浄土平の麓に土湯温泉があって、
さらにその山奥に
「不動湯温泉」があります。
これがなかなか
大変なところなのであります。
その昔、福島駅からバスで
土湯まで行って、ぜひ、
この温泉へ行ってみようとしたのですが、
山道を歩いても歩いてもたどり着けず、
帰りの時刻に迫られて、
断念させられてしまいました。
(道も間違えたかも知れないけど。)
今回も、道を迷いながら、
迂回する車道の山道に入るのですが、
これが大変な代物でして、
タイヤがパンクするのではないかと
心配になる悪路でありました。
道標がなければ、ただのけものみち
でありますな。
そうしてようやく
たどりついたのがここ。 ↓
山奥の一軒家であります。
さすがに風情があります。 建物はちょうど百年ほどたつとのこと。
何だか床はぎしぎしっと鳴いて
傾いている雰囲気も。
部屋の入口は障子戸一枚で、
鍵もありません。
床の間には不動明王の掛け軸。 ↓
部屋へ案内してくれるお兄さんが
いろいろ話してくれました。
「鍵無しで、今まで
一度も事故はありませんよ。」
「地震の時は大丈夫でした。
ここは固い岩盤なので…。
下の土湯の方は大変でしたけど。」
「でも、その後の余震で、
建物が、何だかぎしぎしいうように
なったんですよね。」
「うちは客層が違うからましなんですけど、
土湯の方は地震で2,3軒つぶれてるし、
お客が来ません。」
「それでも、昨年は避難者の方とか、
ボランティアの人でまだましだったのですが、
今年はそのお客もいませんし。」
お兄さんはこの宿へ下から通いで
やってきて働いているようです。
でもすごく愛着を持って
仕事してるようなので、
実は宿の若旦那かも知れませんが。
83段の階段を下ると、
内湯があります。
ぬるめの透明な湯で、
窓が開放的で緑が綺麗です。
さらに外へ出て、
また100段ほど階段を下ると
沢に出て、
小さな露天風呂があります。
なかなかよろしいですな。
お兄さんの話によると、
来年の大河ドラマに
露天風呂のシーンがあって、
ロケ地候補として下見があったとか。
いろいろ物好きな
お客さんは多いようです。
秋はまた
別天地であることでしょう。
「鯉の塩焼きなんて
他ではありませんよ。」
と出された夕食は鯉料理にキジ鍋。
なべさん、鯉はちょっと苦手で、
どうも、あきませんでしたね。
朝食はシンプルね。 ↓
宿の女将さんも
なかなか話し好きなようで
帰り際にいろいろ話してくれました。
元もと、土湯温泉に旅館を構えていて、
ここは大正時代に別荘として立て、
時折お客を案内していたとか。
ところがその後、
土湯温泉の2度の大火で
本館を焼失して、
この別荘だけが残ったようです。
「去年まではまだ避難者の方とか、
ボランティアの方が
こんな山奥まで、
宿が一杯なのでと言って
宿泊に来ていたんですが、
今年はホントに少なくて。」
「働いている人も出て行って、
働いてくれる人もいないんです。」
「関東からのお客が減りましたね。
まだ関西の方が来てくれますよ。」
「秘湯の温泉宿と
喜んでいただいても、
いつまでやっていけるか、
大変なんです。」
着物に割烹着の上品なおばあちゃんで、
古いながら清潔感のあるお宿でありました。
さて、この25日の朝は
宿からあの悪路を戻り、今度は
南へ下って、ゆるゆると大阪へ戻る道を
たどってゆきます。
(どうやら東北にも猛暑の波が
やってきているようでありましたが。)