② 兼田昌尚氏の陶芸
) 「刳貫(くりぬき)」技法とは。
a) 土について: 兼田氏が使う土は、大道土 3 :金峯土 1 の割合で混ぜ合わせ、更に1割
程度の見島土を配合しています。金峯土(みたけつち)は耐火度を、見島土は鉄分量を
調整します。
b) 作る作品は、鉢、茶碗、花器など多彩です。
作り方で大切な事は、土をいかに締めるかです。一塊の土から作り出しますので、
どうしても締めが弱く、「割れ」や「ひび」が出易いです。塊が大きければ大きい程、
しっかり締める必要があります。
イ) 茶碗など比較的小さな作品では、塊も小さいですが、花器などの場合にはそれなりの
方法が必要です。
ロ) 小さな塊の場合には、土を机に叩きつけたり、上から土を落として締めた後、更に掌や
角材を使って叩き締めます。締める際には、少しづつ全体の形を作って行きます。
(角材は、薪を削って自作した、長さ40cm程度で、断面は長方形に成っています。)
ハ) 大きな塊の場合には、大まかな形にした後、角材を使って全体を叩き締めます。
叩く場所も考慮する必要があります。即ち角のある作品ならば、角が出る様に叩く必要が
あります。又、兼田氏の作品には、叩いた痕を上手に生かしています。
逆に、意図的に段差が出来る様に叩いている様にも思われます。叩いていると自然に
正面が決る様に成るとの事です。
ニ) 中を刳り貫く。 一日置いて、乾燥させてから作業に取り掛かります。
使う道具は主に「掻きベラ」です。先端が丸や角のもので、作品に応じて使い
分けいます。塊の中央から彫り進み、先ず穴径を大きくしながら、深さも彫り込みます。
肉厚はある程度(2~3cm)厚くしておき、翌日の仕上げ削りで薄くします。
ホ) 口の小さな花器などは、底の方から彫り進み、最後に底になる板を貼り付けます。
底板は底に合わせて形作り、底の大きさよりやや大きくします。合わせ目に引っ掻き傷を
付けて、指で底板を本体にならしてから、角材でかるく叩き接着させます。
ヘ) 肉厚を整える。慣れないとこの作業は難しいようです。
特に段差のある作品では、同じ厚みにする事に苦労するそうです。
手による厚みの測定や、「掻きベラ」の手応え、それに添えている手の感覚、削る時の
音などを頼りに、厚みを判断するとの事です。
ト) 肉厚は作品に応じて変化させます。
どっしりした、鉢や花瓶などはやや厚めにし、茶碗などは、口縁をやや肉厚にしますが、
全体的には、やや薄めに削ります。又、無骨な茶碗にしたい場合には、やや厚めにします。
) 釉について。「ざっくり感」のある萩土には、白釉や藁灰釉を掛け、白やグレーに時には
ピンク色に発色させます。釉は流れて作品を叩いた時に出来る角や面に応じて濃淡が
つきます。これがまた見所の一つになります。
) 焼成は三室からなる、登り窯で行っています。
焼成された器肌は、灰被りをはじめ、白萩釉が繊細で複雑な表情を見せます。
) 兼田 昌尚氏の作品
・ 白萩刳貫茶碗 : 高 10、 口径 11.5 cm。 白萩窯変刳貫茶碗: 高 10.2 、口径 13 cm。
灰被刳貫茶碗 : 高 8.8、 口径 9.8 cm。
・ 灰被刳貫水指 : 高 20 、22 X 22 cm。
・ 灰被陶筥(とうばこ): 高 12.5、 22.5 X 14 cm。
・ 灰被刳貫花器 : 高 38.5、 43.5 X 23.7 cm。などの作品があります。
次回(瀧田項一氏)に続きます。