里山のあちらこちらでカタクリの花が咲き始めました。 カタクリ、アマナ、アズマイチゲ、イチリンソウ(日本固有)、ニリンソウ、フクジュソウ、エンゴサクなどの花は「スプリング・エフェメラル」または「春の妖精・春先のはかない命」と言われています。 これらの花は、3月下旬から4月下旬にかけて早春に葉を広げ可愛い花を咲かせます。そして上を覆う落葉広葉樹が葉を広げる5月頃には、実だけを残して葉を枯らして次の春まで眠りにつくと言う短い、つまりはかない命なのです。

これら植物の多くは、北半球の3分の1が氷河で覆われていた氷期(新生代第4期:1万~200万年前)に乾燥と寒冷な気候に順応する植物が生まれ、大陸と地続きであった日本に移動してきたと考えられています。 その後、暖かくなった関東以西の日本では常緑広葉樹林が多くなりましたが、農耕文化が発展する中で里山が肥料や燃料採取の場として利用され二次植生としての雑木林が維持されてきたため、その樹林下で「暗い常緑広葉樹林」の中では生活できないはずの植物が生き残ってこられたのです。
ニリンソウ

現在は、化学肥料の出現や燃料革命のため利用されず管理されない雑木林が増え、落葉広葉樹の林が変化しつつあり、これらの植物のみならず、これら植物に頼って生きているギフチョウやミドリシジミなどの昆虫たちも、本当の意味ではかない命になりつつあります。 これからは雑木林を維持するために何らかの方法で管理を早急にしていかなければ生物の多様性が失われてしまうでしょう。 |