかりの新生児も含め、毎回本物の赤ちゃんが多数登場するのもこのドラマの特徴だ。リアリティーを追求する制作陣の細部へのこだわりが、十分な効果を生んでいる。


●テレビ朝日系「サムライせんせい」
タイムスリップしてきた幕末コンビの“競演”


2013年から14年にかけて放送された「信長のシェフ」(テレビ朝日系)。料理人の若者(玉森裕太)が戦国時代にタイムスリップし、なんと織田信長の“お抱えシェフ”となる奇想天外な物語だった。この「サムライせんせい」は、その逆パターンだ。突然、幕末から現代へ、時空を超えてやってきた志士たちが巻き起こす珍騒動である。

切腹したはずの武市半平太(錦戸亮)は、ちょんまげ姿のまま神里村の路上で目覚める。そして、人の良い元小学校校長(森本レオ)が経営する学習塾の臨時講師となった。半平太が今どきのヒトやモノに驚く様子や、周囲の村人たちとの間で起こす摩擦が、我々が当たり前だと思っている社会や常識へのプチ批評になっているところがミソだ。

半平太より先にタイムスリップしてきていた坂本龍馬(神木隆之介)との対比も効いている。この龍馬、すっかり現代に馴染んでおり、パソコンやスマホも駆使するフリーライターになっていた。神木の演技は相変わらず達者だ。武士のままの半平太とは異なる軽さと如才なさで笑わせる。錦戸も神木とからむシーンが一番いきいきとしており、いわば男2人のダブル主演作である。

なぜタイムスリップしてきたのか。どうしたら過去に戻れるのか。戻ったとして彼らの運命は変わるのか。そんな疑問はひとまず置いて、のんびり楽しむ深夜ドラマだ。


●テレビ東京系「孤独のグルメ」
目立たぬように高めている“ドラマ度”


「孤独のグルメ」が登場したのは3年前のことだ。今回は、堂々の第5シーズンである。しかも、これまでの深夜バラエティ枠から、「ドラマ24」というブランド枠へと移行した。局内外で、テレビ東京の“看板ドラマ”として認知されたことになる。

とはいえ、主人公の井之頭五郎(松重豊は完全に一体化)自身に大きな変化はない。例によって仕事で訪れた実在の町で、偶然見つけた大衆的な店(こちらも実在)に入り、ひたすら胃袋を満たすのみだ。そのシンプルな構成と潔さがファンには堪らない。

それでいて、新たなシリーズに全く手が加わっていないかと言えばウソになる。例えば「千葉県いすみ市大原」編では、五郎が港で伊勢エビを見かける。おお、今回は「千葉で伊勢エビ?」という意外性で来たかと思いきや、それはフェイントだった。結局、飛び込んだ食堂で食べたのは「ブタ肉塩焼きライスとミックスフライ」である。この地元いすみ産のブタ肉、厚切りの塩焼きが何ともうまそうで堪らない。

また食堂に至る過程で出会う、市役所職員(塚地武雅)とのやりとりもおかしい。どこから見ても地元民という風貌にも関わらず、東京からの移住者だという。やや自慢げに語る「都会っぽさが抜けなくて」のセリフに、五郎が口には出さず心の声(これが見る側の楽しみ)で、「抜けてます、抜けてます」とつぶやくのだ。塚地も朝ドラ「まれ」以上のハマリ役だった。目立たぬよう、しかし確実に“ドラマ度”を高めた今シーズン。まだ見てないなら、お急ぎを。

【気まぐれ写真館】 12月の風景 (上智大学 北門)

2015年12月03日 | 気まぐれ写真館

実習科目「テレビ制作」撮影開始

2015年12月03日 | 大学





しっかり“ドラマ度”を高めている「孤独のグルメ」

2015年12月02日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今回は、テレビ東京「孤独のグルメ」を取り上げました。


テレビ東京系「孤独のグルメ」
目立たぬよう、しかし確実に
“ドラマ度”が高まっている

「孤独のグルメ」の初登場は3年前。この秋、堂々の第5シリーズである。しかも、これまでの深夜バラエティ枠から、「ドラマ24」というブランド枠へと移行した。いわば“看板ドラマ”として認知されたことになる。

とはいえ、主人公の井之頭五郎(松重豊は完全に一体化)自身に大きな変化はない。例によって、仕事で訪れた町の大衆的な店で、ひたすら胃袋を満たすのみだ。その潔さがファンには堪らない。

それでいて、新シリーズに全く手が加わっていないかと言えばウソになる。例えば先週の「千葉県いすみ市大原」編。五郎が港で伊勢エビを見かける。今回は「千葉で伊勢エビ?」という意外性で来たかと思いきや、それはフェイント。

結局、飛び込んだ食堂で食べたのは「ブタ肉塩焼きライスとミックスフライ」である。このいすみ産のブタ肉、厚切りの塩焼きが何ともうまそうで・・・。

また食堂に至る過程で出会う、市役所職員(塚地武雅)とのやりとりもおかしい。

どこから見ても地元民という風貌にも関わらず、東京からの移住者だという。「都会っぽさが抜けなくて」のセリフに、五郎が口には出さず「抜けてます、抜けてます」とつぶやくのだ。塚地も朝ドラ「まれ」以上のハマリ役だった。

目立たぬよう、しかし確実に“ドラマ度”を高めた今シーズン。まだ見てないなら、お急ぎを。

(日刊ゲンダイ 2015.12.02)



女優・内田有紀の魅力は「わけあり感」にあり

2015年12月01日 | メディアでのコメント・論評



内田有紀、来年1月放送の
連続ドラマで広末涼子と初共演

内田有紀が16年1月にスタートのドラマ「ナオミとカナコ」(CX系/木曜22時)で広末涼子と初共演することが、11月13日に明らかになった。

同作は、奥田英朗による同名小説のドラマ化で、内田は主演の広末演じるOL・小田直美と共に、“DV夫”の殺害計画を企てる主婦・服部加奈子役を演じる。

トップアイドルから見事女優へと転身を果たし、数多くの映画・ドラマで活躍。今クールも、天海祐希主演の「偽装の夫婦」(NTV系)に出演中の内田の魅力について、上智大学文学部新聞学科教授の碓井広義氏は、

「“わけあり感”が魅力です。過去の離婚、プライベートがなかなか見えてこないという点も関係しているのかもしれませんが、彼女には明るく元気な役柄よりは、影のある役柄が合います。

彼女の再評価のきっかけとなった作品で、引きこもりの役を演じた『最後から二番目の恋』にしても、足が不自由なシングルマザー役を演じている、現在の『偽装の夫婦』にしてもそう。彼女の“わけあり感”がうまく活かされた時、視聴者の印象に残ります。

おそらく今、彼女は単に「内田有紀」という美人女優を欲している作品ではなく、自身の持ち味が出せる作品を選んでいるのではないでしょうか。最近はそのチョイスがぴたっとはまっている気がします」とコメントする。


17歳の時にドラマデビューした内田も11月16日に40歳を迎えた。円熟味溢れる演技派女優として、今後、多くの作品でその存在感を発揮していくことだろう。

(コンフィデンス 2015.11.23号)