石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

米国の原油生産、二年連続で世界一:BPエネルギー統計2019年版解説シリーズ石油篇(5)

2019-06-23 | BP統計

BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

 *BPホームページ:

http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html

 

2.2018年の世界の石油生産量

(中東と北米の両地域で世界の石油の6割を生産!)

(1)   地域別生産量

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-2-G01.pdf参照)

 2018年の世界の石油生産量は日量9,472万バレル(以下B/D)であった。これを地域別でみると中東が3,176万B/Dと最も多く全体の33%を占めている。その他の地域については北米2,259万B/D(24%)、ロシア・中央アジア1,448万B/D(15%)、アフリカ819万B/D(9%)、アジア・大洋州763万B/D(8%)、中南米654万B/D(7%)、欧州352万B/D(4%)である。中東と北米両地域の生産量を合わせるとシェアは57%となり世界の石油生産の6割弱を占めている。

 

 各地域の生産量と埋蔵量(石油篇1参照)を比較すると、埋蔵量のシェアが生産量のシェアより高い地域は中東及び中南米であり、その他の地域(北米、ロシア・中央アジア、アフリカ、アジア・大洋州及び欧州)は生産量のシェアが埋蔵量のシェアよりも高い。例えば中東は埋蔵量では世界の48%を占めているが生産量は33%に過ぎない。中南米も埋蔵量シェア19%に対し生産量シェアは7%である。一方、北米の場合、埋蔵量シェア14%に対して生産量のシェアは24%である。同様にアジア・大洋州も生産量シェアが埋蔵量シェアを5ポイント上回り、ロシア・中央アジアは7ポイント、欧州は3ポイント上回っている。このことから地域別に見て将来の石油生産を維持又は拡大できるポテンシャルを持っているのは中東及び中南米であることが読み取れる。

 

(米国がサウジアラビアおよびロシアを抑えて生産量1位!)

(2)   国別生産量

(表http://bpdatabase.maeda1.jp/1-2-T01.pdf参照)

 次に国別に見ると、最大の石油生産国は米国である。同国の2018年の生産量は1,531万B/Dであり、第2位のサウジアラビア(1,229万B/D)及び第3位ロシア(1,144万B/D)を大きく引き離している。2017年の順位と変わらないが、同年の米国及びサウジアラビアの生産量は各々1,314万B/D及び1,189万B/Dであり、両国の差は120万B/Dから300万B/Dに広がっている。

 

生産量が1千万B/Dを超えるのはこれら3カ国だけであり、3か国が世界に占めるシェアは4割強に達する。ロシアに次ぐ生産国はカナダであるが、その生産量は521万B/Dでありロシアの半分以下である。5位はイランの472万B/Dである。同国の前年の生産量は500万B/Dを超え、ロシアに次ぐ第4位であったが、米国の禁輸制裁のため2018年は主要生産国の中で唯一前年を下回った。6位以下9位まではイラク(461万B/D)、UAE(394万B/D)、中国(380万B/D)、クウェイト(305万B/D)と続き10位以下は300万B/D以下である。

 

10位以下20位までの国とその生産量は以下の通りである。

ブラジル(268万B/D)、メキシコ(207万B/D)、ナイジェリア(205万B/D)、カザフスタン(193万B/D)、カタール(188万B/D)、ノルウェー(184万B/D)、アンゴラ(153万B/D)、ベネズエラ(151万B/D)、アルジェリア(151万B/D)、英国(109万B/D)、リビア(101万B/D)。

 このうちベネズエラは前年比28%減と大きく落ち込んでいる。米国の経済制裁と国内経済の混乱が大きな要因である。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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石油と中東のニュース(6月22日)

2019-06-22 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・石油価格2%近く上昇。Brent $62.95, WTI $54.66

・運賃レート急騰。サウジから中国向け、ほぼ倍増の26,000ドル/日。保険レートもアップ

・ExxonMobilのイラク石油開発プロジェクト、契約条件とイラン危機で遅延

(中東関連ニュース)

・トランプ大統領、イラン攻撃を直前に中止

・民間航空会社に米連邦航空局が注意喚起、英国航空、 KLMなど飛行中止

・イラク米軍基地のロッキード社など民間業者、退避準備中

・日サウジ・ビジョン20302.0を策定、三菱UFJ、横河電機などとMoU締結。  *

 

*経済産業省プレスリリース参照。

https://www.meti.go.jp/press/2019/06/20190618007/20190618007.html

 

 

 

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今週の各社プレスリリースから(6/16-6/22)

2019-06-22 | 今週のエネルギー関連新聞発表

 OPEC 

(Schedule of 15th JMMC, 176th OPEC Conference & 6th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting) 

https://www.opec.org/opec_web/en/311.htm

6/16 Saudi Aramco 

Aramco Trading Company opens Fujairah office in UAE 

https://www.saudiaramco.com/en/news-media/news/2019/aramco-trading-company-opens-fujairah-office-in-uae

6/17 石油連盟 

自動車用ガソリンエンジンオイルの品質規格「GLV-1」の設定について 

https://www.paj.gr.jp/paj_info/press/2019/06/17-001854.html

6/18 経済産業省 

G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合を開催しました 

https://www.meti.go.jp/press/2019/06/20190618008/20190618008.html

6/19 JOGMEC 

三井物産株式会社のモザンビーク共和国における天然ガスの開発・液化事業の出資採択について-モザンビークLNGプロジェクトの最終投資決断- 

http://www.jogmec.go.jp/news/release/news_03_000034.html

6/19 国際石油開発帝石 

幹部社員の人事異動について  

https://www.inpex.co.jp/news/pdf/2019/20190619_b.pdf

6/19 三井物産 

モザンビークにおけるLNGプロジェクトの最終投資決断の実行 

https://www.mitsui.com/jp/ja/release/2019/1228888_11203.html

6/19 住友商事 

海洋石油・天然ガスに係る日本財団-DeepStar 連携技術開発助成プログラムへの共同参画について 

https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/news/release/2019/group/12030

6/20 国際石油開発帝石 

インドネシア共和国 アバディ LNG プロジェクト(マセラ鉱区)における 改定開発計画の提出等について  

https://www.inpex.co.jp/news/pdf/2019/20190620.pdf

6/21 出光興産 

フィリピンに潤滑油販売会社を設立 

https://www.idss.co.jp/business/lube/topics/2019/190621_1.html

6/21 石油連盟 

月岡 石油連盟会長定例記者会見配布資料 

https://www.paj.gr.jp/from_chairman/data/2019/index.html#id1855

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米国の原油生産、二年連続で世界一:BPエネルギー統計2019年版解説シリーズ石油篇(4)

2019-06-21 | BP統計

BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

 

1.世界の石油の埋蔵量と可採年数(続き)

(OPECにロシアを加えると埋蔵量シェアはほぼ8割に!)

(4)OPECと非OPECの比率

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-1-G04.pdf参照)

 既に述べた通り2018年末の国別石油埋蔵量ではベネズエラとサウジアラビアが世界1位、2位であるが、両国は共にOPECのメンバーである。また両国の他にイラン、イラク、クウェイト、UAE及びリビアの合計7カ国が石油埋蔵量の上位10カ国に名を連ねている(「1.世界の石油の埋蔵量と可採年数」参照)。非OPECで世界ベストテンに入っているのは3位カナダ、6位ロシア及び9位米国の3カ国であるが、このうちロシアはOPECと協調減産を行っており、現在同国とOPEC特にサウジアラビアは極めて緊密な連携を取り合っている。

 

この事実を埋蔵量の面で見ると、OPEC全加盟国の埋蔵量は10位以下のナイジェリア、アルジェリア等も合計すると1兆2千億バレルに達し、世界全体(1.7兆バレル)の72%を占めることになる。さらに埋蔵量世界6位のロシアを加えるとOPEC+ロシアの石油埋蔵量が世界に占める割合は全世界の8割近い78%に達する。

 

 加盟国の中にはベネズエラのように埋蔵量の公表数値に水増しの疑いがある国もあるが、統計上で見る限りOPECの存在感は大きい。現在OPEC14か国の内12か国はロシアなど非OPEC10カ国と協調減産を行っているが、将来の生産能力を考えた場合埋蔵量の多寡は決定的な意味を持ってくる。この点からOPEC+ロシアの埋蔵量が世界全体の8割近くを占めていることはOPECとロシアが将来にわたり石油エネルギーの分野で大きな存在感を維持すると言って間違いないであろう。

 

 1995年以降のOPECと非OPECの埋蔵量比率を歴史的に見ると1995年末はOPEC70%、ロシア10%に対しロシアを除く非OPECは20%であった。この比率は2000年末にOPEC+ロシア75%、非OPEC26%となり非OPECのシェアが増加し世界の4分の1を占めるに至っている。しかし2000年以降現在までは非OPECのシェアは毎年低下し、OPECのシェアが拡大している。これは既述の通りベネズエラが2008年から2010年にかけて自国埋蔵量を3倍以上増加させたことが最大の要因である。

 

前項(3)で取り上げたようにOPECのベネズエラ、イラン、イラク3カ国と非OPECの米国、ブラジル2カ国は2000年以降2014年までいずれも埋蔵量が増加している。しかし両グループの性格は全く異なることを理解しなければならない。ベネズエラなどOPEC3カ国の埋蔵量は国威発揚と言う動機が働いて水増しされているものと推測されるが、政府が石油産業を独占しており水増しの有無を検証することは不可能である。

 

これに対して石油産業が完全に民間にゆだねられている米国、或いは国際石油企業との共同開発が一般的なブラジルのような国では埋蔵量を水増しすることはタブーである。何故ならもし水増しの事実が露見すれば当該石油企業は株主訴訟の危険に晒されるからである。かつてシェルが埋蔵量を大幅に下方修正して大問題となったが、私企業としては決算時に公表する埋蔵量は細心の注意を払った数値でなければならないのである。したがって米国やブラジルは経済性の原則に従い油価が高い状況下では探鉱が活発化し埋蔵量が増えるのに対して、油価の低い時期は探鉱投資が低迷し埋蔵量が停滞または減少すると言えよう。

 

またサウジアラビアは2017年に埋蔵量を上方修正しているが、国営石油サウジアラムコの株式上場(IPO)と関連付けた場合、微妙な問題を含んでいるとも言えよう。埋蔵量を多くすることは企業の資産価値を高めることになり、IPOにプラスとなるが、上場後は資産(埋蔵量)をその時々の市場価格で再評価する必要があり、企業価値が大きく上下する原因にもなりかねない。

 

一般論としては埋蔵量に常にあいまいさがつきまとうのは避けられない。本レポートで取り上げたBPの他にも米国エネルギー省(DOE)やOPECも各国別の埋蔵量を公表している。しかしいずれも少しずつ数値が異なる。埋蔵量そのものを科学的に検証することが困難であると同時にそれぞれの査定に(たとえ米国の政府機関と言えども)政治的判断が加わる。結局「埋蔵量」とは掴みどころの無いものとしか言いようがないのである。

 

(石油篇埋蔵量完)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                              Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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石油と中東のニュース(6月20日)

2019-06-20 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・米国、タンカー事件はイランの関与が明白

・Falihサウジエネルギー相、滞在中の東京でシーレーンの安全確保を各国に呼びかけ

(中東関連ニュース)

・ムルシ前エジプト大統領、法廷で倒れ死亡。67歳

・トルコ エルドガン大統領、前エジプト大統領は自然死ではなく獄死と非難

・東京で日サVision2030ビジネスフォーラム開催。 *

・クウェイトサバーハ首長、2012年以来2回目のイラク訪問

・ロシア、シリア難民問題解決のためレバノンにAstana会議のオブザーバー参加要請

・国連がカショギ殺害事件報告書提出:ムハンマド皇太子の関与は明白。  **

・サウジ、国連のカショギ事件報告書のサウジ政府関与明示は根拠なしと非難。 **

・オマーン、酒税を100%から50%に引き下げ

・小林駐オマーン大使、サイード副首相と面談

 

*レポート「サ ウ ジ ・ ビ ジ ョ ン 2 0 3 0 に 赤 信 号 : 皇 太 子 を 警 戒 す る 内 外 の 民 間 経 営 者 た ち」(2019年1月)参照。

http://ocininitiative.maeda1.jp/0458Ocin201901MbSJapanese.pdf
 

**レポート「どうなる?カショギ記者殺害事件の幕引き」(2019年4月)参照。

http://ocininitiative.maeda1.jp/0464KhashoggiCaseApr2019Japanese.pdf

 

 

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米国の原油生産、二年連続で世界一:BPエネルギー統計2019年版解説シリーズ石油篇(3)

2019-06-17 | 今日のニュース

BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

 

1.世界の石油の埋蔵量と可採年数(続き)

(サウジの埋蔵量増加は株式公開が念頭?)

(3)8カ国の国別石油埋蔵量の推移(2005-2018年)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-1-G03.pdf 参照)

 ここではOPEC加盟国のベネズエラ、サウジアラビア、イラン、イラク及びUAEの5カ国にロシア、米国、ブラジルを加えた計8カ国について2005年から2018年までの埋蔵量の推移を追ってみる。

 

ベネズエラの2018年末埋蔵量は世界一の3,033億バレルである。同国が世界一になったのは8年前の2010年からである。2005年当時の同国の埋蔵量は現在の4分の1強の800億バレルにすぎず、サウジアラビアはもとよりイラン、イラク、UAEよりも少なかった。ところが同国は2007年に埋蔵量を994億バレルに引き上げると翌2008年にはさらに2倍弱の1,723億バレルとしたのである。そして続く2009年、2010年にも連続して大幅に引き上げ、それまで世界のトップであったサウジアラビアを抜き去り石油埋蔵量世界一の国となった。

 

ベネズエラの埋蔵量の増加は2006年のチャベス大統領(当時)の再選と重なっており、同大統領が国威発揚を狙ったことは明らかである。即ち埋蔵量が多いことは将来の増産余力があることを示しており、同国がサウジアラビアなどの中東OPEC諸国に対抗し、さらには現在石油の生産と消費が世界一である米国を牽制する意図もうかがわれるのである。しかしながらその後の油価の低迷及び経済の混乱により現在同国は財政破綻に直面しており、米国の経済制裁も絡んで生産量は大幅に落ち込んでいる。

 

一方サウジアラビアは1990年末に改訂して以来2016年末まで埋蔵量は2,600億バレルであり25年以上横ばい状態であった。ただし横這いと言う意味は毎年、生産量を補う埋蔵量の追加があったことを意味している。サウジアラビアの場合は1990年から2016年までの生産量は900~1,000万B/Dであり年率に換算すると33~37億バレルであったから、これと同量の埋蔵量が追加されてきたことになる。これは毎年超大型油田を発見しているのと同じことなのである。このことからサウジアラビアの埋蔵量数値はベネズエラなどに比べ信頼性が高いと評価する専門家が少なくない。しかしサウジアラビアは2017年に埋蔵量を前年の2,660億バレルから2,960億バレルとほぼベネズエラに並ぶ水準に上方修正している。これを純粋に技術的な検討結果と見ることもできるが、国営企業サウジアラムコが株式上場(IPO)を目指していることから、埋蔵量の増加はアラムコの財務評価を上げるためといううがった見方をする向きもある。

 

 非OPECのロシア、米国及びブラジル3カ国の2005年末と2018年末を比較するとロシアはほぼ横ばいであり、米国は2倍、ブラジルも1割増加している。即ち2005年末の埋蔵量はロシア1,044億バレル、米国299億バレル、ブラジル118億バレルに対し、2018年のそれはロシア1,062億バレル、米国612億バレル、ブラジル134億バレルである。特に米国の場合は2009年末までは横ばい状態を続け、2010年に350億バレルに上方修正され、以後2014年まで毎年大きく増加、さらに2017年にも大幅にアップしている。シェールオイルの開発によるものと考えられる。

 

 (続く)

 

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石油と中東のニュース(6月17日)

2019-06-17 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・被爆の日本タンカー、シャルジャ沖合に停泊。ノルウェー船もイラン領海離れる

(中東関連ニュース)

・米、イラクの発電用イラン産ガス輸入許可を3か月延長

・サウジ皇太子:米のイラン制裁を支持、域内の戦争は好まず

・サウジ当局、アルコール飲料認可の報道を否定

・リビア・トリポリ政府首相:年末総選挙を呼びかけ。ベンガジLNA軍はトリポリ攻勢

 

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米国の原油生産、二年連続で世界一:BPエネルギー統計2019年版解説シリーズ石油篇(2)

2019-06-16 | BP統計

BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

 

1.世界の石油の埋蔵量と可採年数(続き)

2.1980年~2018年の埋蔵量と可採年数の推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-1-G02.pdf 参照)

 各年末の可採埋蔵量は、[ 前年末埋蔵量 + 新規発見(又は追加)埋蔵量 - 当年中の生産量]、の数式で表わされる。従って埋蔵量が停滞することは新規発見又は追加埋蔵量と当年の生産量が均衡状態にあることを示し、また可採年数が短くなることは石油資源が枯渇に近づいていることを示している。

 

(2011年以降埋蔵量は1.7兆バレルで頭打ち!)

(1)埋蔵量の推移

  1980年以降世界の石油埋蔵量はほぼ一貫して増加してきた。1980年代後半に埋蔵量が大幅に増えたのは1979年の第二次オイルショックで石油価格が高騰したことにより80年代前半に石油開発に拍車がかかり、その成果が現れた結果だと考えられる。1990年代に入ると毎年の追加埋蔵量と生産量(=消費量)がほぼ均衡し、確認埋蔵量は横ばいの1兆バレルで推移した。2000年代前半には埋蔵量は1.3兆バレル台にアップし、後半は埋蔵量の増加に拍車がかかって、2008年から2010年末まで毎年1千億バレルずつ増加してきた。しかし2011年以降は1.7兆バレル前後で横ばい状態にある。

 

2000年代は中国、インドなど開発途上国の経済が拡大し、それにつれて石油需要がほぼ毎年増加している。それにもかかわらず各年末の埋蔵量が増加したのは石油価格が上昇して石油の探鉱開発のインセンティブが高まった結果、新規油田の発見(メキシコ湾、ブラジル沖、中央アジア等)のほか非在来型と呼ばれるシェール・オイルの開発或いは既開発油田の回収率向上により消費量を上回って埋蔵量が増加したためと考えられる。

 

過去38年間の埋蔵量の推移を俯瞰すると1980年代に増加した後、90年代は停滞、90年代末から2000年代前半に埋蔵量は再び増加し、2000年代半ばに一旦停滞した。そして2008年から2010年にかけて3度目の増勢を示した後、現在は3回目の停滞期に入っているようである。最近まで石油の需要及び価格が低迷、産油国および石油企業は油田の開発投資を大幅に抑制してきた。この間、米国ではシェール・オイルの開発が活発になっているが、石油の新規開発投資は価格及び需要に敏感であり短期的な生産抑制と生産増強のサイクルが繰り返されているため埋蔵量の増加には結び付いていないと考えられる。

 

2,011年に始まった埋蔵量の低迷はすでに長期にわたっており、過去の傾向を見ればそろそろ上昇に転ずる時期にあるとも考えられ、これは需要面で見ても中国、インドなどアジアの新興工業国を中心にエネルギー需要が堅調であることから、産油国の石油開発にインセンティブが働き、埋蔵量の増加につながると推測される。但し環境問題を考慮すると、エネルギー源が石油から天然ガス或は再生可能エネルギーに転換することも考えられ、中長期的に石油埋蔵量がどの様に変化するか見通すことはかなり難しい。

 

(昨年の可採年数は50年、問題含みの下落の兆候!)

(2) 可採年数の推移

可採年数(以下R/P)とは埋蔵量を同じ年の生産量で割った数値で、現在の生産水準があと何年続けられるかを示している。オイルショック直後の1980年は埋蔵量6,800億バレルに対し同年の生産量は6,300万B/D(年換算230億バレル)であり、R/Pはわずか30年にすぎなかった。しかし1990年代にはR/Pは40年台前半で推移し、1999年以後の10年間は40年台後半に伸び、2009年末のR/Pはついに50年を突破した。そして2018年末の埋蔵量は1兆7千億バレル(上記)に対し生産量は9,500万B/D(年換算350億バレル。なお生産量は次章で改めて詳述する)で、R/Pは50年である。

 

石油のR/Pは1980年の30年から2013年には54年へと飛躍している。この間に生産量は6,300万B/Dから8,700万B/Dへ40%近く増加しているのに対して埋蔵量は6,800億バレルから1兆7千億バレルと2.5倍に増えている。過去30年の間毎年7~9千万B/D(年換算約250~320億バレル)の石油を生産(消費)しながらもなお埋蔵量が2.5倍に増えているという事実は石油が地球上で次々と発見され(あるいは技術の進歩によって油田からの回収率が向上し)ていることを示しているのである。

 

かつて石油の生産が限度に達したとするオイル・ピーク論が声高に叫ばれ、石油資源の枯渇が懸念された時期があった。理論的には石油を含む地球上の炭化水素資源は有限である。しかし生産量を上回る新規埋蔵量の追加とそれによるR/Pの増加が示すように、現在の技術の進歩を考慮すると当面石油資源に不安は無いと言って間違いない。

 

現代における問題はむしろ人為的なリスクであろう。人為的なリスクとは例えばイラン問題に見られるような地政学的なリスクであり、或いは治安が不安定なベネズエラ、リビアのような産油国の国内リスク、さらには国際的な投機筋の暗躍による市場リスクなのである。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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石油と中東のニュース(6月15日)

2019-06-15 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・オマーン湾で日本籍タンカー他計2隻が被弾

・トランプ大統領:タンカー攻撃でイランを非難

・原油価格一時4.5%上昇、Brent 13日終値 $61.06

・タンカー2社がペルシャ湾配船を一時見合わせ。BIMCO(国際海運協議会)はメンバー企業に注意喚起

・5月のイラン原油生産量1980年代以来の低水準、輸出は81万B/Dに激減

(中東関連ニュース)

・安倍首相、イラン最高指導者と会談、ハメネイ師:米国は信用できず

・国際司法裁判所、UAEのカタール提訴を15対1で否決

・サウジアラムコ、8月に初の収支報告書公表の予定

・サウジSABIC、米メキシコ湾岸でExxonMobilと合弁石化建設スタート

 

 

 

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今週の各社プレスリリースから(6/9-6/15)

2019-06-15 | 今週のエネルギー関連新聞発表

6/11 JX石油開発 

英国北海カリーンガス田における天然ガスの生産開始について 

http://www.nex.jx-group.co.jp/newsrelease/2019/post_57.html

6/11 国際石油開発帝石 

オーストラリア プレリュードFLNGプロジェクト  液化天然ガス(LNG)の出荷開始について  

https://www.inpex.co.jp/news/pdf/2019/20190611.pdf

6/11 Shell 

Libra Consortium takes final investment decision on Mero-2 FPSO in Brazil’s pre-salt 

https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2019/libra-consortium-takes-final-investment-decision-on-mero.html

6/11 Shell 

First LNG Cargo shipped from Prelude FLNG 

https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2019/first-lng-cargo-shipped-from-prelude-flng.html

6/11 BP 

BP Statistical Review of World Energy 2019: an unsustainable path 

https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/bp-statistical-review-of-world-energy-2019.html

6/11 Total 

Brazil: Total Launches Phase 2 on the Giant Mero Field Development 

https://www.total.com/en/media/news/press-releases/brazil-total-launches-phase-2-giant-mero-field-development

6/12 出光昭和シェル 

中国 恵州に潤滑油製造工場を新設 -年間12万KLの生産能力を有する中国2カ所目の工場- 

https://www.idss.co.jp/news/2019/190612_1.html

6/13 ExxonMobil 

ExxonMobil, SABIC to Proceed with Gulf Coast Growth Ventures Project 

https://news.exxonmobil.com/press-release/exxonmobil-sabic-proceed-gulf-coast-growth-ventures-project

6/14 JXTGエネルギー 

日米拠点のベンチャーキャピタルファンドへの出資について  

https://www.noe.jxtg-group.co.jp/newsrelease/20190614_01_1070022.pdf

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