今日、授業を終えた後、ロレーヌ大学の数学の哲学の教授で、同大学に付属するアンリ・ポアンカレ・アーカイブ(Archives Henri-Poincaré)の所長でもあるアラナ教授と会った。キャンパス付近の小さなカフェで一時間あまり歓談する。教授がなぜ西田哲学に関心を持つようになったか、その経緯を聴く。竹内外史の数学基礎論にかねてより関心を持ち、研究を続けていく中で、竹内が京都学派の数理哲学、わけても西田哲学から何らかのインスピレーションを受けているのを知って、今では西田哲学に強い関心を抱いているという。すでに日本人研究者と共同で、竹内と西田との関係について論文も発表している。彼が特に関心を持っているのは西田の「自覚」だという。そして、「行為的直観」にも関心を持ち始めている。
私は博士論文で最後期の西田哲学におけるこの両概念の区別と関係について詳しく論じており、教授の関心と重なるところがあることがわかった。私は数学の哲学についてはまったくの門外漢だが、自覚と行為的直観は、私自身の哲学研究にとっても根本的な重要性を持っており、数学の哲学において両者がどのような意味を持ちうるのかについては是非知りたい。
パリに自宅に帰る教授を路面電車の最寄りの駅まで見送る。ストラスブールにはだいたい月一回のペースで来るという教授と再会を約す。