今朝、上代文学史の成績を事務に送信し、休む間もなく、日本古代史の答案の採点に取り掛かった。まだ終わっていないので、総評については明日以降の記事で話題にする。今日のところは試験問題について一言述べるにとどめる。
学生たちには、例のごとく、12月最後の授業で問題は伝えておいた。三週間の準備期間を与えたことになる。問題は以下の通り。
「あなたは、遣唐使の20年の長期留学の候補者として最終選考に残った(702年、717年、733年のいずれかの遣唐使から選ぶこと)。最終審査としての面接試験の際に読み上げる発表原稿を書きなさい。その中で、唐で研究したい分野を挙げ、それがなぜ今の日本に必要か、歴史的根拠を挙げて説得的に述べよ。」
留学生の選考過程の最終段階に実際にこんな面接試験があったかどうかはわからないが、上掲三回の遣唐使のいずれかに実際選ばれたことが資料から確認できる実在の人物から一人選び、その人物の立場で面接に臨むというのが与えられた条件である。
授業では、阿倍仲麻呂については詳しく取り上げたが、その他の留学生については名前を挙げておいた程度だった。ところが、意外なことに、吉備真備を選んだ学生が多い。
遣唐使については、日本では中学・高校の社会や歴史の教科書に必ず記載があるから、日本人なら名前くらいは誰でも知っていると言っていいほどであろう。ところが、その詳しい実態となると、一般にはよく知られていない。東野治之『遣唐使』(岩波新書、2007年)の「はしがき」によれば、遣唐使全体を扱った一般読者向けの本は、同書が出るまで、森克己『遣唐使』(至文堂、1955年)以降、半世紀余りも出版されていなかったという(森公章『遣唐使の光芒』(角川選書、2010年)の「あとがき」にも同様の記述が見られる)。
しかし、ここ十年ほどの日本古代史の研究の進展には目覚ましいものがあり、多くの新知見がもたらされている。というわけで、授業で紹介したそのような新知見、特に日唐外交史についての最新の研究成果を踏まえて、答案を書くことが期待されている。結果や如何。