内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

しあわせ、それは何かを諦めないと手にできないもの ― 是枝裕和監督『海よりもまだ深く』を観て

2018-01-02 23:59:59 | 雑感

 正月三が日くらいはのんびりしたい。
 フランスで NETFLIX のストリーミングサービスに加入しているが、配信されるコンテツには国によって差があり、日本映画の多くはフランスでは配信されていない。ところが、日本で接続するとそれらが見られる。そればかりでなく、ダウンロードできる作品も少なくない。この機会を利して、フランスに帰ってから観たい映画をタブレットとスマホにせっせとダウンロードしている。
 昨晩深夜に観たのが是枝裕和監督の『海よりもまだ深く』(2016)。私個人としてはちょっと身につまされるところもある内容だったけれど、いい映画だと思った。特に樹木希林の演技が見事(この映画の前年に公開された河瀬直美監督の『あん』での演技もすばらしかった)。主役の阿部寛はじめ他の役者さんたちも好演。
 後半、団地で一人暮らしをしている母淑子(樹木希林)のところに来ていた、駄目作家の息子良多(阿部寛)、その元妻響子(真木よう子)、二人の息子真吾が、台風のせいで帰れなくなり、一緒に泊まることになる。そのときの母と息子の会話が秀逸(是枝監督の書き下ろし)。母親のセリフから二箇所だけ引く。

―なーんで男は今を愛せないのかねぇ。いつまでもなくしたものを追いかけたり、叶わない夢見たり、そんなことしてたら、毎日楽しくないでしょぉ。

―しあわせってのはねぇ、何かを諦めないと手にできないものなのよ。

 この他にも思わず書き留めておきたくなるような名セリフがいくつかあった。