
写真はトレド旧市街の街並み。道は建物を間を縫うように幅が狭く、曲がりくねってついている。モンブランケーキのクリームの中を縫って歩いているような気持ちになった。
【カンも地図アプリもダメ】
三方向をタホ川に囲まれ標高500メートルの山に築かれたトレドは古くから要塞都市として、ローマ人、イスラム勢力、キリスト教徒と次々と為政者が交代していきました。
そして1561年に首都がマドリードに移るまで、スペインの事実上の首都として君臨。その後の首都の移転によって、その時代が冷凍保存されたように街並みがそのまま残りました。
今とほとんど変わることのない風景を、1584年には戦国時代に九州の大友宗麟らが派遣した天正遣欧使節団が、1614年には奥州の伊達政宗が派遣した慶長遣欧使節団がトレドに宿泊し眺めています。当時、すでに首都はマドリードに移転していたため、彼らはいずれも国王との謁見のために、すぐにマドリードに向かいました。
そして今もトレドは、息詰まるほどの狭く曲がりくねった小道が連なって小高い層をなしています。そのため教会の出口を出て、元に戻ろうと別の道を通って帰ろうとすると、方向は間違いないはずなのに、迷うのです。

自分でいうのもなんですが、方向感覚には自信があり、紙の地図を読んで歩くのは得意なのですが、ここでは勘はまったく通じません。
いっぽう、わが娘は、おそろしいほどの方向オンチなのですが、彼女は勘に一切頼ることなく、常にスマホを使って地図アプリで日頃の生活を乗り切っていました。ところが、この地図アプリも、トレドでは通じないのです。1メートル幅の狭い道が石の建物に挟まれているのため電波が通じず、たとえ電波が通じてもGPSがもっとも苦手とする立体地形なのです。
【カード決済にも支障が】
ほかにも困ったことがありました。トレドの小道脇の小さな雑貨店で地元産のクルミを買ったときのこと。カード可だというので、出すと店主がクレジットカードを読み取り機に挿したまま、黙って店を出て路地でウルトラマンが変身するときのように高々と掲げてあっちをウロウロ、こっちをウロウロ。やがて、電波にぶつかり、決済を終えて戻ってきました。これは日常のようです。
ちなみにこの狭い溝のような、複雑に曲がりくねった道は1000年以上前のイスラム統治時代の名残だそうです。
(つづく)
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