僕の前世はたぶんオランダ人。

おもしろきこともなき世をおもしろく

王家の風日(宮城谷昌光)

2022年06月04日 | よむ

宮城谷がまだ無名であった頃の
初期の名作。
得意先からのおすすめ図書ということで手に取ったが
序盤は中国古代王朝の商(殷)が舞台で
干子、箕子が主役ということしかわからず
手探りで読み進める。
地名も見たことのない字が多く
ずいぶん読みにくい。
この辺りは漢字に対する宮城谷氏のこだわりなのだそう。
また最近の氏の作風に見られる
柔らかで爽やかな読みやすさは見られず
全く異なる時代の挿話を唐突にぶち込んでくるなど
司馬遼太郎のような作風に近いように感じる。
やや軟弱な作風の印象であったがいい意味で裏切られ
かなり好感がもてた。
物語の中盤で太公望、紂王、妲己と
馴染みのあるワードがようやくでてきて
そこで初めて
あ!殷の滅亡と周王朝の始まりの話か!
と気づく。
後半はそんなわけでページをめくるスピードが格段にあがる。
読み切った後の爽やかさはさすが宮城谷といえるものであり
期待を裏切るかなりの面白さだった。
年代別の宮城谷を読み直してみようかと思う。