2) 補修の方法。
② 再度本焼きして、釉で補修する方法。
同じ釉を使い「ひび」や「割れ」、「欠けた部分」に施釉して、再度同じ温度で焼成し、釉で接着する
方法です。上手くいけば極自然にj補修できます。
但し、この方法は、窯をご自分で持っている方、又は再焼成をしてくれる方が必要になりますので
どなたでも出来る補修方法ではありません。
) 「欠け」の場合、大きく欠けた時の処置は、「割れ」の補修方法と同じです。
a) 欠けた破片が小さい場合は、単に同じ濃い目の釉を筆などで盛る方法をとります。
一度焼成すると、普通の釉の濃度では釉肌に載りません。濃い目にするか、CMC糊等を
入れて粘る状態にして塗ります。
b) 欠けた部分が大きく、且つ破片が粉々に成ったり、存在していない事も多いです。
この場合には、欠けた部分を新たに作り、素焼き後に取り付けるか、同じような形状の物を
見つけて取り付けるかの方法をとります。取り付けた際、なにもしなくてそのまま自立している
時は、釉を掛ける事で済みますが、自立出来ない場合には、陶芸用のペースト状の接着剤を
使います。但し、市販品の物でも、高温で確実に接着できるとは限りません。
) 「ひび割れ」の場合、「ひび」の幅によっては、「ひび」の中にまで釉が入り込まないかもしれ
ませんが、「ひび」の裏表から筆などで、釉を塗る事でOKです。同じ温度で焼成する限り、
「ひび」の幅は、それ以上広がりません。
) 急須の蓋の摘みなどが、その付け根より、そっくり取れた場合には、容易に釉で修正が
可能です。 でんぷん質の「やまと糊」などを接着面に塗り接着後、接合周囲に施釉すれば、
完全に補修可能です。
) カップ類の取っ手の場合、多くは側面に「ぶら下がる」状態に成っています。
取っ手部分の重量と、外に出っ張った大きさによっては、接着不可能な事もあります。
即ち、釉は熔けた状態では、接着効果はありません。釉が冷え固まる事で接着できますので
それまでの間、他の接着剤などで保持しておく必要があります。
それ故、重い物では接合部に、引き離す大きな力が働く場合には、他の方法をとる必要が
あります。例えば楽焼用の低温の釉を使い、作品を寝かせ取っ手が真上になる様にするとか
の方法です。
・ 高温で確実に接着効果を発揮できる製品は、今の所見当たりません。以前にはその様に
宣伝していた製品も、問題点がある様です。
) 複数個に割れた場合。
板状の作品であれば、工夫すれば補修可能ですが、立体的な作品では上記と同じ様に
「ぶら下がり」状態の部品は、釉による接着できません。
一般には釉による補修は諦めた方が良い様です。
③ 金継による補修方法。
金継の方法は昔より存在していましたが、近年俄かに注目され出した補修方法です。
注目される様に成ったのは、素人でも割合容易に行われる事と、高価な本物の漆(うるし)や
金粉の替りに、新漆や真鍮(しんちゅう)粉、新漆専用の薄め液などが釣具屋で、安価で
容易に入手できる為です。釣具屋で市販されているのは、自分で釣竿に蒔絵を施す人の為の
道具として使われるからです。
) 準備する物は、エポキシパテ金属用(接着剤)、透明の新漆、真鍮粉、新漆用薄め液、筆
(細、極細等)、新漆と真鍮を混ぜる小型の容器(パレット)です。
いずれも数百円程度です。 パテはホームセンター等で購入できます。
) 作業方法は以下の通りです。
a) 棒状のパテを1cm程度切り取ります。パテは内側が灰色、外側が白色の二重構造に
成っています。
b) 指に水を付け、灰色と白色の部分を混ぜ合わせます。耳たぶ程度の硬さに成ればOKです
c) 破片の接着する面に上記パテを、親指などで擦り付けます。
破片を本体にしっかり嵌め込みます。破片と本体の表面が滑らかである事を確認します。
パテは直ぐに固まりますので、手早く行う事と、パテの量を多くし過ぎない事です。
d) 10分程度の乾燥で固まりますので、はみ出したパテはカッターナイフで削り取ります。
e) 耐水性のサンドペーパー(紙やすり)に水を付けて、出っ張った所を削り、更になだらかに
します。
f) 小型容器(パレット)に、真鍮粉(金粉の代用品)と新漆をほぼ等量絞り出します。
筆に薄め液を付け掻き混ぜます。薄め液は筆で塗った時筆跡が残らない程度が最適です。
g) 筆に上記混ぜ合わせた真鍮粉を採り、割れ目の筋の上に載せ、筆を軽き引きます。
内外両側を塗ります。なるべく筋からはみ出さない様にします。
h) 10分程度乾燥すると完成です。
これで、強度的にも問題なく、普通に使用する事が出来ます。
以上にて「焼き物は壊れ物」の話を終わります。
次回より、別のテーマでお話します。