熊本熊的日常

日常生活についての雑記

夏風邪考

2008年06月19日 | Weblog
職場の私の席の近くで風邪に似た症状の人が二人いる。おそらく最初に罹患したのが、私の向かいの席のインド人で、その左隣の若い女性はインド人から感染したものと思われる。どちらも咳と鼻水がひどいが、発熱はないようだ。この人たちは、咳やくしゃみをするときに口を手で押さえるということをしない。そのような習慣が無いのだろう。向かい側で終日げぼげぼやられていたのでは不愉快で仕方が無い。咳がひどいのだからおとなしくしていれば良さそうなものだが、無駄口は止まらない。沈黙に耐えることのできない心の病も抱えているのではないかと思われるほどである。

2002年にSARSという病気が中国を中心に流行した。WHOが2003年7月11日に発表したという統計によれば、中国本土での発症数が5,327人、うち死亡348人と最多で、以下、香港、台湾、カナダ、シンガポール、アメリカ、ベトナムと続く。日本では2003年4月3日に政府が新感染症として取り扱うことを発表、原因が判明した4月17日からは指定感染症になった。同じ統計によれば、日本での感染者はいなかったことになっている。

中国で発生し、その周囲の地域に広がり、なぜか日本を飛び越えて北米にまで蔓延したのは不思議である。中国人あるいは中国系の人々の分布状況を反映しているのかもしれない。だが、それだけではないと思う。韓国でも3人の発症が確認されているが死者は出ていない。発症者が少なくても死者が出ているのはフィリピン、タイ、マレーシアというアジアの国以外に、フランスと南アフリカがある。アメリカは発症者数71人で6番目に多いのだが、米国内での死者はいない。

一般論として、病気の予防の基本は衛生と栄養の管理だろう。現在、異国でひとり暮らしの身としては、健康管理に以前よりも神経を使っているつもりである。私の向かいのインド人はしょっちゅう風邪に似た症状を呈しているのだが、その感染を免れ、なんとかこれまで無事に暮らしていられるのは日頃の健康管理が功を奏しているものと思う。

健康管理といっても特別なことをしているわけではない。家に帰ったら手を洗うとか、食事は野菜類を多めにし、生ものは避ける、という程度のことだ。こちらでの住処には、日本と違って玄関に靴を脱着する場所がないのだが、自分は外から帰った時、玄関のところで靴を脱ぐことにしている。週に一度は家中に掃除機をかけ、同じく毎週末に洗濯をし、風呂には毎日入り、下着も毎日取り替える。どれも当たり前のことだろう。それでも病気になったら医者に診てもらうしかない。毎日、目の前でごぼごぼ咳をされ、無駄口と馬鹿笑いを聞かされているのだから、菌満載の泡沫が飛散しているはずであり、そうしたなかで無事でいられるほうが奇跡に近いというものだ。地獄のような職場である。

ちなみに、そのインド人の最も近しい話し相手である右隣の人には感染の様子が無い。間違いなくインド泡沫を最も大量に浴びているはずであるにもかかわらず、である。それは、彼の習慣に関係があるのではないかと思う。この人は暇さえあれば梨を食べているのである。やはり、風邪の予防にはビタミンが効果的なのだろう。

こちらで一年を通じて最も大量に流通している果物は、バナナ、リンゴ、オレンジ、それと洋梨である。私もこちらに来てから頻繁に洋梨を口にするようになったのだが、洋梨というのは完熟していなくても、さっぱりとしていておいしい。カリッとした食感も良い。ちょうど日本の梨のような感じである。完熟すれば、とろけるように甘く、それもまたおいしい。熟成の進行状況に応じて、それぞれの味が楽しめるのである。

私も毎朝果物を食べている。4月頃まではリンゴが多かったが、さすがに5月になるとリンゴはおいしくなくなる。柑橘類は嫌いではないが、それほど好きでもないので、5月以降はバナナを食べることが多い。最近は行きつけのスーパーに苺とさくらんぼが大量に陳列されているので、苺とさくらんぼを食べる機会も増えている。あと、このところ目立つようになったのが桃である。尤も、こちらの桃は日本で流通している白桃ではなく、黄色い果肉のものである。大きさも日本で見かけるものよりは一回り小さい。柿もおいしい。いや、おいしかった。秋から冬にかけて流通しているイスラエル産の柿は小粒ながら甘くておいしいのだが、今の時期に流通している南アフリカ産のものは、味の深みが今ひとつ足りない気がする。産地に関しては、苺が英国産で、さくらんぼは米国かイタリア、桃はスペイン産であることが多い。洋梨は現在流通しているものは南アフリカ産だが秋に流通していたのは英国産が多かった。

東京で暮らしている頃から厨房に立つことは少なくなかったが、こちらに来て本格的に自炊生活をするようになってから肉が嫌いという人の気持ちがわかるようになった。肉は動物によってにおいが違うが、やはり豚は臭いと思う。料理をして食べるぶんにはおいしいのだが、生肉のにおいには少し抵抗を感じる。牛も羊も、鶏すらも、生肉のにおいは好きにはなれない。そのにおいを意識するようになってから、自然と食材に肉類を使う頻度も、外食で口にする機会も、いくらか少なくなったような気がする。

野菜は、私的に最も消費量が多いのが玉葱である。これはほんとうに使い勝手のよい野菜だ。次に多いのがきのこ類とトマト、あとはズッキーニやピーマン、たまに使うのがキャベツ、といったところだろうか。買い物は必要なものを必要な分量だけ買うようにしているので、一回あたりに購入する品数は自ずと限定される。そうすると、セルフレジで会計を済ませることになる。セルフレジは便利だが、野菜や果物のばら売り商品の会計は操作がやや煩雑になる。そこで、パッケージにまとめられたものだけを選んで買うことにしている。ニンジンは何故かばら売りが主体で、パッケージはやたらと量が多い。このため、自炊でニンジンを使うことは滅多にないのである。野菜ではないが、同じ理由で芋類もあまり買わない。

今日の夕食は親子丼。先日、鶏南蛮そばを作った時に使った鶏肉の残りと、別の日にラタトゥイユを作ったときの残りのズッキーニがあったので、親子丼なのにズッキーニ入りである。デザートに、今日、仕事帰りにスーパーで買った苺と柿をいただく。美味しいものをいただいて、健康を祈る毎日である。