石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

SF小説:「新・ナクバの東」(33)

2022-08-16 | 荒葉一也SF小説

(英語版)

(アラビア語版)

2022年8月

Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」

 

33. 虚空に消えた「ダビデの星」()

 

三機編隊の後方に米軍の戦闘機が近づきつつあった時、『アブダラー』は他の二人のパイロットと同様米軍の救援により「地上」に舞い戻れるという安心感が高まった。彼は自分自身に言い聞かせた。

 

<落ち着け!米軍に従えば無事に帰還できる>と。

 

しかしその一方、他の二人とは異なり彼だけは安心感と不安感が交錯する奇妙な感覚を覚え始めていた。その感覚は『マフィア』が隊列を離れ伴走の米軍機と共にアラビア半島方面に消えて行き、次は自分の番だと告げられた時、少し鋭さを増した。

 

米軍機のパイロットが『マフィア』の時と同じように『アブダラー』機の下に回り込み、装備を確かめた。パイロットは左翼と胴体部分にそれぞれ1発づつのミサイルが装着されたままであることを目視するとそのことを直ちに基地に報告した。基地に緊張が走った。

「右上方を見よ!」

『アブダラー』の耳に米機のパイロットの声が飛び込んできた。

 

「これから給油機により貴機に空中給油を行う。」

 

米戦闘機の後に従いつつ揺れ動く心に気を取られていた『アブダラー』は我に返り窓外を見た。黒い巨体が頭上に迫っていた。

 

先導役の米戦闘機が並走態勢に戻り、給油機が覆いかぶさるように彼の戦闘機の上にせり出し、腹部から給油パイプを空中に伸ばし始めた。

 

「本給油機は我が国がイスラエル空軍に売却したものと同じ型式だ。従って通常の訓練の要領で給油を受けよ。」

 

今度は給油機のパイロットの声であった。頭上の給油機のマークが目に入った。パイロットになりたての時、米国アリゾナ州の空軍基地で受けた飛行訓練を思い出した。あの時と全く同じ光景だ。否、一つだけ違うことがあった。それはあの時『アブダラー』が操縦したのは五角形の星の米軍訓練機であったが、今彼が操縦している戦闘機には六角形の星がついている。

 

入れ替わりに再び米軍戦闘機のパイロットが語りかけてきた。

 

「給油が終わる頃にはホルムズ海峡を越えているはずだ。そこでディエゴ・ガルシア島の基地を発進した別の米軍機に護衛業務を引き継ぐ。彼が貴機をディエゴ・ガルシアまで送り届ける予定である。」

 

(続く)

 

荒葉一也

(From an ordinary citizen in the cloud)

前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エネルギー価格高騰で過去最大級の利益:2022年4-6月期五大国際石油企業決算速報 (4)

2022-08-16 | 海外・国内石油企業の業績

1. 各社の業績概要(続き)

表1-D-4-22a「2022年4-6月期国際石油企業の業績(売上、損益)」参照。

表1-D-4-22b「2022年4-6月期国際石油企業の業績(キャッシュフロー、設備投資)」参照。

表1-D-4-22c「2022年4-6月期国際石油企業の業績(原油・天然ガス生産量)」参照。

 

(売上高利益率が低いTotalEnergies!)

4. TotalEnergies

プレスリリース:

https://totalenergies.com/media/news/press-releases/totalenergies-second-quarter-and-first-half-2022-results

 

(1)売上・利益・利益率

 TotalEnergiesの2022年4-6月期は売上高748億ドル、利益57億ドルで売上高利益率は7.6%であった。利益率は他の4社が二桁だった中で唯一一桁台にとどまっている。前期(1-3月期)と比較すると、売上高は+9%増、利益は15%増であり、また前年同期(2021年4-6月期)比では売上高2.9倍、利益は2.6倍である。

 

(2)キャッシュフロー及び設備投資

 今期の営業キャッシュフローは163億ドル、投資キャッシュフローは▲50億ドルであり、財務キャッシュフローは▲86億ドルであった。期末残高は前期を15億ドル上回る328億ドルとなっている。

 TotalEnergiesの4-6月期設備投資は49億ドルであった。

 

(3)原油・天然ガス生産量

 TotalEnergiesの4-6月期原油・天然ガスの生産量は、日量平均で原油148万B/D、天然ガス68億立法フィート(cfd)であった。天然ガスを原油に換算した原油・天然ガス合計生産量は274万B/Dである。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石油と中東のニュース(8月16日)

2022-08-16 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・景気後退の兆しで原油価格下落。Brent $98.15, WTI $92.09

・イラン原油、アジア向け9月価格を引き上げ

・サウジアラムコ、2025年までに生産能力を1,300万B/Dに引き上げ

 

(中東関連ニュース)

・イラク裁判所、サドル派の国会解散要求を退ける

・イラン政府、「悪魔の詩」作者襲撃事件への関与を否定

・Fitch、オマーンのソブリン格付けをBB-からBBに引き上げ。 *

*参考:S&Pソブリン格付け(2022年7月現在)

・エジプト:コプト教会で火災、41人死亡

・イラン経由のロシア-インド通商ルート:6-7月2カ月間で3千トン

・サウジアラムコ4-6月四半期決算。過去最高484億ドルの利益

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする