石油と中東

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業績が大幅に落ち込んだ五大国際石油企業:2019年度業績速報シリーズ(10)

2020-02-24 | 海外・国内石油企業の業績

III. 2018年と2019年の5社業績比較(続き)
(資産売却で上流部門の利益が激減したChevron!)
2.損益
(1)総合損益
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-11.pdf 参照) 
2019年の利益は各社とも前年を下回っている。Totalのみ微減にとどまったものの、他の4社は大幅な減益であり、特にChevronの利益は5分の1に激減している。Shell、ExxonMobil及びTotalの3社は100億ドルを超える利益を確保しているものの、ShellとExxonMobilは前年度の3分の2の利益にとどまっている。

5社の中で2019年の利益が最も高かったのはShellの158億ドルであるが、2018年の234億ドルに比較すると32%の減益である。ExxonMobilはShellに次ぐ利益を上げているが、やはり前年に比較すると31%減少している(208億ドル→143億ドル)。この2社に対しTotalは健全な決算であり、利益は前年の114億ドルから2019年は113億ドルとほとんど変化していない。

BPの利益は40億ドルであり、これは前年(94億ドル)の4割減である。Chevronさらに減少幅が大きく、2018年の148億ドルから5分の1の29億ドルになり、他の4社に比べ落ち込みが激しい。

(2)上流部門と下流部門の損益比較
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-13.pdf 及びhttp://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-14.pdf参照) 
各社の利益を上流部門(生産)と下流部門(精製)に分けてみるとExxonMobilが上流部門で前年をやや上回ったことを除き、各社は上流部門、下流部門のいずれも減益となっている。

上流部門では、2018年はBPが146億ドルで最も多く、ついでExxonMobil141億ドル、Chevron133億ドルであり、Total、Shellはそれぞれ85億ドル、68億ドルであった。これに対して2019年はExxonMobilが144億ドルと前年をわずかながら上回る利益を確保したが、その他の4社はいずれも前年を下回った。即ちBPは146億ドル→112億ドル(23%減)であり、Totalは85億ドル→75億ドル(12%減)となった。特にChevronは前年の133億ドルから一挙に4分の1以下の26億ドルに激減し、5社の中では上流部門の利益が最も低い水準になった。同社の場合は先に述べたように、米国内のシェール鉱区を売却するなど上流部門を中心に資産の再編成を行ったためである。

 次いで下流部門を見ると、2018年に比較すると全社の利益が減少している。但し各社によって減益幅は異なり、利益を最も大きく下げたのはExxonMobilの▲61%(60億ドル→23億ドル)である。Chevronも2018年の38億ドルから2019年は25億ドルに35%減少している。その他Shell、BP及びTotal の減益率は10%台にとどまっている。

(業績悪化だが設備投資は横ばいまたは増額!)
3.設備投資
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-15.pdf 参照)
 2018年と2019年の5社の設備投資はBPが前年を下回り、Shellは前年並み、その他3社は増額であった。特にExxonMobilは259億ドルから311億ドルに増額している。5社の中ではExxonMobilが300億ドル台で他の4社を大きく上回っている。Shellの設備投資は前年と同じ230億ドル、Chevronは210億ドル(前年比4%増)とそれぞれ200億ドル台の投資額を行った。Totalは156億ドル(2018年)→174億ドル(2019年、12%増)、BPは167億ドル(2018年)→154億ドル(2019年、8%減)であった。

(続く)

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 前田 高行
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