katsuまるはだかぁ 芸術家への道

モザイクアート一直線のkatsuの日記

新作の小話

2010-07-12 22:32:43 | モザイク作家
昔々、その国には隠れキリシタンなる者達がいた・・・・それは思想の自由をも奪う
もので、上なる者の言い分なら、それが統率感を生む事になり都合の良いものだったろう

そんな中、彼らはひたすら表には出ず、まるで忍びのように姿、形を変え人目を
はばかり自分達の追い求める思想を拡大して行った・・・・

しかし残念な事に、お上の御達しは絶対であり、キリシタンであるだけで迫害される
状況下。ある意味、死を意味する・・・これはそんな時代の話である・・・・

ある日の事、いつものようにその娘は引き潮の海岸に打ち上げられている珍しいものを
探しに出掛けた。すると、そこに壊れかけた舟が打ち上げられていた・・・・

娘は舟に近寄り、中を覗くと未だかつて観た事の無い美しい光り輝くまるで宝石のような
石がたくさんあった。これは何かな・・・?すると近くでうめき声がする・・・

み、水をくれぇ・・・娘は自分の持っていたわずかな水と握り飯を惜しげもなく与えた。
少し落ち着いたみたいなので話を聞くと、どうやら自分の国で戦があって命からがら

逃げて来たらしい・・・。 所でこれ何?と娘はまだ観ぬこの石が気になるらしい。
これか・・・これは・・・俺にも良く判らんが、殿様はこの石で絵を作らせていたらしい

んだが・・・。ねぇ?らしい・・・って?何。

俺は戦が終わってドサクサに紛れてこれを見つけて拝借して来たから、良く判らんのだ。
えっ?盗人なの?・・・・ん・・・そうとも言うな・・・。

そう言えば良く見ると、お侍さんでも無いし・・・立派な人には見えない身なりだ。

なぁ、娘・・・この国は平和か?戦は無いか? ん・・・あんまり聞いた事は無いよ・・
そうか・・・ならばここにするか・・・娘、世話になったなっ。

何も無いが、ほれっこれ持って行け・・・そう言って1粒手渡した。
それが最初の出会いだった・・・

その流れ者は、舟の荷物を岩陰の洞窟に運び、そこで生活を始める事にした・・・
すると、またあの娘とその海岸で会う事になり、食べ物を貰うようになった・・・

いつしかそれを繰り返すと仲良くなり、ある時洞窟に見せたいモノがある・・・と
着いて行くと、そこには沢山の光輝く絵があった・・・・

凄い、凄い。全部おじさんが作ったの?・・・どうだ?気に入ったか?
うん。そっか・・・俺はこの石を使って作って見たかったんだが・・・

何しろ戦ばかりで・・・こんな高価なもの俺達のようなもんじゃ触れもしなかった・・・

いつもあんたにゃ世話になっているから、これを1つ持って行きなっ。
しかしな、今の世はせちがらいし、宗教ですら自由なんてありゃしない。

何か揉め事にでもなったら、困るだろうから流木で蓋をしたから、こうして隠すんだぞ。
そうすりゃ、きっと誰も判らねぇ。何せあんたは海岸でいつも得体のしれねぇもん

ばかり拾ってんだからなっ。また変わったもん拾って来て・・・と思われるだろうから。

それがその国にも戦がやって来て・・・それからどうなったのか?

そんな話がこの作品にあった・・・ってのは聞いてるんだが・・・わしも何せずっと
前に聞いた話なんでなっ・・・やっぱりね・・・思った通りだ。

おじさん、私これ買うわっ。良いのかい?本当に・・・

あのね、おじさん。その話ね、流れ者に貰ったんじゃなくて作って貰ったんだよっ。
私のお祖母さんが良くその話してくれたから知ってるんだ・・・

そうなのかい?じゃそれ聞かせておくれ。あのね、何度か会ってた時に流れ者に
教わって手伝っていたらしいのね。そのお礼に作ってくれたらしいのね。

聞いた話だと、娘は月の虎にイヌワシって言うのを頼んだらしいのね。
良く判らないんだけれど、今までは過去これからは未来を意味するんだって・・・・

所が戦があったでしょ・・・それで命からがら逃げた時に持って来れなかったんだって
・・・私の知っているのはここまで。

それで今日、ここを通ったらこれを見つけて、絶対これだぁ・・・って思ったの。
みぃつけたってね。きっと戦で燃えちゃったんだね・・・隠してあった流木・・・

あんた知らないのかい?これにはもう1つ話があるんだよ・・・・聞くかい?
うん。本当か嘘か?は判らんけど、中の絵がここから出してくれ・・・と燃えたんじゃ

ないか・・・と言われているんじゃよ。燃え方が不自然じゃろっ。
燃えたにしては不自然じゃろっ。判らんがなっ・・・それでも良いのかい?

勿論。この話をするとお客は誰も買ってはくれんのじゃ。薄気味悪いとなっ・・・
何とも不思議なお客さんじゃのう・・・

今はもっとあの頃とは違って素晴らしいモノがあるのに・・・何もこれじゃなくとも・・
でもわしは好きじゃがのう。

あぁそれとなっ、これはタイルって言うので絵を作っていて、モザイクって
言うんじゃよっ。おばあさんに伝えておくれ。

売っては見たものの、果たしてそれが本物なのか?偽物なのか?骨董品屋の主人には
全く判らないものだった・・・

時代は変わってもモノは残る・・・心ある者が心ある者に作ったモノは心と心が
繋がっている。時に人は、心のより所として、自分自身の宝物になる事がある。

それは1つの形では無く、個々の思いのこもったモノであり、それは時に
花であり、生き物であり、場合に寄っては女性でもある・・・

形は変われど、それは宗教にも似た崇拝に値する事もある・・・・

それを見る時、人の心を動かし、人を前へ前へと導く事が出来る力を持つ事があるかも
知れない・・・もしこの作品で彼女がそんな気持ちになる事があるのなら、

あれは心ある者が作ったと思われる本物なのかも知れない・・・・

さぁそれはどうかな・・・・あはははは。こんな話。










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