わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

釉の話 31 (アベンチュリン釉2)

2010-04-04 22:11:02 | 釉薬の調合と釉を掛ける
前回に引き続き、アベンチュリン釉(砂金石釉、金梨子地釉)について、述べます。

 ⑤ 釉の調合例

  ) 鉄アベンチュリン釉

    ゼーゲル式で表すと、以下の様に、成ります。(B2O3は、硼酸です。)

    (0.25K2O+0.25Na2O+0.50CaO)・ 0.75B2O3・ 2.25SiO2

    これは、硝酸カリ:14、炭酸カルシウム:13.8、珪砂:37.3、 硼砂:26.4、硼酸:8.5を

    フリットしたもので、これに酸化鉄を加えます。

   ・ フリットとは、水に溶ける材料(ナトリウム=ソーダ、カリ、硼酸など)を使う場合、生の状態では、

     使えません。それ故、これらを混合後、高温度で、熔融してガラス化しから、水に投入して、

     急冷しガラスの粉末に、した物です。

     有害な鉛等も、フリット化すれば、水に溶けず、安全に成ります。

  ) アベンチュリン釉の、フリットの他の調合例

    a) 硼砂:63、 石灰石:5、 鉛丹:10、 珪石:22

    b)  硼砂:14、 炭酸カルシュウム:4、 鉛丹:25、 珪砂:43、

       酸化金属類(鉄、クロム、マンガン):14

    c) 硼砂:33、 珪砂:44、 長石:13、 弁柄:15、 硝酸カリ:4、 炭酸バリウム:3

    d)  硼砂:28、 硼酸:9、 石灰石:14、 石英:39、 硝酸カリ:10

    上記フリットに、結晶させたい、酸化金属を、20~25%程度、添加します。

    尚、ベンナイトを1%程度加えると、使い易く成ります。

  ) 酸化金属の種類、量、焼成の仕方(酸化、還元)、熔融温度など、色々な条件によって、

    発色の仕方は、変化します。この釉を調合したい方は、それなりの準備が、必要です。

    尚、各種アベンチュリン釉は、市販されています。

  ) 銅や金でも、アベンチュリン釉はできますが、還元で焼成し、金属銅の状態に、する必要が

     有ります。

     酸化ウラン(ウラン酸ソーダ)を使う場合には、酸化錫を入れる、必要が有ります。
  
2) 結晶釉について

  結晶釉については、以前述べましたので、ここでは述べませんので、参考にして下さい。

 (2009年1月の記事です。) 新しい事項が発生した場合には、再度記述する予定です。

   釉の種類は多く、まだ説明していない、釉も有りますが、今回で、釉の話は、終わりに致します。

次回より別の事柄を、述べたいと思います。    
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釉の話 30 (アベンチュリン釉1)

2010-04-03 22:31:38 | 釉薬の調合と釉を掛ける
結晶釉は、釉の内部又は、表面に、大きな結晶があり、肉眼でも見える大きさです。

結晶釉の仲間に、アベンチュリン釉が有ります。

・ アベンチュリンとは、インド翡翠(ひすい)とも言われ、緑色をした有色水晶で、宝石にも成ります。

  水晶の中に、緑色の雲母が、含まれている為に、緑色の水晶となっていまが、緑色、赤色以外にも、

  オレンジや、青色などがあります。 ここでは、その名前を冠した、釉薬の話をします。

1) アベンチュリン釉
      
   砂金石釉や、金梨子地(きんなしじ)釉とも言われ、透明なガラスに、薄い板状の結晶や、

   金色の細かい結晶が、析出し、ピカピカと輝く、美しい釉です。

 ① 釉中に、酸化鉄、酸化銅、酸化クロム、酸化チタンなどの、金属酸化物を入れ、高温で

   飽和するまで、溶かし込み、冷却によって、細かい結晶を、析出させます。

 ② 釉の厚みは2mmを越えない時が、最も良いと言われています。

   酸化焔で、早く焼成し、自然冷却で、窯を冷やします。ゆっくり冷やすと、結晶が出過ぎて、

   釉の表面が、粗くなり、綺麗な色が出ません。

 ③ 基礎に成る釉は、鉛釉で、熔融温度によっては、酸化鉄が、6%以上溶け込みます。

   現在では、無鉛の釉も有ります。

   素地の種類は、鉄を含む物が、適しますが、含まなくても、なんら問題ありません。

 ④ アベンチュリン釉については、以下の事が、言えます。

  ) 塩基成分はソーダ(ナトリウム)が、一番有効です。その量が、結晶の成長や、大きさに、

     大きな影響を、与えます。カリは効果が少ないです。

  ) リチュウムは、微細な結晶を作るのに、向いているが、一般に、結晶の生成を、阻害します。

     粒子が微細過ぎる場合、結晶が見えず、単なる色釉と成ります。

  ) 酸化鉛は、釉に艶を与えますが、結晶が出ずらいです。

     石灰は、0.4モル程度、入れる事が可能です。(但し、熔融温度によって、変化します。)

  ) アルミナは、釉が流れるのを、防ぎますが、0.2モル程度添加可能です。

     酸化鉄は、0.2~0.85モルまで、入れる事が出来ます。

     鉄を、酸化クロムに、置き換える事も、出来ます。

  ) 珪酸は、希望の焼成温度に合わせて、量を調整します。

   ・ 珪石分よりも、アルミナ分を増した方が、結晶の出方は、安定します。

以下次回に続きます。

 アベンチュリン釉
   
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釉の話 29 (顔料2)

2010-04-02 21:35:29 | 釉薬の調合と釉を掛ける
顔料の話を続けます。

 ③ 黄色系顔料

   )黄色

     酸化ジルコニウム:87.0  酸化チタン:1.5、 水酸化バナジウム:11.5 (湿式、SK-8~9)

   )卵黄色

     鉛丹:66、 酸化アンチモン:27、 酸化錫:7、(湿式、1000℃)

 ④ 赤色、ピンク色系顔料

   ) 赤色

     a) 酸化錫:78、 石灰石:20、 重クロム酸カリ:1.9

     (酸化錫と石灰石を、乾式混合後、熱水に溶かした、カリ溶液を添加し混合後、1000℃で焼成し、

     焼成物は、黄色水が出なくなるまで、水洗い)

     b) 酸化錫:60、石灰石:40の白色顔料に、下記の)暗赤色顔料を、1:1の割合で

      湿式、1000℃で焼成

    ) 暗赤色 

      酸化錫:63.3、 石灰石:31.7、 重クロム酸カリ:5.0

      (混合方法は、上記と同じ)

    ) ピンク色

     a) 上記)-b)の白色顔料1に対して、上記)暗い赤色を8:2の割合で、湿式1000℃焼成

     b) アルミナピンク

        水酸化アルミニウム:48、 亜鉛華:46、 重クロム酸カリ:6

        (前者二種を乾式混合後、カリを熱水に熔かし、混合後1000℃で焼成)

 ⑤ 白色系顔料

    ) 酸化錫:40、 石英:40、 石灰石:20、(湿式、1000℃)

    ) 酸化ジルコニウム:60、  石灰石:40、 (乾式、1180℃)

 ⑥ 菫(すみれ)色系顔料

    ) 菫色

       酸化錫:89.9、 硼酸:8.9、 酸化コバルト:0.9、 クロム酸鉛、赤色:1.9

      (乾式、1150℃)

    ) 暗菫色

       酸化錫:44.3、 石灰石:27.7、 石英:19.9、 硼砂:4.4、 重くロム酸カリ:1.1、

       炭酸コバルト:2.6 (カリを除き、乾式混合、カリの熱水溶液を混合後、1200℃)

    ) 薄紫色

     a) 酸化錫:99.1、 硼酸:9.0、 クロム鉛黄色:0.9 (湿式、濡れた状態で、1000℃)

     b) 酸化錫:62.4、 石灰石:31.2、 硼酸:6.2、 クラム酸鉛赤色:0.15
       (処理は、上記と同じ)

     c) 酸化錫:88.9、 硼酸:8.9、 クロム酸鉛黄色:1.3、 酸化コバルト:0.9 

       (処理は、上記と同じ)

 ⑦ 緑系顔料

   )クロム緑: 酸化クロム:66.7、 カオリン:33.3 (乾式、1,200℃)

   )緑青: カオリン:66.7、 酸化コバルト:27.7、 酸化クロム:5.6(湿式、1050℃)

   )青緑: 酸化クロム:50.6、 炭酸コバルト:9.9、 亜鉛華:13.6、水酸化アルミニウム:25.9

     (湿式、1,200℃)
   
   ) 葉緑色: 酸化ジルコニウム:65.0、 石英:18.5、 水酸化バナジウム:15.0、 

      酸化チタン:8.3、(湿式、1,200℃)

 ⑧ 灰色系顔料

   ) 灰色: 酸化錫:95.9、 酸化アンチモン:4.1 (乾式、1250℃)

   ) 灰緑: 酸化錫:90.55、 酸化マンガン:4.32 、酸化鉄:3.23、 酸化銅:1.60、

      酸化コバルト:0.30 (乾式、1000℃)

尚、原材料が、手に入り難い物も、あるかも知れません。

細かい数字は、各自試験(テスト)を繰り返して、決めて下さい。  

以上で顔料の調合例を、終わります。

以下次回に続きます。
   
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釉の話 28 (顔料1)

2010-04-01 21:51:52 | 釉薬の調合と釉を掛ける
色釉を作るには、基礎釉に、顔料を添加して、色を出す方法が有ります。

自分で調合したり、市販されている顔料を、使ったりします。

(勿論、最初から、全て調合されている、色釉も市販されています。面倒な方は、最初からこの釉を

 使う方が、早いです。)

1) 市販の顔料 

  顔料の種類は、割合豊富で、基礎釉1ℓに、顔料を5~10g加え、良く撹拌して使用します。

  更に、他の酸化金属粉を、1~2%添加すると、色が変化し、還元焼成をすると、雰囲気の違った、

  色が出たりします。

   注意: 顔料には、素地に入れる、練り込み用と、上絵用、下絵用の物、釉薬用の物が有ります。

    下絵用は、釉薬に使える場合が、多いですが、必ず確認して下さい。

 ・ 色の種類は、トルコ青、カイヘキ(濃青)、カナリヤ黄色(明黄)、バナナ黄色(茶黄)、グリーン(緑)、

  ヒワ(淡黄緑)、ピーコック(青緑)、エンジ赤(小豆色)、ピンク(桃)、ライラック(淡紫)、

  ブラウン(赤茶)、グレー(灰色)、呉須(紺)、ローズ(ばら)、赤などです。

2) 自分で顔料を調合する

  顔料を作るには、乾式混合と、湿式混合の方法が有ります。

  乾式:定量の目方を、水を使わずに、乳鉢などで、混合し「サヤ鉢」などで、所定の温度で、

     焼成します。

  湿式:水を用いて、乳鉢やボールミルで、粉砕混合し、脱水後、「サヤ鉢」に入れ、焼成します。

  この顔料を、基礎釉に適量(1~10%)添加して、使います。

 ① 褐色系顔料

   ) 赤褐色顔料

     a) 亜鉛華:51、 酸化鉄:17、 酸化クロム:16、水酸化アルミナ:16 (乾式、1000℃)

     b) 亜鉛華:48.8、 酸化クロム:24.4、 酸化鉄:24.4、 炭酸ナトリウム:2.4 

      (乾式、1000℃)

   ) ココア色

      酸化ジルコニウム:24.8、 亜鉛華:42.5、 水酸化アルミにウム:21.3、酸化鉄:5.7、

      酸化クロム:5.0、 酸化アンチモン:0.7 (乾式、1000℃)

   ) 緑褐色

      a) 亜鉛華:66.7 酸化クロム:33.3 (湿式、1000℃)

      b)  カオリン:33.4、 酸化クロム:33.3 亜鉛華:33.3 (湿式、1000℃)

   ) 暗灰褐色

      亜鉛華:51.7、 酸化クロム:48.3 (湿式、1000℃)

  ② 青色系顔料

   ) 明青色

    a) 水酸化アルミニウム:53.4、酸化錫:33.3、亜鉛華:8.0、炭酸コバルト:5.3 

      (湿式、1000℃)

    b) 水酸化アルミニウム:76、 亜鉛華:12、 酸化コバルト:12、 (乾式、1000℃)

    c) 酸化錫:42、 酸化コバルト:18、 石英:40、 (乾式、1000℃)

   ) 暗青色

    a) カオリン:40、 酸化コバルト:20、 亜鉛華:20、 酸化錫:20、(乾式、1000℃)

    b) 水酸化アルミニウム:85、 炭酸コバルト:15、(乾式、SK-7~8で焼成)

 ③ 黄色系 

以下次回に続きます。 顔料

参考資料:「図解 工芸用陶磁器」 素木洋一著、技報堂出版(株)


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釉の話 27 (銅釉4その他の銅釉)

2010-03-31 21:31:38 | 釉薬の調合と釉を掛ける
4) 均窯手釉(きんは、釣に似た字で表す事も、あります。)

  中国の宋の時代に、出現した釉で、紅色の乳濁釉に、紫色の斑文が、混じった美しい釉です。

  この色は、銅による発色で、藁灰を用いた、珪酸分の多い、乳濁釉です。還元で焼成します。

  調合例

   長石:50~60、 土灰:25~30、 藁灰:15~20、 炭酸銅:1~1.5、 酸化コバルト:0.2~0.4

 ① 均窯手には、釉を二重掛けすると良い、と言われています。

   ) 下掛け釉の調合、上釉の調合例

    ・ 下釉 長石:30.3、 珪石:23.6、 カオリン:5.7、 炭酸カルシウム:12.3、 藁灰:19.7

       骨灰:1.9、 亜鉛華:3.4、 酸化錫:1.5、 弁柄:0.8、

    ・ 上釉 上記釉に、酸化銅:0.8 を加えた物。      

   ) 下掛け釉の調合例

     長石:20.4、 珪石:24.2、 カオリン:8.3、 焼タルック:2.8、 石灰石:14.3、 藁灰:18.9

     炭酸バリウム:4.5、 酸化チタン:2.8、 酸化錫:1.9、 酸化銅:0.9

      上掛け釉の調合例

     長石:26.6、 珪石:32.1、 カオリン:3.2、 焼タルク:3.6、 石灰石:16.3、 骨灰:1.9、

     炭酸バリウム:11.4、 酸化錫:2.8、 顔料:1.9

      上記顔料は、以下の様に、調合します。

      酸化銅:50、酸化錫:30、弗化バリウム(BaF2):20、の混合物を、1200℃で、焼きます。

  ② 藁白釉を掛けた上に、塩化銅で、模様を描くと、模様が赤紫色になり、釉も銅が転化して、

    月白釉状に、青白く成ります。

    弱還元を掛けると、青紫~赤紫に変化します。

 5)  トルコ青釉

  この釉は、鮮明な青色釉で、アルカリ分の、多い釉で、発色します。

  調合例

   長石:53.1、 珪石:25.8、 石灰石:7.1、 亜鉛華:8.1、 炭酸マグネシウム:6.0

   これに、酸化クロム:1%、 酸化コバルト:0.3~0.5、 炭酸銅:5%を添加する。

   緑調のトルコ青に成ります。

  トルコ青顔料の調合

   酸化ジルコニウム:48、 石英:31、 炭酸バリウム:8.5、 水酸化バナジウム:12.5

   湿式混合で、1000℃程度で、焼成します。この顔料を1~6%、基礎釉に添加します。

   湿式混合焼成で、作成した物は、硬く成りますので、微粉砕して使います。

   粉砕の度合いによっても、色調に変化が出ます。

  ・ アルカリに、カリ(カリウム)が多いと、トルコ青に成り、ソーダ(ナトリウム)が多いと、

    空青に成ります。

  ・ 焼成は、酸化焼成が良く、還元ですと、赤紫や紫褐色に成ります。

 6) その他の銅釉として、青銅マット釉、銅緑釉、松緑色釉などが、有ります。

    その詳細は、省きます。

以上にて、銅釉の話を終わります。

均窯手釉 トルコ青釉  
      
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釉の話 26 (銅釉3青織部)

2010-03-30 22:21:11 | 釉薬の調合と釉を掛ける
銅釉の代表的な、青織部について、お話します。

3) 青織部釉

   青緑~深緑の釉で、酸化銅を配合した釉を、酸化焼成して、発色させます。

    (還元が掛かると、緑にならず、ピンクや、赤紫色に発色します。)

   織部焼きには、織部と名の付いた、何種類かの、織部焼きが有ります。

   ) 青織部: 青緑色の釉が、掛けられていて、素地の部分に、鉄絵が描かれています。

      総織部: 全体に、青織部が掛かった物で、櫛目、線刻、印花、貼り付け文などが、

      施されています。

   ) 黒織部: 織部と名が付いていますが、黒釉を使います。黒釉の上に、白い釉を一部重ねたり、

      素地の一部に、黒釉を掛け残し、その部分に、鉄で文様を付けたりします。

   ) 鳴海織部: 素地に、白土と赤土を使い、巧みに継ぎ合わせ、白土の上に、青織部釉を掛け、

      赤土の上には、白土で文様を描き、更にその上に、鉄絵を付けます。主に、板造りとなります。

   ) 赤織部: 素地に赤土を使い、一部に白化粧を施し、鉄絵を付けます。

      向付、皿、鉢、香合、茶碗などが有ります。

   ) 志野織部: 志野焼きと、ほとんど、区別できません。その他、伊賀織部、織部唐津などの

      織部が有りますが、絵唐津焼きと、伊賀焼きとの区別が、はっきりしません。
  
   青織部釉には、透明性の釉と、不透明性の釉が有ります。

   後者は、乳白釉(藁白釉、卯の斑釉、籾殻釉、糠白釉など)に、銅を添加したものです。

  調合例  ① 長石:70、 土灰:20、 石灰石:10、 酸化銅:10

        ② 長石:20、 土灰:15、 籾殻灰:5、  酸化銅:5

        ③ 長石:50、 木灰:50. 酸化銅:5( 外割り)

        ④ 長石:50、 木灰:30、  藁灰:20、 酸化銅:8 (外割り)

        ⑤ 長石:10、 石灰石:11、 珪石:10、 酸化銅:4 赤土:4

  乳濁させた、青織部釉の調合例

        ⑥ 長石:26.5、 珪石:32.6、 カオリン:3.1、 焼滑石:3.7、 石灰石:16.6、

          炭酸バリウム:11.6、 骨灰:1.8、 酸化銅:4.2 

  ・ 淡い緑色を、出したい時には、織部釉を掛けた上に、透明釉を、二重掛けすると良いです。

  ・ 織部の緑色を出すには、完全な酸化焼成が、必要です。電気窯の場合には、確実に酸化に

    出来ますが、燃料を使う窯では、窯全体を酸化焼成する事は、中々難しい場合が多いです。

  ・ 焼成時、銅釉で注意する事は、銅が高温で揮発し、揮発した銅が、隣の作品に、転化して、

    作品を汚してしまう事です。(この現象を「ウツル」と、言います。)

    それ故、銅釉を掛けた作品は、他の作品と、ある程度距離を、多目に取る、必要が有ります。

4) その他の銅釉

以下次回に続きます。

 青織部釉
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釉の話 25 (銅釉2辰砂釉2、海鼠釉)

2010-03-29 22:09:25 | 釉薬の調合と釉を掛ける
辰砂釉の話を続けます。

辰砂釉の調合例

  ) 長石:73、  珪石:8、 石灰石:12、 亜鉛華:4、  酸化銅:2~3

  ) 基礎釉:84、 珪石:2、 酸化錫:2、  亜鉛華:10、 酸化銅:2

  ) 長石:47、  珪石:7、 石灰石:16、  硼砂:21、  酸化銅:9

     )に、基礎釉を、20~30%加えます。

灰を用いた調合例

  ) 長石:80、 いす灰:20、 酸化錫:2、 酸化銅:3
  
  ) 長石:70、  藁灰:30、 酸化錫:2、 酸化銅:3

  ) 長石:60、 いす灰:10、 藁灰:30、 酸化錫:2、酸化銅:3

宇野仁松(1864~1937)の牛血紅釉の調合

  ) 天草石:13.0、珪石:11.0、 福島長石:58.5、 石灰石:14.5、窓ガラス:16.0

     滑石:2.0、炭酸バリウム:1.0、酸化錫:4.0、酸化銅:0.8

着色剤を作る

   酸化銅;50%、 酸化錫:30%、弗化バリウム:20の混合物を、1200℃~1300℃で

   焼成後、微粉砕する。この着色剤を、基礎釉に、1~3%程度添加する。

2) 海鼠(なまこ)釉

   流動性のある釉で、以前に信楽焼きの、火鉢に多く使われていた、釉です。

   灰釉に少量の銅、コバルト、マンガン、酸化鉄を添加した物で、青、黒青、乳白などが、表れます。

   調合例
     
    ① 長石:55、 土灰:35、 藁灰:10、 炭酸銅:1.5、 酸化銅:0.2

    ② 長石:55、 土灰:34、 藁灰:10、 炭酸銅:1.0、 酸化銅:0.1

    ③ 長石:65、 土灰:30、 藁灰:5、 炭酸銅:1.2、 酸化銅:0.2、 弁柄:1.5、

      酸化マンガン:2.0

  着色剤を添加する方法

      弁柄:40、 二酸化マンガン:40、 酸化銅:16、 酸化コバルト:4

    以上を調合し、基礎釉に5%程度、添加します。

  ・ 昔の海鼠釉は、卯の斑釉に、少量の弁柄や、黄土の様な、酸化鉄を含む、粘土を加え、還元で

    焼成した様です。

  ・ 二度掛けの方法も有ります。下釉に土灰、藁灰、石粉に、少量の酸化銅、酸化コバルト、

    酸化マンガンを加え、上釉に土灰、石粉、酸化銅、酸化コバルトを、加えた釉を掛けました。

  ・ 現在の陶芸作家の釉に、透明灰釉に、3%程度の弁柄や、酸化銅を加えた、下釉と、

    土灰、石粉、藁灰の乳濁釉を、上釉に掛ける方法を、取る方もいます。

  ・ 土灰は、化学成分が一定しませんので、釉も一定しません。それを嫌う方は、合成土灰を、

    使う事に成ります。

3) 青織部

  次回に続きます。

  海鼠釉

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釉の話 24 (銅釉1辰砂釉1)

2010-03-28 22:06:37 | 釉薬の調合と釉を掛ける
銅を使った釉について、お話します。

銅釉は、緑色(酸化焼成)又は、赤い色、ピンクや紫色(還元焼成)を出すのに、使いますが、

炎の状態によって、窯変が起こり易く、変化に富む釉と言えます。

銅は一般に、酸化銅や、炭酸銅を使用します。

1) 辰砂(しんしゃ)釉

   陶芸で辰砂と言うのは、基礎釉に銅を添加し、還元焼成で、朱紅色に発色する事を、言います。

   (本来の辰砂は、天然に産する、硫化水銀「HgS」の事です。)

   辰砂釉には、その色の違いによって、名前が付けられ、牛血紅(ぎゅうけつこう)、

   火焔紅(かえんこう)、桃花紅(とうかこう)が、有名です。

 牛血紅: 辰砂の代表的な、派手な色で、人造ルビーや、生血の色をしています。

     (鶏血紅とも言われます)

 火焔紅: 藍紫色が、煙の様に、真赤な釉の上に掛かり、まるで燃え盛る炎の様に、発色します。

      この煙の掛かった所は、白紫や、青味を帯びたりしています。

 桃花紅: 酸化第一銅の、赤を保ち、穏やかな、紅色をした色で、海棠紅(かいどうこう)とも

      言われます。還元焼成後、僅かに、酸化焼成し、発色させます。


 ① 青緑色の酸化第二銅(CuO)が還元により、酸化第一銅(Cu2O)となり、美しい赤に変化します。

   更に、還元が強くなると、金属銅(Cu)に成り、黄色味を帯びてきます。

 ② 紅色を出す為の、銅の量は、釉の0.3~0.5%程度と、少量で済みます。

   量が多くなると、色が濁ってきます。但し、銅は高温に成ると、どんどん揮発しますので、
 
   その分、多く入れる事に成ります。10%程度に成ると、黒色に成ってきます。

 ③ 銅及びその酸化物は、高温で容易に、揮発して消滅してしまいます。揮発を抑える為、

   釉を二重掛けする方法が、取られます。

   即ち、下層には、酸化銅と酸化錫を、添加した釉を使い、上層に、酸化銅を含まない釉をかけます。

   (尚、酸化錫は、高温で還元作用を、助けます。)

   ・ 銅の揮発を、抑える方法として、「さや鉢」に入れて、焼く方法が有ります。

     その際、「サヤ鉢」内に、1~2%の銅を含む釉を、塗ると良いと、言われています。

   ・ 釉中の酸化鉄は、辰砂釉を、紫色に発色させます。灰釉の場合には、灰の中に、鉄分があると、

     紫色に成りますから、注意します。又、灰の中の、他の成分も、釉の色に、変化を与えます。

     バリウムを添加すると、紫色が、より強く出ます。

 ④ 辰砂の赤い色を出すには、素地が白い物が、綺麗に発色します。

   出来るだけ、白い土を、使います。

 ⑤ 辰砂釉は、基本は還元で焼成しますが、強い還元炎ではなく、中性炎に近い、還元炎が良いと、

   言う研究も有ります。

 ⑥ 一般に、釉は良く熔かします。熔け過ぎると、釉が流れ、ムラに成りますが、やや熔け過ぎの状態

   に成ると、釉の粘性を弱くし、発色が良くなると、言われています。

 ⑦ 焼成後の、窯の冷やし方も、影響します。微結晶が生成する温度(700℃)で、

   一定時間、保持させます。

次回は、辰砂釉の調合例について、述べます。

 辰砂釉

 
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釉の話 23 (鉄釉5 その他)

2010-03-27 21:45:35 | 釉薬の調合と釉を掛ける
酸化鉄を利用した釉には、前回までに、お話した、天目釉、黄瀬戸釉、青磁釉の他に柿釉、飴釉、

蕎麦(そば)釉、鉄砂釉等が有ります。

1) 柿釉

   釉薬は、益子焼の代表的な釉で、民芸等で、一般に使用されています。

   又、昔は良く使われていた、甕(かめ)に掛けられている、明るい茶色の釉です。

  調合例 

   ① 長石:33、 木灰:33、 藁灰:29、 弁柄:5 (酸化:不透明なさび色、還元:褐色~黒)

   ② 長石:43、 木灰:30、 石英:10、 弁柄:17

   ③ 長石:30、 木灰:20、 藁灰:25、 黄土:25

   ④ 基礎釉:75、 木灰:14、 弁柄:11

  益子焼きでは、付近から出る、土を使い柿釉を、作っています。

   ⑤ 大谷津砂:10、 寺山土:5、 至勢堂土:5、 芦沼赤粉:5 (容積比)に

     二酸化マンガン:4.5%を、外割りで、添加します。

2) 蕎麦(そば)釉、飴釉、黒釉

   ① 蕎麦釉: 飴釉に、黄緑色の結晶が、斑点状に出る、釉です。

     やや厚く掛けた方が、斑点が出易いです。

    調合例 

    ) 長石:180(64.2%)、 石灰石:55(19.7%)、 焼滑石:20(7.2%)、 カオリン:25(8.9%)

      蕎麦釉に、骨灰:2~4%、 酸化チタン:3~6%程度添加すると、黄茶、薄緑、薄青の、

      斑点が出ます。更に、珪石が多くなると、釉は乳濁し、なまこ釉の様になります。
 
    ) 木灰と黄土でも、蕎麦釉を作る事が出来ます。

       土灰:50、 黄土:50 還元焼成で、濃い緑の斑点が出ます。

   ② 飴釉

     上記、蕎麦釉から、黄緑色の結晶が、出ない様にした釉です。

     結晶を出さない為に、珪石を加えます。酸化還元の影響は、あまり受けません。

    調合例 ) 上記蕎麦釉に、珪石を、20入れると、飴釉に成ります。

          ) 土灰と赤粉でも、黄飴釉を作る事が出来ます。

            土灰:2~8、 赤粉:8~2 の調合に成ります。
   
            (土灰が、多いほど、黄色が濃く成ります。)

   ③ 黒釉: 上記、蕎麦釉に、珪石の量を、増やすと、黒さが増します。

          珪石を、80程度加えると、黒天目に成ります。

     尚、釉を黒くする、金属類には、酸化鉄以外に、酸化クロム、酸化コバルト(呉須)、

       酸化マンガンなどが、有ります。適宜添加して、希望の黒さを、出します。

3) 鉄砂釉: 変化に富んだ、艶のある、鉄褐色の釉です。酸化焼成が基本です。

    調合例  長石:21、 石灰石:16、 石英:26、 白粘土:26、 弁柄:12


以上の様に、鉄釉は、少しの配合の差で、色々と変化し、その変化も大きいです。

それ故、面白味がある釉、とも言えます。

以上にて、鉄釉の話を終わり、次回から、銅釉について述べます。
  
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釉の話 22 (鉄釉5 青磁2)

2010-03-26 21:45:18 | 釉薬の調合と釉を掛ける
前回に続き、青磁釉について述べます。

 紫口鉄足(青磁の上物は、こう呼ばれ、珍重されています。)

 青磁釉の魅力は、釉が厚く掛かる為に、深みのある色が出る事と、厚く掛ける事により、上部の縁の

 部分が、熔け流れ落ち、釉が薄くなり、場合に拠っては、素地が透けて見えるます。

 又、高台部分は、釉が掛からず、褐色の状態です。これを、紫口鉄足と呼んでいます。

 青磁釉は、本焼き終了後、空気によって、釉表面がわずかに酸化され、より深みが増すとも

 言われています。

 更に土物(陶器)に、青磁釉を掛けると、貫入(ひび)が入り易いです。

 ・ 灰立ての調合(灰釉の青磁について)

  調合例

   ① 長石:60、 いす灰:20、 土灰:10、 籾殻灰:10、 弁柄:2

   ② 長石:40、 いす灰:30、 籾殻灰:15、 石灰石:5  カオリン:10 弁柄:2

   ③ 長石:60、 いす灰:20、 土灰10、  籾殻灰:10、 炭酸バリウム:2  弁柄:2

   ④ 長石:40、 いす灰:30、 籾殻灰: 15、 石灰石:5、 カオリン:10、炭酸バリウム:2、弁柄:2

 ・ 青磁顔料について

   顔料を作り、基礎釉に添加して、青磁釉を作る方法です。

  ) 顔料の調合例

    酸化クロム:21、 酸化コバルト:10、 亜鉛華:27、 珪石:42

    これを湿式で、混合粉砕し、乾燥後、3~3.5%程度、基礎釉に添加します。

  ) 青磁用基礎釉の調合例

   砧青磁の場合

    ① 長石:64.5、 珪石:27.7、 石灰石:7.8

    ② 長石:48.2、 珪石:22.9、 珪酸バリウム:28.9

   天竜寺青磁の場合

    ③ 長石:15.6、 石灰石:22.4、 天草石:62.4

    ④ 長石:14.6、 珪石:6.4、 石灰石:21.0、 天草石:58.0

  ) 氷裂文(ひょうれつもん)の青磁について

    氷の表面の、割れ目のような、大きな貫入(ひび)の入った状態の物です。

   ・ 貫入は、素地と釉との収縮率の差によって、発生します。即ち釉の方が、大きく縮む程、貫入は

     大きく成ります。一般には、貫入は、出さない様にしますが、氷裂文は、わざと貫入を大きく

     して、その割れ目に、墨、弁柄等を刷り込み、模様とした物です。

   ・ 素地を調整する方法と、釉を調整する方法が、有りますが、ここでは、後者の場合を、

     考えます。

   ① 釉の中の、珪砂又は、カオリンを少なくする。(片方又は、両方)

   ② ソーダ(NaO)の量を増やす、又はカリ(K2O)を、ソーダで置き換える。

   ③ 硼酸の替りに、珪酸を用いる。
 
  その他、釉の原料を、より細かく粉砕する。釉を厚く掛ける。冷却速度を、速めるなどの

  方法があります。

 ・ 釉の組成と、色との関係

   アルカリ成分(Na2O、K2Oなど)が多く、石灰成分(CaO)が少ないと、青味を帯びた緑色に成ります。

   石灰成分が多く、アルカリ成分が少ないと、深みのある緑色に成ります。

7) 青白釉(薄青磁釉)

   青磁より薄い青(緑)を発色する釉に、青白釉が有ります。

    調合例 ① 基礎釉:100、 珪酸鉄:3、 バリウム:7 (外割り)

         ② 基礎釉:100、 珪酸鉄:3

    青磁釉の様に、厚くは塗りません。

尚、青磁釉は、鉄で色を出すのが、基本ですが、酸化銅を添加した、銅青磁も有ります。

銅を使った銅釉については、後日説明いたします。

次回は、他の鉄釉について述べます。
    
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