(石油自給率が改善する米国、悪化する中国!)
(5)石油自給率の変化(1990年~2014年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-3-G04.pdf 参照)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-3-G05.pdf参照)
石油生産国の中でも人口が多く産業規模の大きな国は同時に多くの石油を消費する。例えば米国と中国はそれぞれ世界1位と5位の産油国であるが、消費量では世界1位と2位である。両国を合わせた世界シェアは生産量で18%、消費量では33%に達する。両国とも消費量が生産量を上回るため、米国は1965年以前から既に石油の輸入国であり、中国は1990年代前半に輸入国に転落している。
米国の場合2014年は生産量1,164万B/Dに対して消費量は1,904万B/Dであり、差し引き739万B/Dの需要超過で石油自給率は61%となる。1965年に78%であった米国の石油自給率は年々低下し1990年代には50%を切り、そして2000年代は40%を割るなどほぼ一貫して低下してきた。しかし同国の自給率は2007年の33%を底に改善しつつあり、2011年は42%で2014年にはついに61%に達している。現在米国は必要な石油の6割を自国産原油で賄っていることになる。
一方、中国の場合1992年までは生産量が消費量を上回り自給率100%であったが、その後純輸入国に転じている。しかも生産と消費のギャップは年々広がり、2000年に151万B/Dであった需給ギャップが2014年には681万B/Dに拡大している。この結果2000年には68%であった自給率も急速に悪化し、2007年に50%を割り、2014年は38%まで落ち込んでいる。米国と逆に中国は必要な石油の6割を輸入に頼っていることになる。
インドも中国同様に年々需給ギャップが拡大している。1990年の同国の需給ギャップは50万B/Dであり、自給率は59%であった。その後需給ギャップは2000年に154万B/D、2010年に244万B/Dと年々拡大しており、2014年は295万B/Dに達している。その結果1990年に59%であった同国の自給率は2014年には23%にまで低下しており、ここで取り上げた米国、中国、英国及びブラジルの中では最も低い数値である。
ブラジルは米国、中国と同様常に生産量が消費量を下回っており石油の輸入国である。しかし同国は深海油田の開発に成功し埋蔵量が大幅にアップしており(第1章3項「8カ国の石油埋蔵量の推移」参照)、これに伴って生産量も急増している(第2章4項「主要産油国の生産量の推移」参照)。このため1990年に44%であった同国の自給率は2005年には81%にまで高まった。但し最近では生産が減退乃至横這い状態にもかかわらず消費は着実に増えているため2014年の自給率は再び73%に下がっている。
北海油田を抱える英国は2000年には生産271万B/Dに対し消費は170万B/Dで差し引き101万B/Dの生産超過、自給率159%であったが、その後北海油田が減退し2012年には生産量が100万B/Dを割り、2014年は85万B/Dにとどまっている。同国は2000年代後半に石油輸入国に転落し、2014年の需給ギャップは65万B/D、自給率は57%に落ち込んでいる。
ロシアは上記各国と異なり1990年以降常に生産量が消費量を大幅に上回っている。1990年は生産量1,034万B/Dに対し消費量は504万B/Dで差し引き530万B/Dの輸出余力があった。ロシア革命後の混乱で1990年代は生産が大幅に減退、2000年の輸出余力は404万B/Dまで低下した。しかしその後生産量は再び1千万B/D台を回復し、2010年以降輸出余力は750万B/D前後を維持しており、同国の自給率は300%以上を保っている。
(石油篇消費量完)
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