植物工場は発展するのか

植物工場というのは、植物（主に野菜類ですが）を土を使わずに水と光で育てるという方法で、農業の工業化という観点でテレビなどでも取り上げられていました。

現在は第3次ブームといわれ、多くの企業が参画したようですが、あまり採算が合わず赤字の事業場が多いようです。ここで画期的な栽培法が開発されたというニュースを見ました。これはLEDメーカーと山口大学が共同で開発した、「SHIGYO」法といわれる栽培方法です。

従来植物工場は蛍光灯の照射により光合成を促していましたが、光合成に必要な光は660nmの赤色光と青色であることが分かりました。また植物にも睡眠時間が必要で、24時間光を当て続けると、成長が遅くなることが知られています。そこで光をあてる時間と、暗闇にする時間を設けて育てるのが通常のやり方でした。

この研究グループは、蛍光灯ではなく赤と青のＬＥＤのみで育てることを検討したのです。ところが赤色のＬＥＤで光合成に必要な波長のものは、輝度が低く植物工場には使えなかったようです。このＬＥＤメーカーは、660の波長で輝度の高い赤色ＬＥＤの開発を行いました。これにはＬＥＤの市場が、ノーベル賞を受賞した青色ＬＥＤで占められており、全体の業績が低迷していたという事情のあるようです。

何年かかったかわかりませんが、このメーカーは求める660の波長で高輝度の赤色ＬＥＤの開発に成功しました。これによって蛍光灯から、電気をあまり必要としないＬＥＤへの移行が可能になりました。この植物工場のメリットとしては、無農薬栽培が可能であることや、いつでも栽培できること、植物の形状や成分のコントロールも可能などいろいろあるのですが、工場設置に膨大なコストがかかることや、電気代を中心とした維持費がかなりかかる割には、野菜の値段がそれほど高くなく、経営を圧迫していたようです。

ですから蛍光灯からＬＥＤに変えるだけでも。かなりのコスト削減になるのですが、この研究グループはさらに大きな発見をしました。これは単純な学生のタイマーの設定ミスから分かったようですが、赤色と青色の光を交互に照射すると、睡眠時間を取らなくても成長を続けることが分かったのです。

例えばフリルレタスでは、従来の蛍光灯では収穫まで42日かかったものが、この方法では32日間で収穫できるそうです。同じ日数で大きさを比較した場合も約2倍となったそうです。このように赤色と青色を交互に12時間照射する方法を「SHIGYO」法と名付け、現在はできた野菜の成分コントロールに取り組んでいるようです。こういった改良が進めば、植物工場が新しい農業の手法として発展するかもしれません。