(シェールガス革命で生産量が急増する米国!)
(4)主な国の生産量の推移(2005~2014年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-2-G03.pdf 参照)
2014年の天然ガス生産量が世界1、2、3位の米国、ロシア、カタール、同5位のカナダにオーストラリア(世界17位)及び英国(同23位)を加えた6か国について過去10年間(2005~2014年)の生産量の推移を追ってみる。
ロシアの2005年の生産量は5,801億㎥でありその後徐々に増加し、2008年には6千億㎥を突破した。2010年以降は6千億㎥台前後で浮き沈みを繰り返しており、2014年の生産量は5,787億㎥であった。これは同国の輸出先である西ヨーロッパ諸国の景気が2008年のリーマンショックで急激に減速、現在も冷え込んだままであることが最大の要因である。ロシアの天然ガスはパイプラインで西ヨーロッパに送られており、備蓄が効かないパイプライン輸送は末端の需要に左右されやすいと言える。さらにウクライナ問題で西欧諸国は対ロ経済制裁を強化しつつあるが、これが国内ガス田の開発或いは西欧向け輸出にどのような影響を及ぼすか注目される。このような状況に対してロシアは中国と天然ガス輸出契約を締結し、或いは極東でLNG輸出基地の増強に取り組むなど極東アジアへの輸出に力を入れている。
米国の場合、天然ガス生産量は2005年以降一貫して増加しており、2009年にはロシアを追い抜いて世界一の天然ガス生産国となっている。翌2010年には6千億㎥を突破、その後も急激に増加し、2014年の生産量は7千億㎥を超えて7,283億㎥を記録している。これは2005年に比較すると42%の増加となるが、一方のロシアの生産は停滞しており、2010年以降両国の格差は拡大傾向にある。米国の生産量が急速に増加したのはシェールガスの生産が商業ベースに乗ったことが大きな理由であるが、天然ガスの生産において米国とロシアは圧倒的な存在感を持っており今後も両国が世界の天然ガス生産をリードしていくことは間違いない。
カナダはかつて米国、ロシアに次ぐ世界第3位のガス生産国であったが、2006年以降、生産量の減少に歯止めがかからず2014年の生産量は1,620億㎥となりカタール、イランに次ぐ世界5位に転落している。同国は生産した天然ガスの大半をパイプラインを通じて米国に輸出しているのであるが、米国の自給率が高まった結果、カナダからの輸出が減少している(後述する「主要国の生産量と消費量のギャップ」および「主要国の天然ガスの自給率」参照)。但しカナダは世界15位の豊富な埋蔵量を有しており(前章国別埋蔵量参照)十分な生産余力があると考えられるため、今後はLNGとして日本など極東向けの輸出に力を注ぐことになろう。
英国は生産量が長期下落傾向にある。同国の2005年の生産量は882億㎥であったが、2014年には半分以下の366億㎥に落ち込んでいる。同国の場合は北海油田が枯渇しつつあり、原油と共に産出される随伴ガスの生産量も減少しているためであり、今後も生産量の低下は避けられない。同国は現在ではカタールからのLNGの輸入が急増している(第4章「世界の天然ガス貿易」参照)。
これに対して最近天然ガスの生産が増加しているのがカタールとオーストラリアである。カタールの2005年の生産量は458億㎥に過ぎなかったが、2014年には1,772億㎥に達しカナダを追い抜いている。カタールの場合多くはLNGとして輸出しており、年間77百万トンの輸出体制を整えている。さらに同国はUAEからオマーンに及ぶドルフィン・ガス・パイプランによる生ガス輸出も行っておりこれが生産急増の要因である(後述第4章「世界の天然ガス貿易―カタールの輸出動向」参照)。
オーストラリアはカタールの後を追うように近年ガス田開発と液化設備の建設を行っている。2005年の生産量は371億㎥であったが、2009年には423億㎥まで拡大し、その後2012年には516㎥を生産、その後現在まで500億㎥台の生産を続けている。日本などとの長期契約によりLNGの販売体制を確立、LNGの生産出荷施設も相次いで建設されており今後生産量は飛躍的に増加するものと考えられる。
(天然ガス篇生産量 完)
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