内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

テキストの地層学序説(承前)

2013-08-14 07:00:00 | 哲学

12日深夜に車で東京を出発して、山中湖を見下ろす高台にある知人の別荘に遊びに行き、そこで2日間にわたって、経営学の大学教授である知人、哲学科学部4年生で卒論準備中のその子息、そしてその哲学科の助手の3人と、初日は暁方まで、2日目は午前2時半まで、実に様々な話題について議論、歓談、雑談して、これからの私の研究の方向性についていろいろと刺激を受けて先ほど東京の実家に戻ってきた。

 昨日の記事で予告したように、今日の記事は、「テキストの地層学序説」の発表プランの簡略版を公開します。


予備的考察 ー 事実の順序に従って ー


 1/ 京都学派の系譜の中で

 2/ 禅仏教から見られたマイスター・エックハルト

 3/ ストラスブール ー ライン河流域神秘主義の中心都市

 4/ 複雑な集合体としてのエックハルトのテキスト群と中世ヨーロッパの歴史・政治・文化的文脈

 5/ 方法論的問題


エックハルトをめぐる問題群 ー 理由の順序に従って ー


I. 方法論の問題 ー それぞれに異なった言語ゲームに属した多元的なテキストの集合体を適切な順序に従って読むための方法

 1/ 複雑なテキスト集合体を前にして

  a. 集合体の図式的区分:哲学/宗教・神学/神秘主義

  b. 言語的二極性:ラテン語(学問・学識・普遍性)⇔ 中高ドイツ語(現地語・民衆・宗教的教化)

  c. 機能的二重性・不可分性:「学匠」Lesemeister と「生の達者」 Lebemeister

  d. 認識と経験の二重性:神の認識と神の経験

  e. 言語活動の種的多様性

 2/ 根源的経験への様々な哲学的アプローチの試み

  a. 脱構築的考古学

  b. 自己批判的系譜学

  c. テキストの地層学

  d. テキストの地図作成法

  e. 言説の位相学

  f. 否定的言語

  g. 治療的実践

 3/ 独仏のエックハルト研究の現在

  a. 神秘性

  b. 思弁性

  c. 哲学的要素

  d. 形而上学性

  e. 神学的体系性

 4/ 説教 ー 1つの言語ゲーム

  a. ラテン語説教

  b. ドイツ語説教

  c. 文献学的真正性

  d. 説教という言説の固有性

  e. エックハルト的精神性

II. 予備的研究:テキストを位置づける

 1/ 文献学的諸問題

 2/ 歴史的文脈

 3/ 言説の諸志向性

 4/ 聴衆あるいは読者

III. エックハルト・ドイツ語説教86の上田閑照による解釈をめぐって

 1/ ドイツ語説教86

  a. ルカによる福音書第10章38節-42節

  b. 説教86の複雑な構成

  c. 上田閑照の解釈

 2/エックハルトの根本的テーゼ ー上田閑照の解釈に従って ー

  a. 「魂における神の子の誕生」

  b. 「離脱 (abegescheindenheit)」

  c. 「神性への突破 (durchbrechen)」

  d. 「真人」

 3/ 絶対無へと方向付けられた読み方への疑問

  a. 歴史的文脈 ―「自由聖霊派」との戦い

  b. ラテン語著作

  c. 神性の無 ― 三一性の彼方へ

 4/ エックハルトにおける無の概念の多義性

  a. 神的無

  b. 被造物的無

  c. 非在としての無 ― 純粋知性

  d. 神の魂における誕生へと至る1階梯としての無

  e. 離脱としての無

 5/ 比較宗教的あるいはメタ宗教的なアプローチの陥穽

  a. 比較論:共通性の捏造

  b. 間宗教的対話:擬似的類似性

  c. 接近: 差異・限界の曖昧化

  d. 共時的構造化:普遍主義の危険

結論 ー 言語活動における語りえぬものの現前