6月30日にはパリのイナルコで発表する。日本学研究センターの日本哲学研究グループの研究会での発表である。その日、ライプツィヒにお住まいの小林敏明さんが同グループに招かれて講演される。それに併せて何か発表してくれないかとグループの主催者から打診があったので、小林さんに会うのも久しぶりだしと引き受けた。講演の前座になるのか、その後の蛇足になるのか、それは主催者の判断に任せることにして、発表内容を考え始めた。
2016年12月にブリュッセル自由大学での講演で、西田幾多郎、田辺元、G. シモンドンの三者の相互媒介的な読解の可能性について発表したのだが(発表原稿は、European Journal of Japanese Philosophy N° 2 2017 に掲載されている)、そのときは、西田哲学と田辺哲学とを「和解」させるためにシモンドンを援用するという形をとった。今回は、シモンドンに重点を移し、シモンドンの個体化の哲学の視座から、西田における主体概念と田辺における個体概念をとらえ直す視角を開きたい。
発表のスタイルとしては、L’individuation à la lumière des notions de forme et d’information (Jérome Millon, 2005)の310頁の « Sujet et individu » と題された半頁あまりの短い節(2段落)の注解という形をとる。この一節には、個体化の哲学の全体が〈主体〉と〈個体〉との差異をめぐる論述の中に集約されている。だから、この箇所を一文一文注解していくことで、個体化の哲学の概観を示すことができる。その視座から開かれる視角の中で、最後期の西田哲学における〈主体〉と田辺の「種の論理」における〈個体〉とをそれらの可能性において読み直すことを試みる。