
シーサンパンナ・景洪市内のタイ族料理店の裏庭で陰干しされていた干巴。タイ族の伝統料理の本には、細切りにして風干し、と書かれているのだが、この店では豪快に肉を20カ所ほどで切って、かたまりで干す。当然、この厚さは天日だけでは間に合わず、いぶす工程を伴う。
【木の棒で叩く】
さて、タイ族には、特別な日のごちそうとして伝統的に牛肉が供されることがわかりました。しかも最高級の食べ方は生肉として。
そんな中にあった昆明で特産品として売られていたタイ族のビーフジャーキーは、パッケージにあったように本当にタイの伝統食品なのでしょうか?
現在のシーサンパンナのタイ族には「干巴」というと二つの意味があり、一つが先述のビーフジャーキー、もう一つが牛肉を長っぽそく切り、塩して簡単に風干ししたもの、を指します。
後者はタイ東北部イサーンで暮らす森本さんも
「肉が大量にあれば塩と胡椒を揉み込み干し肉に、魚は開いて塩を揉み込み干し魚に」いつの間にかする習慣がついてしまった、と書いています。
冷蔵庫がない地域では保存にかかせない手軽な方法なのです。
また、どうぜパリパリに感想させても風土がしめっていたら、パリパリを保つのすらたいへんです。
そもそも、本家本元のインディアンが作っていたビーフジャーキーは、卵を落とすと目玉焼きができるようなグランドキャニオンなどの沙漠で、じりじり日にさらし必然的に炙ったような乾燥度合いになったもの。つまりアジアと同じ天日干しです。その風土にはかなったものなのです。
となると、昆明の土産物屋のビーフジャーキーは燻製なので日本の鰹節のようにかび付けなどの特殊技術がない限り、昔からあった料理とはいいがたい気がしてきます。
『傣族風俗志』(白立元編著、中央民族大学出版、1995年)に紹介される肉メニューに、酸肉のほかに、料理名は書かれていないのですが、生肉に唐辛子、ショウガ、ネギ、塩などの材料をまぶして、盆に並べて軽く干したあとに、木の棒で叩いてから、果物を発酵させて作った酸っぱい水を絡めて食べる方法を伝統的な料理として紹介しています。天日干しですね。
さて、ここで気になるのが「木の棒で叩く」。雲南のビーフジャーキーのパッケージにある最後の仕上げの「木の棒で叩く」という料理法は、どうやら昔からあったようです。 (つづく)
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