とくにはまっている
というわけではないのですが、
あれこれ他の本も間にはさみながら、
須賀敦子を読んでいます。
もともと、中井久夫が
そのエッセーの中で褒めているのを
気にしながらも
「外国の生活・紀行文も何だかな~」
と縁がなさそうに思い、
手に取ることもしなかったのですが。

「遠い朝の本たち」
「ミラノ 霧の風景」
「コルシア書店の仲間たち」
「旅のあいまに」
「ヴェネツィアの宿」・・・
と読んできました。
何やら奇妙な
異空間に入り込んだような
読書体験であります。
自分の読書経歴の中で
どの辺に位置づけたら良いのだろうかと
少々居心地の悪さも味わいながら、
引き込まれております。
私たちが生きた世界の少し向こう側で
こんな人生の歩みもあった
ということでしょうか。
街角の画廊に開かれている個展を
ゆっくりゆっくり観ている感じですかね。
作品の細部は友人たちの近景が丁寧に描かれながら、
気が付くと、額縁の中の遠景に静かにおさまっています。
「ヴェネツィアの宿」まで読んできたとき、
「あ~、これは小説なんだ。」
という思いを強くしました。
全体の構成の見事さに気が付きました。
いずれも、著者が出会った友人たち、
そして
家族の姿を描きながら、
彼らへの静かな響きをたたえた
鎮魂の書となっています。
そう思うと、
著者没後、12年も立って読んでいると
作品全体が著者自身への、自らの
鎮魂の書のように思えてきます。
「須賀敦子DVD保存版」
発売の新聞広告が出ていました。
結構ファンが多いのでしょうかね。