石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2014年版解説シリーズ:石油篇10 消費量(3)

2014-07-05 | その他

(注)本レポート1~18回は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0318BpOil2014.pdf

 

(半世紀で世界の石油消費量は3倍に!)
(3)1965年~2013年の地域別消費量の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-3-G02.pdf参照)
 1965年の全世界の石油消費量は3,081万B/Dであったが、5年後の1970年には1.5倍の4,535万B/Dに増え、さらに1980年には2倍の6千万B/D強になった。1980年代は横ばいであったが、1990年以降再び増加に勢いがつき、1995年には7千万B/Dを超えた。そして2000年代前半には8千万B/D台を超え2013年の消費量はついに9千万B/Dを突破し9,133万B/Dに達している。過去半世紀足らずの間に全世界の石油消費量は3倍近く増えているのである。

 これを地域別にみると、1965年には北米及び欧州・ユーラシア地域の消費量はそれぞれ1,293万B/D、1,156万B/Dとこの2つの地域だけで世界の石油消費の8割を占めていた。その他の地域はアジア・大洋州は世界全体の11%(325万B/D)に過ぎず、中東、中南米、アフリカは合わせて300万B/Dに留まっていた。しかしその後、アジア・大洋州の消費の伸びが著しく、1980年には1千万B/Dを突破、1990年代に欧州・ユーラシア地域の消費が伸び悩む中で、1997年にはついに同地域を追い抜き、2000年には2,128万B/Dに達した。さらに2007年には北米をも上回る世界最大の石油消費地域となり、2013年の消費量は世界全体の3分の1を占める3,047万B/Dとなっている。

 欧州・ユーラシア地域は1965年に1,156万B/Dであった消費量が1980年には2,396万B/Dまで増加している。しかしその後消費量は減少傾向をたどり1990年代後半以降は2,000万B/Dを切った。2010年以後も地域の経済不振のため減少し続けており2013年の石油の消費量は1,865万B/Dで世界全体に占める割合はかつての40%から20%にまで低下している。

 北米地域については1965年の1,293万B/Dから1980年には2千万B/Dまで伸び、1980年代は需要が停滞した後1990年代に再び増勢を続け2005年には2,512万B/Dに達した。その後減少し2013年は2,329万B/Dであった。北米の石油消費量は2010年2,351万B/D、2011年2,333万B/D、2012年2,295万B/Dと4年連続して減少傾向にあるが、これはいわゆる「シェール革命」で先行したシェールガスが石油に取って代わったためと考えられる。2013年の石油消費量が上向きに転じたのはシェールオイルの生産が軌道に乗ったことにより石油の天然ガスに対する競争力が回復し、またシェール革命によりエネルギー価格全体が安くなり国内産業が活気を帯びたことが原因の一端であろう。 (天然ガスの生産・消費については後述)。

 その他の中東、中南米、アフリカ地域は世界に占める割合は小さいものの、消費量は着実に増加している。特に中東地域は1965年の89万B/Dが2013年には853万B/Dと半世紀で約10倍に膨張している。中東には石油の輸出国が多いが各国の国内消費の伸びが生産のそれを上回れば、その分輸出余力が減少することになる。この事実は将来の石油需給問題に影を投げかけていると言えよう。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp


 

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今週の各社プレスリリースから(6/29-7/5)

2014-07-05 | 今週のエネルギー関連新聞発表

6/30 国際石油開発帝石    オーストラリア イクシスLNGプロジェクトガス輸送パイプラインの敷設作業の開始について http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2014/20140630.pdf
7/1 JX日鉱日石エネルギー    社長就任挨拶について http://www.noe.jx-group.co.jp/newsrelease/2014/20140701_01_0944355.html
7/1 JX日鉱日石開発    社長就任挨拶について http://www.nex.jx-group.co.jp/newsrelease/2014/post_10.html
7/1 国際石油開発帝石    オーストラリア イクシスLNGプロジェクトモジュールの搬入開始について(お知らせ) http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2014/20140701.pdf
7/1 石油連盟    2014年度潤滑油需要見通しについて http://www.paj.gr.jp/paj_info/press/2014/07/01-000698.html
7/2 三菱商事    世界初 船舶向けLNG燃料供給事業に本格参入~三菱商事、GDF スエズ、日本郵船3社による事業化の推進~ http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/pr/archive/2014/html/0000025136.html
7/4 出光興産    ノルウェー領バレンツ海 探鉱鉱区で試掘に成功 http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2014/140704.html

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月4日)

2014-07-04 | 今日のニュース

・リビアの輸出正常化で原油価格下落。8月渡しBrent$110.72. WTI$103.77

 

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BPエネルギー統計レポート2014年版解説シリーズ:石油篇9 消費量(2)

2014-07-03 | その他

 

(注)本レポート1~18回は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0318BpOil2014.pdf

 

 

3.世界の石油消費量(続き)
(石油を爆食する米国と中国、両国だけで世界の石油の3分の1を消費!)
(1) 国別消費量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-3-T01.pdf 参照)
 国別に見ると世界最大の石油消費国は米国で、2013年の消費量は1,889万B/D、世界全体の20%を占めている。第二位は中国の1,076万B/D(シェア12.1%)である。前年の中国のシェアは11.4%であり、毎年その比率は上昇している。米国と中国を合わせたシェアは32%であり両国だけで世界の3分の1の石油を爆食していることになる。

  3位の日本の消費量は455万B/Dで前年より3.8%減少している。消費量の多い上位10カ国の中で前年より減少したのは日本の他は第9位のカナダ(0.5%減)の2カ国だけであり、日本の減少幅が突出して高い。日本の消費量は米国の4分の1、中国の4割強である。4位以下はインド(373万B/D)、ロシア(331万B/D)、サウジアラビア(308万B/D)、ブラジル(297万B/D)と続いている。石油は米、日の先進2カ国及びBRICsと呼ばれる中国、インド、ロシア、ブラジルの新興4カ国に大産油国でもあるサウジアラビアを加えた7カ国で世界の半分を消費している。この他ベストテンに入っているのは第8位韓国(246万B/D)、第9位カナダ(239万B/D)、第10位ドイツ(238万B/D)である。

 2012年と比較すると、国別順位全く変わっていない。但し対前年消費量の増減を各国ごとに見ると上述のとおり日本とカナダ2カ国のみが減少し、他の8カ国は増加している。増加率が最も高いのはブラジル(+5.8%)であり、中国、ロシア及びサウジアラビアが3%台の増加率となっている。米国は2.0%増加、ドイツは0.9%増であった。

 国別消費量を前章の国別生産量(第2章(2))と比較すると興味ある事実が浮かび上がる。米国と中国は消費量世界一位と二位であるが、生産量についても米国は世界3位、中国は世界4位である。両国は石油の消費大国であると同時に生産大国でもある。そしてサウジアラビア及びロシアは言うまでもなく世界一、二位の石油生産量を誇っている。その他消費量9位のカナダは生産量世界5位であり、消費量7位のブラジルも生産量世界13位である。このように石油消費量上位10カ国のうち6カ国は石油の生産量も多い国々であるが、消費量ベストテンに入っていても生産量が皆無もしくは非常に少ない国は日本、インド、韓国及びドイツの4カ国である。このように石油を大量に消費する国といえどもその状況は各国によって大きく異なる。従って「消費国」と言うだけで結束して産油国(例えばOPECなど)に対峙することは容易ではないのである。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月2日)

2014-07-02 | 今日のニュース

・Brent原油$112/バレルに張り付く。WTIは$105.76

・イラン原油輸出5月の133万B/Dから6月は121万B/Dに減少。それでも欧米設定限度量100万B/D上回る

 

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BPエネルギー統計レポート2014年版解説シリーズ:石油篇8 消費量(1)

2014-07-01 | その他

 

(注)本レポート1~18回は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0318BpOil2014.pdf

 

 

3.世界の石油消費量
(世界の石油消費の3分の1はアジア・大洋州!)
(1) 地域別消費量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-3-G01.pdf 参照)
 2013年の世界の年間石油消費量は日量9,133万バレル(以下B/D)であった。地域別でみるとアジア・大洋州が3,047万B/Dと最も多く全体の33%を占め、次に多いのが北米の2,329万B/D(26%)であった。2007年以降はアジア・大洋州が北米を上回る最大の消費地域となっており、この傾向は今後定着するものと思われる。これら二つの地域に続くのが欧州・ユーラシア1,865万B/D(20%)であり、これら3地域で世界の石油の8割を消費している。残りの中東(9%)、中南米(8%)及びアフリカ(4%)の3地域を合計しても2割に過ぎず、石油の消費は先進地域(北米、欧州・ユーラシア)及び新興工業国が多いアジア・大洋州に偏っている。

 各地域の消費量と生産量(前回参照)を比較すると、生産量では世界全体の33%を占めている中東が消費量ではわずか9%であり、アフリカも生産量シェア10%に対して消費量シェアは4%に過ぎない。これに対してアジア・大洋州は生産量シェア10%に対して消費量シェアは33%、また北米のそれは19%(生産量)、26%(消費量)といずれも大幅な消費超過となっている。欧州・ユーラシアは生産量も消費量も20%で均衡している。このことからマクロ的に見て、世界の石油は中東及びアフリカ地域からアジア・大洋州及び北米地域に流れていると言えよう。

(続く)

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