数年前のこと。
野球部を担当していました。生徒たちと暗くなるまで、練習に励んでいました。忘れることのできないいろんなドラマがそこから生まれました。
野球を続けていく中で、お家の方にもいっぱい支えられていたことを痛切に感じます。
今、何度か車でグランド整備をしています。グランドを回りながらいろんなあのときのことを思い出します。
練習が終わり、職員室に戻ります。帰るときには真っ暗になっています。すると、グランドにライトをつけた車が乗り入れています。最初は何だろうと思っていました。それは、せいちゃんのお父さんがグランドを車で整備してくれていたのです。車で引っ張るレーキはお父さん手作りのものです。いろいろ工夫がこらされています。今でもそれは、グランドにあります。
整備してみるとわかるですが、夜車でグランドを整備するのはとても難しいです。
ライトをつけていても区別がしにくいです。どこまで整備しているかわからなくなります。でもせいちゃんのお父さんは名人です。見分けてきれいに整備してくれているのです。毎日、毎日。仕事の帰りに学校に寄ってくれていました。夜来れないときは、朝勤務する前に来てくれていました。
でもかったかくんが学校に着いたときは、もうお父さんの姿は見えませんでした。「毎日、すみません。」と言うと、いつもの豪快な笑いのあとで、「こんなことくらいしかできないからね。」
と答えていました。
ある日、「先生、3000キロを超えた。」とお父さん。この間、その言葉を思い出し、一回全面グランドを整備すると、何キロ走行するか計測してみました。14キロから15キロの間です。そのくらい走ることになります。言われたときが3000キロだったので、最後はどのくらいになっているのか想像がつきません。
毎日毎日の積み重ねでグランドには、草もはえませんでした。子どもたちも、そして何よりせいちゃんも今でもあの姿は忘れることはできません。ずっと心に焼き付いていることでしょう。
グランドを回りながら、本当に支えられていたことを感じます。改めて感謝をします。