(注)本レポートNo.1~18は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0349BpOil2015.pdf
5.世界の石油精製能力(続き)
(米国を急追する中国の石油精製能力!)
(4)主要国の石油精製能力の推移(1965年~2013年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-5-G03.pdf 参照)
世界の石油精製能力上位10カ国のうちここでは米国、中国、インド、日本、サウジアラビア及びドイツの6カ国について1965年から2014年までのほぼ半世紀の石油精製能力の推移を追ってみる。
現在世界最大の石油精製能力を有する米国の1965年のそれは1,039万B/Dであり、この時既に他国を圧倒する1千万B/Dを超える設備を有していた。この年の日本及びドイツは米国の5分の1以下の192万B/Dと175万B/Dであり、サウジアラビア(30万B/D)、インド(23万B/D)、中国(22万B/D)に至っては米国の40分の1から50分の1程度にすぎなかった。
日本とドイツは第1次オイルショック(1973年)までは高度成長の波に乗り精製能力の増強を図り、第2次オイルショック(1979年)直後の1980年の精製能力は日本が564万B/D、ドイツ342万B/Dまで伸びた。しかしその後両国はいずれも設備能力を縮小し続け、2014年は日本375万B/D、ドイツ206万B/Dになっている。
一方中国は能力拡大の一途をたどり、1965年の22万B/Dから1985年には10倍の215万B/Dに達している。1990年以降は拡大のペースが一段と高まり、289万B/D(1990年)→401万B/D(1995年)→541万B/D(2000年)→716万B/D(2005年)→1,030万B/D(2010年)と驚異的なスピードで精製能力を増強、2000年には日本を追い抜いている。2014年の精製能力は1,410万B/Dであり米国との差は370万B/Dにまで縮まっている。現在のペースで設備増強が続けば2020年までには米国をしのぎ世界最大の精製能力を有することになりそうである。
インドの場合も1965年の精製能力は中国と殆ど同じ23万B/Dにすぎなかったが、1975年には56万B/Dに倍増、1980年代後半に100万B/Dを超え、2000年には222万B/Dに達してドイツに並んだ。さらにその後も能力は増加し2014年には432万B/Dと遂に日本を追い抜いている。インドは2000年から2014年までの間に能力を2倍に増強しており、同じ期間内の日本が0.75倍と能力を削減しているのとは対照的である。日本と中国・インドの差は経済の成熟度の差であると同時に、日本が省エネ技術により石油製品の消費を抑えているのに対し、中国及びインドはエネルギー多消費型の経済開発により高度成長を遂げつつあるためと考えられる。
OPEC(石油輸出国機構)の盟主であるサウジアラビアは原油の輸出国と見られているが、精製設備増強にも熱心である。これは原油の付加価値を高めるため石油製品として輸出し、或いは中間溜分を石油化学プラントによりポリエチレンなどの石化製品として輸出することを狙っているためである。また同時に国内では急増する電力及び水の需要に対応するため発電所或いは海水淡水化装置用の燃料が必要とされ、また生活水準の向上によるモータリゼーションのためのガソリンの需要が増大する等、石油製品に対する国内需要が急速に拡大しているためでもある。この結果同国の精製能力は1965年の30万B/Dから70万B/D(1975年)→142万B/D(1985年)→181万B/D(2000年)→211万B/D(2010年)と年々増強され2014年には282万B/Dに達している。
(続く)
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