STAP細胞はやはりできなかったようですが、あの問題になった論文は何だったのかということになります。昨日、たぶん幻のチャンピオンだったのではないかと書きました。
私の専門は有機化学ですが、この分野の実験できれいに進まない反応というのが出てきます。副反応が起きてしまったり、収率が非常に低く精製に時間がかかったりします。ところが突然これが非常にうまく進行することがあります。副反応も起きず収率もよく目的物が取れるのです。当然なんでよくなったかを調べるために、再実験するのですが、2,3回はよい結果が出ているのに、だんだん悪くなり、ついには元の状態に戻ってしまい、その後は全くよい結果が出なくなります。何か微妙な条件などが、たまたまうまく組み合わさった時に良い結果が出たのでしょう。若手の研究員などは、何とかこの問題を解決しようと取り組みますが、大体駄目であきらめてしまいます。このケースを「幻のチャンピオン」と呼んでいました。
このチャンピオンという言葉は、改良研究など同じような実験を繰り返しているときに、最も良いものをチャンピオンデータと呼びます。つまり同じような実験を行っても、結果はかなりばらつくのが普通です。これを報告するときには、通常平均的なデータを使うのですが、たまにもっともよいデータを使ってしまうことがあります。そうすると次にそのデータを超えることが難しくなり、「チャンピオンデータを発表するな」が常識になるわけです。
STAP細胞もたぶん小保方さんがやった時には、緑色に光る細胞ができ、この性質を調べたときには、万能性を示したのだと思います。本来はこの再現性や安定性をしっかり確認してから発表すべきものを、その前に論文にしてしまったのでしょう。このような「幻のチャンピオン」を復活させることは非常に難しく、結局理研での検証も失敗したのだと思います。
こういった論文はかなり多く、特に競争が激しい分野では速さが優先されますので、十分検証する時間がないのかもしれません。
検証不十分な状態での論文発表(その前に学会で口頭発表しているはずですが)もそれなりに意義を持っていると思っています。いわば可能性を公表しているわけですので、それを読んだ研究者が追試を行い、同じ結果が出なくても、新たな発見などが出るかもしれません。研究というのはそういう試行錯誤の繰り返しで、進歩していくのでしょう。
今回のことで、細胞に刺激を与えることによって、眠っている遺伝子を起こすことができるという可能性を完全に否定されてしまうのは、本当に残念です。本来は、小保方さんにこの続きをやってほしいのですが、退職されるようです。しかし興味を持った誰かが、この可能性に挑戦してくれることを願っています。
私の専門は有機化学ですが、この分野の実験できれいに進まない反応というのが出てきます。副反応が起きてしまったり、収率が非常に低く精製に時間がかかったりします。ところが突然これが非常にうまく進行することがあります。副反応も起きず収率もよく目的物が取れるのです。当然なんでよくなったかを調べるために、再実験するのですが、2,3回はよい結果が出ているのに、だんだん悪くなり、ついには元の状態に戻ってしまい、その後は全くよい結果が出なくなります。何か微妙な条件などが、たまたまうまく組み合わさった時に良い結果が出たのでしょう。若手の研究員などは、何とかこの問題を解決しようと取り組みますが、大体駄目であきらめてしまいます。このケースを「幻のチャンピオン」と呼んでいました。
このチャンピオンという言葉は、改良研究など同じような実験を繰り返しているときに、最も良いものをチャンピオンデータと呼びます。つまり同じような実験を行っても、結果はかなりばらつくのが普通です。これを報告するときには、通常平均的なデータを使うのですが、たまにもっともよいデータを使ってしまうことがあります。そうすると次にそのデータを超えることが難しくなり、「チャンピオンデータを発表するな」が常識になるわけです。
STAP細胞もたぶん小保方さんがやった時には、緑色に光る細胞ができ、この性質を調べたときには、万能性を示したのだと思います。本来はこの再現性や安定性をしっかり確認してから発表すべきものを、その前に論文にしてしまったのでしょう。このような「幻のチャンピオン」を復活させることは非常に難しく、結局理研での検証も失敗したのだと思います。
こういった論文はかなり多く、特に競争が激しい分野では速さが優先されますので、十分検証する時間がないのかもしれません。
検証不十分な状態での論文発表(その前に学会で口頭発表しているはずですが)もそれなりに意義を持っていると思っています。いわば可能性を公表しているわけですので、それを読んだ研究者が追試を行い、同じ結果が出なくても、新たな発見などが出るかもしれません。研究というのはそういう試行錯誤の繰り返しで、進歩していくのでしょう。
今回のことで、細胞に刺激を与えることによって、眠っている遺伝子を起こすことができるという可能性を完全に否定されてしまうのは、本当に残念です。本来は、小保方さんにこの続きをやってほしいのですが、退職されるようです。しかし興味を持った誰かが、この可能性に挑戦してくれることを願っています。