内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

明日は我が身のこととして読む ― 沖田×華『お別れホスピタル』

2024-02-18 14:21:26 | 読游摘録

 アマゾン・プライムにわずかな追加料金で加えることができるNHKオンデマンドで視聴可能な番組は海外からもVPNを使うことで観ることができる。朝ドラも大河ドラマも、日本の本放送から半日から一日遅れで視聴できるし、過去のドラマも多数視聴可能である。ただ、あまりにもその数が多くて、面白そうだとは思いつつも、実際にはそのごくほんの一部しか観ていない。でも、先日話題にした『デフ・ヴォイス』も『あれからどうした』もオンデマンドのおかげで全回鑑賞できた。
 今月の土曜ドラマ『お別れホスピタル』(主演・岸井ゆきの)沖田×華の同名漫画が原作である。全四回のうち、三日と十日放映の二回は観た。とてもいいドラマだ。岸井ゆきのの代表作の一つになると思う。今日これから第三回目を観る。ドラマについての感想は全四回を観おわってからにしたい。
 第一回は、ドラマについての予備知識なしで、ただタイトルと簡単な紹介文に惹かれて観はじめた。ところが、はじまって十分ほどして、「あれぇ、この雰囲気と音楽、何かはじめてじゃないような……」と気づいた。観おわってからドラマの情報を検索した。「ああ、やっぱりそうだったか」と得心した。沖田×華の『透明なゆりかご』を原作とした清原果耶主演のNHKドラマはDVDも所有していて全回何度も観ている。原作者が同じだけでなく、音楽も同じ清水靖晃だ。それで、初視聴なのに、「懐かしさ」を感じたのだ。
 原作の漫画は、現在十一巻まで刊行されている。第一巻から第三巻の電子書籍版は、ハイブリッド型総合書店HONTOのサイトにアクセスすると、今月二十六日まで無料で読める。
 ある病院の終末期病棟を舞台に、患者それぞれの人間性とドラマが、沖田×華ならではの優しい眼差しと真剣な問いかけとほんのりとしたユーモアを交えて、一話完結式で丁寧に描き分けられていく。それらの話を読んでいると、終末期医療をめぐるさまざまな問題が自ずと眼の前に突きつけられる。ところが、取り上げようによっては救い難く暗く深刻な話になってしまうテーマが並んでいるのに、不思議とどの話にも温かみと救いが感じられるのだ。
 それはきっと『透明なゆりかご』と通底する、作者の命への深い慈しみが全編に浸透しているからだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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