石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

石油生産量世界一に躍り出た米国:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ:石油篇17

2015-07-14 | その他

 

(注)本レポートNo.1~18は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0349BpOil2015.pdf

 

 

5.世界の石油精製能力(続き)
(米国を急追する中国の石油精製能力!)
(4)主要国の石油精製能力の推移(1965年~2013年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-5-G03.pdf 参照)
  世界の石油精製能力上位10カ国のうちここでは米国、中国、インド、日本、サウジアラビア及びドイツの6カ国について1965年から2014年までのほぼ半世紀の石油精製能力の推移を追ってみる。

 現在世界最大の石油精製能力を有する米国の1965年のそれは1,039万B/Dであり、この時既に他国を圧倒する1千万B/Dを超える設備を有していた。この年の日本及びドイツは米国の5分の1以下の192万B/Dと175万B/Dであり、サウジアラビア(30万B/D)、インド(23万B/D)、中国(22万B/D)に至っては米国の40分の1から50分の1程度にすぎなかった。

 日本とドイツは第1次オイルショック(1973年)までは高度成長の波に乗り精製能力の増強を図り、第2次オイルショック(1979年)直後の1980年の精製能力は日本が564万B/D、ドイツ342万B/Dまで伸びた。しかしその後両国はいずれも設備能力を縮小し続け、2014年は日本375万B/D、ドイツ206万B/Dになっている。

 一方中国は能力拡大の一途をたどり、1965年の22万B/Dから1985年には10倍の215万B/Dに達している。1990年以降は拡大のペースが一段と高まり、289万B/D(1990年)→401万B/D(1995年)→541万B/D(2000年)→716万B/D(2005年)→1,030万B/D(2010年)と驚異的なスピードで精製能力を増強、2000年には日本を追い抜いている。2014年の精製能力は1,410万B/Dであり米国との差は370万B/Dにまで縮まっている。現在のペースで設備増強が続けば2020年までには米国をしのぎ世界最大の精製能力を有することになりそうである。

 インドの場合も1965年の精製能力は中国と殆ど同じ23万B/Dにすぎなかったが、1975年には56万B/Dに倍増、1980年代後半に100万B/Dを超え、2000年には222万B/Dに達してドイツに並んだ。さらにその後も能力は増加し2014年には432万B/Dと遂に日本を追い抜いている。インドは2000年から2014年までの間に能力を2倍に増強しており、同じ期間内の日本が0.75倍と能力を削減しているのとは対照的である。日本と中国・インドの差は経済の成熟度の差であると同時に、日本が省エネ技術により石油製品の消費を抑えているのに対し、中国及びインドはエネルギー多消費型の経済開発により高度成長を遂げつつあるためと考えられる。

 OPEC(石油輸出国機構)の盟主であるサウジアラビアは原油の輸出国と見られているが、精製設備増強にも熱心である。これは原油の付加価値を高めるため石油製品として輸出し、或いは中間溜分を石油化学プラントによりポリエチレンなどの石化製品として輸出することを狙っているためである。また同時に国内では急増する電力及び水の需要に対応するため発電所或いは海水淡水化装置用の燃料が必要とされ、また生活水準の向上によるモータリゼーションのためのガソリンの需要が増大する等、石油製品に対する国内需要が急速に拡大しているためでもある。この結果同国の精製能力は1965年の30万B/Dから70万B/D(1975年)→142万B/D(1985年)→181万B/D(2000年)→211万B/D(2010年)と年々増強され2014年には282万B/Dに達している。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp


 

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石油生産量世界一に躍り出た米国:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ:石油篇16

2015-07-13 | その他

 

(注)本レポートNo.1~18は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0349BpOil2015.pdf

 

 

5.世界の石油精製能力(続き)
(50年間で9倍に増えたアジア・大洋州の精製能力!)
(3)1965年~2014年の地域別石油精製能力の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-5-G02.pdf参照)
 1965年の全世界の石油精製能力は3,451万B/Dであったが、5年後の1970年には1.5倍の5,134万B/Dに増え、さらに1980年には2.3倍の7,900万B/D強になった。その後1980年代は横ばいであったが、1990年以降再び増勢に転じ2000年には1980年を超える8,223万B/Dとなり、さらに2009年には9千万B/Dを突破し2014年の世界の石油精製能力は9,651万B/Dに達している。過去半世紀の間に全世界の精製能力は3倍近くに増えているのである。

 これを地域別にみると、1965年には北米及び欧州・ユーラシア地域の精製能力はそれぞれ1,190万B/D、1,319万B/Dとこの2つの地域だけで世界の72%を占めていた。その他の地域はアジア・大洋州及び中南米がそれぞれ10%、中東は5%で、アフリカはわずか2%に過ぎなかった。しかしその後、アジア・大洋州の伸びが著しく、1975年には1千万B/Dを突破、さらに1990年代後半に2千万B/D、また2012年には3千万B/Dを超え、2014年末の精製能力は3,246B/Dに達している。1965年に比べ精製能力は9倍に拡大しており、この間に北米、欧州・ユーラシアを追い抜き世界最大の石油精製地域となっている。

 欧州・ユーラシア地域は1965年に1,319万B/Dであった精製能力が1975年には3千万B/Dを超え第二次オイルショック時の1980年には3,191万B/Dに達した。しかしこれをピークにその後は減少の一途をたどり2014年には2,372万B/Dまで落ち込んでいる。その結果世界全体に占める割合も1975年の43%から2013年には25%まで低下している。

 北米地域については1965年の1,190万B/Dから1980年には2,200万B/Dまで伸びたが、その後需要の停滞とともに精製能力は削減され2000年までのほぼ20年間は1,900万B/D前後にとどまっていた。2000年代に入り再び2千万B/Dを突破し、2014年の精製能力は2,128万B/Dである。

 中東、アフリカ地域は世界に占める割合は小さいものの、精製能力拡大のペースはアジア地域に決して引けを取らない。中東地域の場合1965年の170万B/Dが2014年には943万B/Dと半世紀で5.5倍に膨張している。またアフリカ地域は1965年にわずか56万B/Dにすぎなかった精製能力が2014年には6.3倍の355万B/Dに増加している。2010年から2014年の過去5年間だけを見ても中東、アフリカ及びアジア・大洋州地域は1.5倍前後の増加となっている。同じ期間を比べると欧州ユーラシアは0.98倍と設備能力が減少しており、北米も1.01倍と殆ど横這い状態である。アジア、中東、アフリカの新興地域は成長を維持していると言えよう。

(続く)

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   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月11日)

2015-07-11 | 今日のニュース

・IEA:原油安製品高による精製部門の短い春終わる。2015-16年には設備新設で供給過剰に。 *

*「BPエネルギー統計解説シリーズ石油篇」(連載中)参照。

 

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石油生産量世界一に躍り出た米国:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ:石油篇15

2015-07-10 | その他

 

(注)本レポートNo.1~18は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0349BpOil2015.pdf

 

 

5.世界の石油精製能力(続き)
(日本を追い越したインドの精製能力!)
(2) 国別石油精製能力
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-5-T01.pdf 参照)
 世界で最も高い精製能力を有する国は米国で、2014年は1,779万B/D、世界全体の18%の設備を所有している。第二位は中国の1,410万B/D(シェア15%)であり、両国だけで世界の3分の1の精製能力がある。精製能力1千万B/D以上はこの2カ国だけであり、第3位のロシアは634万B/Dである。

 2011年に日本を追い抜いたインドの2014年の精製能力は432万B/Dであり前年と変わりないが、日本は前年より9.1%減の375万B/Dとなり、インドとの差は広がっている。石油消費量では日本が430万B/D、インドは385万B/Dで未だ日本が上回っているが(本稿「石油消費」の国別消費量参照)、精製能力では既にインドが日本を上回っているのである。日本では経済産業省の主導で精製設備の集約が推し進められる一方、インドは慢性的な精製設備不足に悩まされており(次項「精製能力の推移」及び主要国の「製油所稼働率」参照)、両国の精製能力の格差は今後ますます広がるものと思われる。
 
 日本に次いで高い精製能力を有するのは韓国(289万B/D)で、さらに第7位以下はサウジアラビア(282万B/D)、ブラジル(224万B/D)、ドイツ(206万B/D)であり、10位のイラン以下は処理能力が200万B/D未満である。サウジアラビアは原油生産国であるが国内に数ヶ所の輸出専用製油所が稼働しており、石油製品の輸出により付加価値の増大を追求しているが、それと共に国内の石油製品の需要が急増しているため製油所の新設が相次いでいる。

 精製能力を前年と比較すると上位10カ国の内、マイナス成長即ち精製能力を削減しているのは日本及び米国の2カ国であり、前年と変更ないのがドイツと韓国およびインドの3か国でその他の5か国は精製能力が増加している。日本の減少幅は上述の通り9.1%であり、米国は0.7%の微減である。日本の設備減少幅は他国に比べて際立って大きいことがわかる。これに対して中国の精製能力は前年比+6%であり、ロシア(+5.2%)、ブラジル(+6.8%)も相当高い能力増強を行っている。なかでもサウジアラビアは前年比11.9%の大幅増であり、2013年も18.9%増と2年連続で二桁成長している。日、米、独の先進消費国が設備を削減もしくは現状維持している一方、中国、ロシア、ブラジルのBRICs各国が設備の新増設を行っていることは象徴的である。

(続く)

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月10日)

2015-07-10 | 今日のニュース

・中国株式市場回復とギリシャ危機で原油価格上昇:WTI$52.90, Brent$58.85

 

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石油生産量世界一に躍り出た米国:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ:石油篇14

2015-07-09 | その他

 

(注)本レポートNo.1~18は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0349BpOil2015.pdf

 

 

5.世界の石油精製能力
(アジア・大洋州に世界の精製能力の3分の1が集中!)
(1) 地域別精製能力
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-5-G01.pdf 参照)
 2014年の世界の石油精製能力は日量9,651万バレル(以下B/D)であった。地域別でみるとアジア・大洋州が3,246万B/Dと最も多く全体の34%を占め、次に多いのが欧州・ユーラシアの2,372万B/D(24%)及び北米の2,128万B/D(22%)であった。これら3地域で世界の精製能力の8割を占めている。その他の地域の精製能力と世界に占める割合は、中東(943万B/D、10%)、中南米(607万B/D、6%)、アフリカ(355万B/D、4%)である。

 後述する通りアジア・大洋州の精製能力は1990年代後半に北米を追い抜き、さらに2000年代後半には欧州・ユーラシア地域を抜いて世界最大規模となったのであるが今後この傾向が定着するものと思われる。

 地域別の精製能力と消費量(本稿3(1)参照)を比較するとアジア・大洋州、中東及びアフリカは共に世界全体に占めるシェアが同じである(アジア・大洋州:34%、中東9%、アフリカ4%)。しかし北米は消費量シェア25%に対して精製能力シェアは23%と消費量シェアの方が高く、中南米も同様に8%対6%と消費量シェアが高い。これに対して欧州・ユーラシア地域は精製能力シェア24%、消費量シェア20%であり、精製能力のシェアの方が高い。

 原油は消費地でガソリン、ナフサ、灯油、重油などに精製され消費されるのが通常である(消費地精製主義)。従って地域内では消費量と精製量はバランスすると考えられる。アジア・大洋州、中東、アフリカでそれぞれのシェアが同じであることがそれを示している。それにもかかわらず欧州・ユーラシアと北米(そして中南米)それぞれのバランスに違いがあるのは、石油消費の先進地である欧州・ユーラシアが1970年代に精製能力を急激に拡張した結果、その後の石油消費の鈍化により過剰設備を抱えてしまったことを意味する。これに対して北米では不足する石油製品を西欧諸国から輸入することにより域内の精製能力を適正水準に維持し利潤を確保してきたと考えられる。

 アジア・大洋州で精製能力と消費量がバランスしているのは発展途上国が多く、増大する石油の消費と精製設備の新増設が並行しているためであろう。但し後述するように(「製油所稼働率」の項参照)消費と精製能力のバランスは同じアジア地域においても日本が過剰設備を抱える一方、東南アジアでは慢性的な精製能力不足であるように国によって事情が大きく異なる。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月8日)

2015-07-08 | 今日のニュース

・米WTI原油続落、$52.09に。イラン核問題、ギリシャ債務問題、中国株続落の帰趨を計りかねる投資家

 

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石油生産量世界一に躍り出た米国:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ:石油篇13

2015-07-07 | その他

(注)本レポートNo.1~18は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0349BpOil2015.pdf

 

(4年ぶりに100ドルを割った原油価格!)
4.指標3原油の年間平均価格と1976~2014年の価格推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-4-G01.pdf参照)
 ここでは国際的な原油価格の指標として使われる米国WTI(West Texas Intermediate)原油、英国北海Brent原油及びドバイ原油の3種類の原油の年間平均価格(ドル/バレル)とその推移を検証する。
 
 2014年の3原油の年間平均価格はBrent原油は98.95ドル(バレル当たり。以下同様)、WTI原油93.28ドル、ドバイ原油97.07ドルでありBrent価格を100とした場合ドバイ原油は98、WTI原油は94であり、WTIはBrentより6%安値であった。

 これら3原油の1976年以降の価格の推移は2010年頃までほぼ同じような歩みを示している。Brent原油で見ると、1976年の同原油の年間平均価格は12.80ドルであった。1979年の第二次オイルショックを契機に価格は急騰、1980年には約3倍の36.83ドルに達した。その後景気の低迷により価格は一転して急落、1986年には14.43ドルと第二次オイルショック前の状況に逆戻りしている。

 この状況は1990年代も続きBrentの年間平均価格は20ドル前後で推移している。ところが1998年の12.72ドルを底に急激に上昇に転じ1999年は17.97ドル、2000年には28.50ドルとわずか2年で2倍以上に急上昇した。その後一旦下落したものの2003年からは上げ足を速め2004年には40ドル弱、2005年に50ドルの大台を超えるとさらに急騰、2008年の年央にはついに史上最高の147ドルに達し、同年の平均価格も100ドル目前の97.26ドルを記録している。

 同年のリーマンショックで2009年には一旦61.67ドルまで急落したが、再び上昇気流に乗り2011年の年間平均価格はついに100ドルを超えて111.26ドルになり、その後2012年、2013年も平均価格は110ドル前後と原油価格は歴史的な高値を記録、これは2014年前半まで続いた。

 しかし数年前から米国のシェールオイルの生産が急激に増えた結果、市場では供給圧力が増し、Brent原油価格は米国WTI原油に引きずられ弱含みの状況になった。これに対してOPECは同年6月の定例総会で生産目標3千万B/Dの引き下げを見送ったため市況は一挙に急落、年末にはついに50ドル割れの事態となった。2014年は前半高値、後半安値という極端な値動きとなり、Brentの年間平均価格は100ドルを下回り98.95ドルとなったのである。

 以上はBrent原油の価格推移であるが、この間のBrent、WTI、ドバイ3原油を比較すると、まず1976年の3原油の平均価格はBrent 12.80ドル、WTI 12.23ドル、ドバイ 11.63ドルでBrentが最も高かった。しかし1980年になるとBrent 36.83ドル、WTI 37.96ドル、ドバイ 35.69ドルとなり、3原油の中でWTIが最も高くなった。これ以降2009年まで年間平均価格はWTIがBrentを上回る状態が続いた。

 ところが2011年の年間平均価格はBrent 111.26ドル、WTI 95.04ドル、ドバイ 106.18ドルとなり、WTIの価格はBrentを下回るのみならずドバイよりも低くなった。この傾向は2012年以降も続いている。そしてBrent及びドバイが100ドル台を維持する中でWTIだけは100ドルを切った水準にとどまったのである。

 このようなWTIの最近の価格動向の最大の原因は米国のエネルギー開発業界を席巻しているシェール革命にあることは間違いない。シェール革命のさきがけとなったシェールガスの開発生産により米国内の天然ガス価格が急落、それにつられてWTI原油価格も弱含みとなった訳であるが、最近ではシェールオイルの生産が本格化し、米国の昨年の石油生産量はついに世界最大の1,164万B/Dに達した(本稿3-4「主要国の生産量の推移」参照)。しかも米国は原油の輸出を禁止しているためWTI価格は国内の石油需給バランスにひきずられ、Brent或いはドバイ原油と乖離した安値にとどまった。2014年後半に入り原油価格全体が急落したため年間平均価格ではBrent、ドバイ、WTIの価格差は縮小している。米国政府が原油輸出解禁に踏み切れば3原油の価格は再び同調するものと見られる。

(続く)

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月6日)

2015-07-06 | 今日のニュース

・BP、メキシコ湾訴訟を解決し株価5%回復。次への飛躍を狙う

 

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石油生産量世界一に躍り出た米国:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ:石油篇12

2015-07-05 | その他

(石油自給率が改善する米国、悪化する中国!)
(5)石油自給率の変化(1990年~2014年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-3-G04.pdf 参照)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-3-G05.pdf参照)
 石油生産国の中でも人口が多く産業規模の大きな国は同時に多くの石油を消費する。例えば米国と中国はそれぞれ世界1位と5位の産油国であるが、消費量では世界1位と2位である。両国を合わせた世界シェアは生産量で18%、消費量では33%に達する。両国とも消費量が生産量を上回るため、米国は1965年以前から既に石油の輸入国であり、中国は1990年代前半に輸入国に転落している。

 米国の場合2014年は生産量1,164万B/Dに対して消費量は1,904万B/Dであり、差し引き739万B/Dの需要超過で石油自給率は61%となる。1965年に78%であった米国の石油自給率は年々低下し1990年代には50%を切り、そして2000年代は40%を割るなどほぼ一貫して低下してきた。しかし同国の自給率は2007年の33%を底に改善しつつあり、2011年は42%で2014年にはついに61%に達している。現在米国は必要な石油の6割を自国産原油で賄っていることになる。

 一方、中国の場合1992年までは生産量が消費量を上回り自給率100%であったが、その後純輸入国に転じている。しかも生産と消費のギャップは年々広がり、2000年に151万B/Dであった需給ギャップが2014年には681万B/Dに拡大している。この結果2000年には68%であった自給率も急速に悪化し、2007年に50%を割り、2014年は38%まで落ち込んでいる。米国と逆に中国は必要な石油の6割を輸入に頼っていることになる。

 インドも中国同様に年々需給ギャップが拡大している。1990年の同国の需給ギャップは50万B/Dであり、自給率は59%であった。その後需給ギャップは2000年に154万B/D、2010年に244万B/Dと年々拡大しており、2014年は295万B/Dに達している。その結果1990年に59%であった同国の自給率は2014年には23%にまで低下しており、ここで取り上げた米国、中国、英国及びブラジルの中では最も低い数値である。

 ブラジルは米国、中国と同様常に生産量が消費量を下回っており石油の輸入国である。しかし同国は深海油田の開発に成功し埋蔵量が大幅にアップしており(第1章3項「8カ国の石油埋蔵量の推移」参照)、これに伴って生産量も急増している(第2章4項「主要産油国の生産量の推移」参照)。このため1990年に44%であった同国の自給率は2005年には81%にまで高まった。但し最近では生産が減退乃至横這い状態にもかかわらず消費は着実に増えているため2014年の自給率は再び73%に下がっている。

 北海油田を抱える英国は2000年には生産271万B/Dに対し消費は170万B/Dで差し引き101万B/Dの生産超過、自給率159%であったが、その後北海油田が減退し2012年には生産量が100万B/Dを割り、2014年は85万B/Dにとどまっている。同国は2000年代後半に石油輸入国に転落し、2014年の需給ギャップは65万B/D、自給率は57%に落ち込んでいる。

 ロシアは上記各国と異なり1990年以降常に生産量が消費量を大幅に上回っている。1990年は生産量1,034万B/Dに対し消費量は504万B/Dで差し引き530万B/Dの輸出余力があった。ロシア革命後の混乱で1990年代は生産が大幅に減退、2000年の輸出余力は404万B/Dまで低下した。しかしその後生産量は再び1千万B/D台を回復し、2010年以降輸出余力は750万B/D前後を維持しており、同国の自給率は300%以上を保っている。

(石油篇消費量完)

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