内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

青山霊園、神保町、人形町 ― 夏休み日記(9)

2015-08-10 19:01:00 | 雑感

 お墓の名義人が亡くなれば、すみやかにその「承継」手続きを行わなくてはならない。昨年末に母が亡くなり、その母が名義人だったお墓の「承継」手続きを長男として私が行うことになっていた。それを今日ようやく済ませた。海外在住であり、特別なことがないかぎり、年に一回夏休み中しか長く滞在することができないので、この夏まで手続きを待たなければならなかった。今回の滞在中、もっと早目に済ませておきたかったのだが、七月中は集中講義等予定が詰まっており時間的に余裕がなく、八月に入ってからは猛暑のためになかなか出歩く気になれなかった。
 朝からにわか雨に見舞われた今日は、気温もやや下がっている。朝プールでひと泳ぎした後、まず、手続きに必要な私の戸籍謄本と母の戸籍謄本を世田谷区役所まで取得しに向かう。私の謄本だけならもっと実家から近い太子堂の出張所でも取得できるのだが、死亡者の場合は区役所まで行かないと交付してもらえない。二通の謄本を取得してすぐにも青山霊園に向かいたかったのだが、またしてもにわか雨。雨脚がかなり強く、しばらく庁舎内で雨宿り。世田谷線で三軒茶屋まで戻り、半蔵門線表参道駅で銀座線に乗り換え、外苑前駅で下車。駅の階段を上がると、雨もすっかり上がっていて、青空が見える。梅窓院脇の小道を霊園まで下るとき、打ち水をした後のような涼しい風が通りを吹き抜ける。
 霊園での手続きは二十分余りで済み、あとは私名義の新しい登記書が約二ヶ月後に送られてくるのを待つだけ。終わってみれば簡単な手続きだったが、七月にストラスブールの日本領事館で署名証明書と在留証明書を取得したときから起算すれば、ちょうど一月かかったことになり、とにかく一つ懸案事項が片付いて安堵した。
 その足で神保町に移動し、古本屋街を少し見て歩き、日本思想大系『本居宣長』の巻を購入。本巻には『玉勝間』と『うひ山ぶみ』が収められている。編集を担当した佐竹昭広・日野龍夫・吉川幸次郎がそれぞれ解説を書いている。特に吉川幸次郎の「文弱の価値 ―「物のあはれを知る」補考」は読み応えがある。
 神保町からさらに半蔵門線で水天宮前駅まで移動し、かつてこのブログの記事でも取り上げた人形町の刃物専門店「うぶけや」で、長さ十八センチの小ぶりの裁鋏と大型の爪切りを購入。鋏は持つとちょっと重く感じられるが、鋭さを包むに丸みをもってするとでも言えばよかろうか、絶妙の切れ味。ドイツのゾーリンゲンのひたすらシャープな切れ味とは明らかに違う。
 水天宮前から三軒茶屋まで、半蔵門線直通で三十分とかからない。三軒茶屋からは徒歩で帰宅。先週より気温は少し低めでも、湿度は高く、十数分歩いているうちに全身汗まみれ、帰宅して真っ先にシャワーを浴びて、さっぱりする。
 これから飲むビールが美味いこと、これはもう確定的である。