リタイア暮らしは風の吹くまま

古希を迎えて働く奥さんからリタイア。人生の新ステージで
目指すは悠々自適で遊びたくさんの極楽とんぼ的シニア暮らし

結局は女が支配するということ

2013年10月09日 | 日々の風の吹くまま
今日はArts Clubの『Venus in Fur』のオープニングナイト。シーズン2つ目で、グランヴィルア
イランドの劇場での第1弾。比較的新しい作品で、「マゾ」の元祖ザッヘル=マゾッホの小説『毛
皮を着たヴィーナス』を下敷きにした男と女の二人芝居。レセプションの会場は劇場のロビーの
上のラウンジで、舞台監督のアシスタント(女性)が「場所は言えませんが」と(??だからね)、
演出家、出演者と一緒にS&M宿に「見学」に行ったという裏話を披露。ふむ、芸術ってけっこう
タイヘン。

休憩なし90分の二人芝居の男の方はマゾッホの小説の翻案劇を書いた劇作家トーマス。女の
方は、「ヴァンダ」を演じる女優のオーディションをやって「みんな、アホ、バカ、低脳、頭空っぽで
使えねぇ」とわめいているトーマスのところへ、雷雨の中を駆けつけて来てオーディションを要求
する女優ヴァンダ(名前だけでなく、持参したものにも伏線がたっぷり。)自分こそ適役、ノーとは
言わせないというヴァンダの突っ走りに振り回されて、トーマスはしぶしぶオーディションの本読
みに応じる。が・・・。

舞台はずっと2人だけなので、主役はせりふ。読み合わせの「劇中劇」の人物のやりとり(時代
物風の言葉使い)と「劇」の人物のやりとり(今どきの言葉使い)が目まぐるしく切り替わるので、
神経を集中していないと、どっちがどっちなのかわからなくなって来る。どうもそれが作者アイヴ
スの狙いらしい。ヴァンダの巧みな誘導で劇中劇の男女の役が入れ替わって、トーマス演じる
「女」が、ヴァンダ演じる「男」に支配してくれと求める構図になり、芝居と現実、マゾとサド、男と
女の力関係まで線引きがあやふやになって来る。トーマスがヴァンダに真っ黒な長いブーツを
履かせる場面では満員の客席が息を潜めて、し~ん。最後は毛皮のコートに身を包んだヴァン
ダが「アフロディーテばんざ~い」と勝ち鬨を挙げ、首輪で柱につながれたトーマスが唱和して、
雷鳴と共に幕。

アフロディーテはギリシャ神話、ヴィーナスはローマ神話の愛の女神。「女神」と言うところに、形
はどうあれ「男女のパワーゲームを支配するのは女」という古代の人の見識の深さが現れてい
るような気がするな。(野生動物の世界では交尾する相手を選ぶ決定権はメスが握っていること
が多いそうだしね。)ふう。1時間半ぶっ通しで力を入れていたせいか、ちょっと肩が凝ったけど、
すご~く見ごたえのある芝居だった!