ごっとさんのブログ

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抗生物質と耐性菌

2016-07-25 10:29:06 | 健康・医療
ひと月以上前になりますが、このブログで耐性菌のスーパーバグの話を書きました。

最近新聞に耐性菌の説明記事が出ましたが、どうもあまり良い内容とは言えませんでした。そこでもう一度耐性菌について取り上げてみます。

まずこの記事では現在抗生物質が効かない耐性菌が増加し、WHOが世界中で危険なレベルに達しているとして、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でも対策が論議されたようです。

耐性菌ができる仕組みが図示されていますが、まず感染症にかかると抗生物質が投与されます。そうすると通常の病原菌は殺すことができますが、耐性菌だけが残ってしまいます。この耐性菌が増殖すると、ほかの抗生物質が投与されることになります。そうするとこの抗生物質にも耐性の菌だけが生き残り、多剤耐性菌ができてくるという図式でした。

これが間違っているというわけではありませんが、抗生物質や耐性菌のメカニズムを無視していると言えます。

抗生物質は菌がいるところに行っても、入っていって殺してしまうわけではありません。その菌が増殖するために分裂が始まると、その時に作用して始めて菌を殺すことができるのです。つまり抗生物質は菌の増殖を止める作用があり、これを静菌作用といいます。ですから抗生物質は、厳密には殺菌剤ではなく静菌剤ということになります。

抗生物質を投与してもすべての菌がなくなるわけではなく、耐性菌だけが残るということは実質的にはないと思われます。この残った菌を殺すのは、人間の免疫システムです。病原菌が入ってくると、当然この免疫が働きますが、菌の増殖が激しくなるといわば間に合わなくなってしまうわけです。そこで抗生物質で菌の増殖を抑え、免疫が勝てるようにするわけです。

つまり抗生物質というのは、この免疫システムの手助けをしているだけとなります。院内感染で高齢者が肺炎で亡くなったりしますが、高齢になったり他の重篤な病気があると免疫がうまく働かなくなり、どんなに抗生物質を投与しても治らなくなってしまうのです。

次に耐性菌ですが、病原菌の中で入ってきた抗生物質を分解したり無効にしてしまう酵素を持った菌が耐性菌となるわけです。これは菌が本来持っているほかの目的の酵素が、突然変異によって抗生物質を攻撃できるようになるわけです。

これはあくまでも突然変異ですので、偶然の産物です。しかも酵素を改変する変異は、何回か起こらないと有効なものにはなりません。つまりかなりの偶然の積み重ねでできるものですので、時間がかかり抗生物質があるからといって、簡単にできることはまずありません。

長くなってしまい、中途半端ですのでまた続くことにします。