ごっとさんのブログ

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アルファ線でガン細胞を攻撃

2016-07-17 10:35:01 | 健康・医療
放射線の中でもがん周囲の正常細胞への影響が少ないアルファ線を使い、体内のガン細胞を狙い撃ちできる新しいタイプの薬剤を量子科学技術研究開発機構(量研機構、QST)が開発しました。

余談ですが、この量研機構というのは初めて聞く研究機関の名前でしたので、少し調べてみました。

ここは放射線医学総合研究所と日本原子力研究開発機構(原子力機構)の4研究所が統合して今年4月に発足したようです。職員数も約1,990人と多く、年間予算も539億円と非常に大きな研究機関となりました。

国内の公共研究機関で大規模というと理化学研究所を思い出しますが、自然科学系では元工技院が統合された、産業総合研究所が最大のようです。予算規模も900億円と非常に多く、研究者数も外部からの受け入れなど合わせると1万人規模になるようです。

次が理化学研究所で、予算842億円で人員も3,470人といわれていますので、この量研機構は国内3番目になるようです。それにしても研究というものは本当にお金がかかり、この3研究所だけでも2,300億円もかかっています。ですから民間企業では直接業績に結び付くような研究しかできず、将来のためのといったことができないのは無理はないような気がします。

さてアルファ線でガンを攻撃する話ですが、この研究グループは研究所内にある加速器を使い、放射線の一つのアルファ線を放出しヨウ素と似た化学特性を示す元素「アスタチン211」を効率的に製造することに成功しまた。

さらに今回治療研究対象にした褐色細胞腫の周囲に集積する性質がある物質に、この元素を組み込んで新薬剤「アスタチン211-MABG」(211At-MABG)を開発したとしています。

このアスタチンという元素は、半減期がおよそ7時間程度とすぐに分解してしまうようです。これほど半減期が短いのに、天然に存在しているというのは不思議な気がしますが、他の放射性物質から作られては壊れていくというのを繰り返しているのかもしれません。

特にアルファ線を出すアスタチン211は、天然には存在せず完全に人工的に作り出される元素のようです。この記事に関しては、見た印象としては体外から放射線を当ててガンを攻撃するのかと思っていましたが、放射性物質を体内に入れ、それをガンに集める工夫をして、いわば体内からアルファ線を出すという面白い治療法でした。

この研究グループは、マウスの実験でガン細胞の大きさが2分の1になることを確認したとしています。しかし実際の治療を考えると、7,8時間で半分が壊れてしまうようなものでは、とても実用化など考えられません。それでも難敵ガンに対しては、いろいろな方面からの新しい試みが必要なのかもしれません。