
クロケットさん、コメントありがとうございます。
今更だけども、日本の音楽業界は腐っています。
この機会なので、クロケットさんへの返信も含めて、CDについて、少しだけ書いてみたいと思います。
まあ、こういう未曾有の大不況&ネット社会のWパンチの中、どうやって、”販売による利益確保”と”良い音楽の提供”を共存させるかは難題ではあるとは思いますが、やり方はもっとあるように思うのです。
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私は「紙ジャケットCD」反対派です。
というか、そもそも、CDで紙ジャケットを希望しているヒトが居るのでしょうか?
紙ジャケットCDについては、一度記事にしようとは思っていたのですが、ジャケットとはレコードだから成り立つ世界だと私は思います。
マーケットリサーチが全くもって、成っていない(怒)、と思うのです。
自分が欲しいCDが紙ジャケットでしか無かったりすると、それを買わざるを得ないのですが、この「紙ジャケットCD」、実に色んな問題をはらんでいます。
ただ、下記のような場合は、自分は賛成派です。
◎エコに配慮してプラスチックを減らそうという「意志・意図」があって、あえて紙ジャケットCDにしている。→坂本龍一さんの「キャズム」など一連の作品。
◎低価格CDとして販売したい。→これは多分印刷ロット・加工ロットとの関係で、余程売れることが想定されるケース以外ペイしない気もしますが・・。
◎逆に、高価格盤として販売したい。→見開き仕様や歌詞カードや写真をノート型に貼り付けて、通常版と差別化をすることで、高価格盤に位置づけする。
しかし、「紙ジャケットCD」反対派をあえて名乗るのは、新譜では無くて、昔レコードだったもののCD化に伴うケースです。
「あの名盤を、紙ジャケットで再現!」という発想の元、作られたCDです。
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ちなみに、私はレコードとCDというのは、全く違うものと思っています。
レコードは、扱いを丁寧にしないと傷付きやすく、お手入れをこまめにしないと、カビたり・変形したり・針飛びをするようになる。
おまけにプレイヤーは、針が磨り減るものだし、レコード自体も同時に磨り減っていく。
そんな、実に繊細なものだから、大事にすることによってはじめて「自分のレコード」というフェティッシュな「所有欲」を満たし、自分の心身にフィットする対象物のオーナーになれるのです。
特にLPレコードは、その大きさから、飾ってジャケットを眺めるという楽しみ・鑑賞物としても、中身(音楽)と外見(ジャケット)は切っても切れない関係がありました。
しかし、CDは、レコードと違って、ほぼ永遠に「磨り減る」事は無く、デジタル処理され、コピーも即可能、選曲もプレイヤーやパソコンで即可能。
レコードという壊れやすいものだからこそ、固い厚紙で周りをガードする必要があったことから発生したジャケットは、実は、CDには、もう必要ないのです。
また、CDの存在の登場によって、A面もB面も存在しない、また曲の長さにも制限が無くなりました。
そして、90年代後半から始まった「デジタル革命」によって、いまやi-Podが全盛時代になったように、音楽はレコードという、それぞれ個人の所有物として密接な関係があった世界を離れて(昔は、レコード・コレクションをお互い見せあい、競い合ったものです。Aくんの持つレコードとBくんが持つレコードが同じレコードであっても、そこには別・別の所有物という、それぞれ個人にくっついた「モノ」の世界があったのです。)、あくまで音楽はデータ・ファイルとして、世界の見えない共有物として、ネットの中を、浮遊するものとなりました。
もはや、データのダウンロードで済む、CDという存在すら不要の時代になった訳です。
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再び最初に戻って「あの名盤を、紙ジャケットで再現!」ですが、多分これは、自分のような40代より上の世代に向けての発信だと思うのですが、正直、この世代の音楽人間が、紙ジャケットでCDを買いたいと願っているとは、どうしても思えない。
むしろ、そのジャケットの小ささと、顕微鏡でも無いと見えない文字潰れをしたクレジットに目が行って、「ああ、俺も1世代前の音楽人間なんだなあ」と思うくらいのものです。
紙ジャケットCDを、昔、レコードを貴重品のように丁寧に扱ったのと同様に再現して、同じ動作をする音楽人間が居るとも思えない。
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音楽業界が、いかにして採算ベースに乗せるかは、非常に難しいことだとは思いますが、まずは即刻「紙ジャケットCD再現シリーズ」はやめてもらって、その分の労力を、クロケットさんの言うように、レコードすら手に入りずらい・でも聴きたい音楽の発掘とCD化に向けて欲しいと思います。
そういう音源は、まだまだたくさん眠っているはずなので・・・。
ガキ相手の数を稼ぐマーケットの捕獲も重要なのでしょうが、御茶ノ水・神保町をうろうろしている我々のような音楽人間<ある程度自由になるカネを持ち、重要な「ブツ」には、メシは抜けども、カネに糸目は付けない>の購買意欲をそそるような、フェティッシュな仕様のCD・DVDを発売して欲しいものです。
(Riverさんに教えてもらった「POSTYMO」みたいに、あるいは、「HOSONO-BOX」みたいに・・・・。)