熊本熊的日常

日常生活についての雑記

家庭訪問

2008年06月01日 | Weblog
今日、両親は私の住処を訪れた。宿泊先の最寄駅のひとつTempleから地下鉄に乗り、途中一回乗り換えて私の職場がある地域を歩く。日曜なので閑散としているが、商店街のカフェはいくつも営業しており、そうした場所でのんびりと新聞を読みながらコーヒーを飲む人の姿もある。ここから軽便鉄道でGreenwichへ移動し、そこで昼食にする。ここは観光地なので、日曜でも営業している店が多い。最初、以前から気になっていたベトナム料理屋を覗いてみたが、宴会で貸し切りだという。昨日も結婚披露宴らしいパーティーがあちこちのレストランで開かれていたが、今日も似たような状況であるようだ。仕方ないので、中華料理屋に入る。ロンドンの中心部に比べると格段にお手頃な値段だが、一見して冷凍食材使いまくり、という感じで、食べてみて、それが「感じ」ではなく「事実」であることを確信する。冷凍が美味しくないというわけではない。ただ、日頃利用している中華食材店で馴染みのある味だというだけのことである。

この中華料理屋で食事をしている時、隣のテーブルに東洋系の若い男女がやってきた。ふたりの間には殆ど会話がない。これは初めてのデートか、逆によほど親しい間柄であるかのどちらかであろう。なんとなく気になったので、観察していた。料理が運ばれてくる。別々のセットメニューだ。相変わらず静かなまま、それぞれに食べ始めた。全体の四分の一ほど食べたところで、女性のほうが男性の前にある料理に自然に手を伸ばし、それに呼応するかのように男性のほうも女性の料理に手を伸ばす。それでも相変わらず静かである。そうして食事を終えると、一言二言、にこやかにやりとりがあり、店を出ていった。たぶん、とても親しい間柄なのだろう。確信は無いが、なんとなくそう思った。

腹ごしらえをしたところで、Greenwich Parkを横断して徒歩で私の住処へ向かう。Greenwich Parkのなかに王立天文台がある。グリニッチ天文台、と言ったほうがわかり易いかもしれない。ここが子午線の基準点である。現在は天文台としてではなく天文博物館として存在している。入場無料だ。ついでなので、ここに立ち寄る。母は、建物の古さにひたすら感心しているようだ。恐らく、子午線と言ってもなんのことかぴんとこないのだろう。

公園を抜けると閑静な住宅街が広がる。こちらの不動産事情や、家の造りについて説明しながら、その住宅街を歩く。鉄道の線路を越えると、それまでセミデタッチト・ハウスが殆どだった家並みが、テラスハウスに変わる。通りの雰囲気も少し荒れた感じになり、やがて私の住処に着いた。

コーヒーを淹れ、昨日、フォートナム・メイソンで買ったクッキーとマカロンを茶菓子にする。一度に3人分のコーヒーなど淹れたことがないので、要領を得ず、少し濃過ぎてしまった。湯で割って味を調整する。クッキーもマカロンも好評だ。それなりの値段なのだから、これで美味しくなかったら詐欺だろう。

一服したところで、いつも買い物に利用しているスーパーを案内する。まずは中国食材の専門店であるSeeWooから。店の入口に中国野菜のコーナーがあり、その角に、今日はドリアンがゴロゴロと積んである。その向かいはいつもの通り鵞鳥の卵と鶉の卵。ドリアンと卵の通路を抜けて米や粉のコーナーへ。ここは業務用のエリアなので、パレットの上に積み重ねられた米や粉が高々と積み上げられている。味の素の60?入の袋も並んでいる。醤油や食用油は一斗缶に入ったものが積み上がっている。食料品の他に、食器や調理器具、洗剤、店内に飾る置物や仏壇まで売っている。冷凍食品のコーナーに行くと、餃子や焼売が50個ほど入った大きな袋がケースのなかに奇麗に並んでいる。粽や饅頭もあるし、魚介類や肉類もある。その物量の豊富さに圧倒される。店の奥には生簀があり、海老だの蟹だのがうじょうじょしている。鶏を丸ごと薫製にしたものも当然ある。私が生まれた頃、両親は精肉店を営んでいたので、このような業務用の世界を目の当たりにすると未だに血が騒ぐらしい。

次に、すぐ近くにあるショッピングセンターの中核店舗であるSainsbury’sを訪れる。両親は規模の大きさには感心するものの、欠品が目立つ棚や、並んでいる商品の品質に、なにか引っ掛かるものがあったらしい。それでも、興味深げに歩いていた。

一旦、私の住処に戻って一休みした後、宿泊先のホテルへ移動した。これで、今回の旅行の日程は終了である。明日は12時に旅行会社の担当者がホテルに迎えに来て、ヒースローまで送ってくれることになっている。1週間の旅行というのは、旅慣れた人にとっては物足りないだろうが、両親にとっても私にとっても、ちょうどよい期間であった。とにかく、無事に予定されていた日程を終了できてほっとした。