石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

石油生産量世界一に躍り出た米国:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ:石油篇13

2015-07-07 | その他

(注)本レポートNo.1~18は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0349BpOil2015.pdf

 

(4年ぶりに100ドルを割った原油価格!)
4.指標3原油の年間平均価格と1976~2014年の価格推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-4-G01.pdf参照)
 ここでは国際的な原油価格の指標として使われる米国WTI(West Texas Intermediate)原油、英国北海Brent原油及びドバイ原油の3種類の原油の年間平均価格(ドル/バレル)とその推移を検証する。
 
 2014年の3原油の年間平均価格はBrent原油は98.95ドル(バレル当たり。以下同様)、WTI原油93.28ドル、ドバイ原油97.07ドルでありBrent価格を100とした場合ドバイ原油は98、WTI原油は94であり、WTIはBrentより6%安値であった。

 これら3原油の1976年以降の価格の推移は2010年頃までほぼ同じような歩みを示している。Brent原油で見ると、1976年の同原油の年間平均価格は12.80ドルであった。1979年の第二次オイルショックを契機に価格は急騰、1980年には約3倍の36.83ドルに達した。その後景気の低迷により価格は一転して急落、1986年には14.43ドルと第二次オイルショック前の状況に逆戻りしている。

 この状況は1990年代も続きBrentの年間平均価格は20ドル前後で推移している。ところが1998年の12.72ドルを底に急激に上昇に転じ1999年は17.97ドル、2000年には28.50ドルとわずか2年で2倍以上に急上昇した。その後一旦下落したものの2003年からは上げ足を速め2004年には40ドル弱、2005年に50ドルの大台を超えるとさらに急騰、2008年の年央にはついに史上最高の147ドルに達し、同年の平均価格も100ドル目前の97.26ドルを記録している。

 同年のリーマンショックで2009年には一旦61.67ドルまで急落したが、再び上昇気流に乗り2011年の年間平均価格はついに100ドルを超えて111.26ドルになり、その後2012年、2013年も平均価格は110ドル前後と原油価格は歴史的な高値を記録、これは2014年前半まで続いた。

 しかし数年前から米国のシェールオイルの生産が急激に増えた結果、市場では供給圧力が増し、Brent原油価格は米国WTI原油に引きずられ弱含みの状況になった。これに対してOPECは同年6月の定例総会で生産目標3千万B/Dの引き下げを見送ったため市況は一挙に急落、年末にはついに50ドル割れの事態となった。2014年は前半高値、後半安値という極端な値動きとなり、Brentの年間平均価格は100ドルを下回り98.95ドルとなったのである。

 以上はBrent原油の価格推移であるが、この間のBrent、WTI、ドバイ3原油を比較すると、まず1976年の3原油の平均価格はBrent 12.80ドル、WTI 12.23ドル、ドバイ 11.63ドルでBrentが最も高かった。しかし1980年になるとBrent 36.83ドル、WTI 37.96ドル、ドバイ 35.69ドルとなり、3原油の中でWTIが最も高くなった。これ以降2009年まで年間平均価格はWTIがBrentを上回る状態が続いた。

 ところが2011年の年間平均価格はBrent 111.26ドル、WTI 95.04ドル、ドバイ 106.18ドルとなり、WTIの価格はBrentを下回るのみならずドバイよりも低くなった。この傾向は2012年以降も続いている。そしてBrent及びドバイが100ドル台を維持する中でWTIだけは100ドルを切った水準にとどまったのである。

 このようなWTIの最近の価格動向の最大の原因は米国のエネルギー開発業界を席巻しているシェール革命にあることは間違いない。シェール革命のさきがけとなったシェールガスの開発生産により米国内の天然ガス価格が急落、それにつられてWTI原油価格も弱含みとなった訳であるが、最近ではシェールオイルの生産が本格化し、米国の昨年の石油生産量はついに世界最大の1,164万B/Dに達した(本稿3-4「主要国の生産量の推移」参照)。しかも米国は原油の輸出を禁止しているためWTI価格は国内の石油需給バランスにひきずられ、Brent或いはドバイ原油と乖離した安値にとどまった。2014年後半に入り原油価格全体が急落したため年間平均価格ではBrent、ドバイ、WTIの価格差は縮小している。米国政府が原油輸出解禁に踏み切れば3原油の価格は再び同調するものと見られる。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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