2. 2022年1月以降の格付け推移(続き)
(高い格付けの産油国、戦争で格下げが止まらないイスラエル!)
(4)中東主要国の格付け推移
2022年 2023年 2024年 2025年
1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月
カタール AA→ AA→ AA→ AA→ AA→ AA→ AA
アブダビ AA-→ AA-→ AA→ AA→ AA→ AA→ AA
イスラエル AA-→ AA-→ AA-→ AA-→ AA-→ A+→ A
サウジアラビア A-→ A-→ A-→ A→ A→ A→ A
オマーン B+→ BB-→ BB→ BB→ BB+→ BB+→ BBB-
トルコ B+→ B+→ B→ B→ B→ B+→ BB-
エジプト B→ B→ B→ B→ B→ B-→ B-
レバノン SD→ SD→ SD→ SD→ SD→ SD→ SD
中東諸国で最も高い格付けを得ているのはカタールとアブダビである。カタールは2022年1月にはすでに「AA」の格付けを得ており、アブダビは2022年下半期に「AA-」から「AA」に格上げされている。なおS&PはUAEを構成する各首長国を個別に格付けしており、ほかにラス・アル・ハイマが「A」に格付けされているが、ドバイなど他の首長国は格付けされていない。
イスラエルは2022年はアブダビと同等の「AA-」に格付けされていたが、2024年上半期に「A+」に格下げされ、さらに下半期には「A」へとわずか1年の間に2ランク格下げされている。ガザ地区でハマスと激しい戦闘を行い、さらにレバノン南部、シリアゴラン高原に戦線が拡大した結果、同国の経済が悪化、国際的な信用力も落ちたことが格下げの要因と言えよう。
サウジアラビアは、2022年まで「A-」であったが、2023年上半期に「A」に格上げされて現在に至っている。オマーンは過去3年間で格付けが大幅に改善されている。即ち2022年1月の格付けが「B+」であったオマーンは、同年中に「BB-」から「BB」に、さらに2023年下期に「BB+」、翌年はさらに1ランク格上げされ、今年1月現在は投資適格の「BBB-」に格付けされている。GCC諸国は堅調なエネルギー価格と需要に支えられ経済が好調でソブリン格付けも格上げされているようである。
トルコとエジプトの格付け推移は対照的である。2022年1月は「B+」であったトルコは一時「B」に落ちたが、その後回復、今年1月現在は「BB-」に格付けが上がっている。一方、エジプトは昨年上半期まで「B」であったが、それ以降「B-」に格下げされている。
因みに格付け「BB」と「B」の違いは、「BB」が「債務者は短期的にはより低い格付けの債務者ほど脆弱ではないが、高い不確実性や、事業環境、金融情勢、または経済状況の悪化に対する脆弱性を有しており、状況によってはその金融債務を期日通りに履行する能力が不十分となる可能性がある」とされ、「B」は「債務者は現時点ではその金融債務を履行する能力を有しているが、「BB」に格付けされた債務者よりも脆弱である」とされている。また、プラス記号(+)、マイナス記号(-)は、各格付けカテゴリーの中での相対的な強さを表している。
以上
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