ⅳ) 土の「ヘタリ」によるトラブル。
上の土の重量を持ちこたえる事ができず、形が崩れる事ことを「ヘタル」と言います。
又、「潰れる」と言う事もあります。
上の土の重量は、それを支える下の土の形状によって異なると共に、支える側の土の
肉厚や柔らかさ、支える角度にも関係します。「ヘタッタ」場合には、土を取り換え
最初からやり直す必要があります。勿論形を立て直す事も可能ですが、上手くいかない
事が多いです。最も代表的な現象は、皿(特に浅皿)が「オチョコ」状になる事です。
a) 皿類を作る際には、底(高台)の付け方によって「ヘタル」場合が多いです。
これは轆轤作業だけでなく、タタラ作り(板作り)でも同じです。底を付けた為に、
作品の縁が落ちたり、全体が変形する事も珍しくありません。
轆轤の場合は、円形の高台になりますが、皿の直径と、高台の大きさの割合が重要
に成ります。一般に外形の1/2~1/3と言われていますが、確実な数字ではあり
ません。高台の径が大き過ぎると、皿の中央が下に落ちます。尺皿と言われる30cm
以上の大皿の場合、高台を内外二重にする事が多いです。
b) 厄介なのは、素焼きまでは、何ら変形する事も無いのですが、本焼きした後に
現れる事です。これは高温で焼成すると、素地が柔らかくなる為です。
素地の種類によって耐火度に差があり、同じ形でも、素地の違いによって「ヘタリ」
具合も異なります。赤土など鉄分を多く含む土は、耐火度は落ちます。その為焼成
温度を下げる必要があります。
c) 最上部を真平にする事は出来ません。特に平の面積が広くなると、ほぼ不可能
で中央が下に落ちます。真平でなくても、傾斜が緩く重量のある物を上に載せると
中心付近や、上部に載せた部分の縁の部分が「輪っか状」に凹みます。
d) 下膨れの壺なども、「ヘタリ」易いです。
特に底の横を急激に外に出すと、その上の土を支えきれず、底の真横に落ち込みます
当然内側の底の形状も、高さが二段になります。即ち外側に折り込む事になります。
下膨れの形状にするには、ある程度底の面積を広く取り、大き過ぎる場合は乾燥後の
底削りで調整します。
e) 鶴首の様に急激に径を細くすると、下の土が支えきれず、「ヘタル」場合が多い
です。特に肩の部分は「なだらか」にする事で予防できます。
f) 前回述べた「撚れ」による「ヘタレ」も有ります。
撚れは肉厚に差がある時に起こり易いすので、薄過ぎる時は当然支える力は出ません
し、円周上で肉厚に差が出ると、支える力も一定せず、弱い所から形が崩れます。
g) 素地の水分が多い程、「ヘタリ」が早く起こります。
水分は、素地そのものに多く含まれている場合と、轆轤作業が長引く程土が水を
吸い込みますので、轆轤作業は出来るだけ短くする事も大切です。
h) 一度「ヘタリ」が発生すると、徐々に「ヘタリ」部分は成長します。
轆轤の回転を止めても、全体が完全に「ヘタル」場合もあります。
更に、立て直そうと土を触り続けると、一層「ヘタリ」ます。
i ) 皿の場合、どの程度まで平(浅く)に出来るのかの判断は、経験するしかあり
ません。何度も失敗する事で、限界を把握する事が出来ます。
以下次回に続きます。