3月21日にシンポジウムで発表した翌週の火曜日27日には、大学の中央キャンパスに大通りを挟んで面しているドミニコ修道会付属のエマニュエル・ムーニエ・センターで講演をする。
この講演は、 3月から4月にかけて国立ライン歌劇場で開催されるフェスティヴァル Arsmondo Japon に合わせて、同センター主催で行われる。フェスティヴァルのメイン・プログラムは、三島由紀夫『金閣寺』を原作とした黛敏郎作のオペラ『金閣寺』のフランス語での上演であるが、講演の依頼内容は、なぜか西谷啓治の『宗教とは何か』について話してほしいということであった。
同書に見られる「空」の立場については、2013年に一度パリで話したことがあり、そのときは一部しか読めなかった原稿は、現在、« Le Ciel vide et la terre saturée. Le néant médiateur, silencieux, ouvert et passible » と題して、論文集 Notions esthétiques. Résonances entre les arts et les cultures, Harmattan, 2013 に収録されている。
今回も、同書の中心的テーマである「空」について話す。特に、実体、個体、主体などの概念が「空」との関係でいかに規定されているかを見ることで、「空」の立場から宗教と哲学と科学の相互関係をどのように捉え直すことができるかを問題にする。その中で、 Francisco Varela / Evan Thompson / Eleanor Rosch, L’inscription corporelle de l’esprit. Sciences cognitives et expérience humaine, Seuil, 1993 と Gilbert Simondon, L’individuation à la lumière des notions de forme et d’information, Jérôme Millon, 2005 とが問題場面を明確化するために援用されるだろう。