手捻り陶芸の中に、細工物と呼ばれる分野があります。
主に人形や動物等の造形物が多いのですが、銅像などを造る際に粘土で原型を作る彫塑
(ちょうそ)もあります。
前回の続きです。
6)細工物として著名な作品として、江戸時代の野々村仁清の国宝「色絵雉香炉」」(雄)と
重要文化財の「色絵雉香炉」(雌)一対の香炉があります。その他「色絵宝船置物」や兎
鴨、糸巻、小槌、琴型等の香合、人形型の水滴などがあります。
更に明治から昭和にかけて活躍した、備前焼の人間国宝の金重陶陽の獅子や鶏、みみずく
牛、寅などの動物の香炉などがあります。又、信楽焼きの型を使った狸の置物も有名です
7) 作りたい物によって作り方も変わります。又作る数も問題になってきます。
即ち、一個作りか型を使って複数個作るかです。いずれにしても、最初の一個は手作りに
なります。
掌に載る程度の小物であれば、一握りの粘土で事足ります。十分柔らかい粘土であれば
手指を使い捻り出して形造る事も容易です。
① 香合の歴史
小さな作品で代表的な作品に香合があります。香合を「こう合わせ」と呼べばお香の優劣
を競う遊びですが、ここではお香を入れる蓋つきの器、即ち合子(ごうす)を指します
合子は中国の戦国時代の遺跡からも銀製の物が発掘されており、化粧道具である白粉や紅
油等が入れられていました。古い時代から漆を塗った木製も発見されていますが、焼き物
として登場するのは、中国の唐の頃からと言われています。この頃では薬(仙薬)が収め
られている物が多く、蓋の裏側には薬名や量などが墨書されていた様です。唐の時代の
合子は我が国でも出土しています。
京都の仁和寺は、904年宇多天皇が建立されました。寺内の円堂の跡地から純金、銀
白磁、青磁製の小さな合子が出土しました。これは地鎮具地鎮として基壇の地下に埋納さ
れた物と思われ、中国から輸入されています。
我が国でも平安、鎌倉時代になると経塚から数多くの国産の合子が見つかります。
上面に草花や鳥、七宝文、小花文などが施されています。
室町時代になると、座敷飾りとして香炉や香合、花瓶が用いられる様になります。
この頃の香合は薬器として用いられていた様で、ほとんどが漆ぬりでした。
更に、侘茶(わびちゃ)が隆盛を極めると、香を入れる為の陶磁器製の香合が作られる様
になります。安土桃山時代以降、東南アジア産の小さな蓋つきの器も香合として使われる
様になります。江戸時代になると数多くの香合が作られ、手の中に納まる世界の中に自由
と創意を活かした作品が、各地の窯元でおびただしい程の数が作られます。
② 香合を造る。
ⅰ) 中に入れる香料は貴重な物ですので、蓋がピッタリ納まる様に、丁寧に作ら無けれ
ばなりません。勿論、轆轤で器と蓋を別々に作り合わせる方法もありますが、多くの場
合、一体物として作り上下に二分し、内側をくり抜く方法をとる事が多いです。
轆轤作りよりも手捻りの作品の方が、温もりと変化があり、香合として暖かみもで易
いです。
ⅱ) 全体の形を造る。
香合の形に決まりはありませんが、予め作りたい形を決めて置く必要があります。
更に平面上に安定して置きますので、底面は平である必要があります。
縦、横高さとも8cm下が多い様です。一般的には4~5cm程度が多いです。
作品によっては蓋を取り除く為の摘み部を設ける場合もあり、摘みの無い蓋は蓋の側面
を持って開閉します。
ⅲ) 土の塊から一部を捻り出し、好みの形にします。多くの場合土を足すよりも、不必
要部分を削り取る事が多いです。動物を模しの香合では、それらしく見える様に作り
ます。細かい作業が必要な時には、竹ひごや独自の工具を用意する場合もあります。
表面を綺麗に仕上げます。
ⅳ) 上下に二分します。
切り糸で切断します。蓋受けは内部をくり抜いてから設ける方法と、蓋受けを先に
作ってから作る方法があります。但し実際の高さは、蓋受けを設ける事で若干低くなり
ます。不定形の作品では内部をくり抜くのに苦労するかもしれません。
ⅴ) 型に取る場合は、石膏を使う事が多いです。
上下割の簡単な型から、数個に分ける割型の場合もあります。割型の場合どの様に分け
るかも考える必要があります。取り扱いが簡単な事が大切です。
以下次回続きます。
主に人形や動物等の造形物が多いのですが、銅像などを造る際に粘土で原型を作る彫塑
(ちょうそ)もあります。
前回の続きです。
6)細工物として著名な作品として、江戸時代の野々村仁清の国宝「色絵雉香炉」」(雄)と
重要文化財の「色絵雉香炉」(雌)一対の香炉があります。その他「色絵宝船置物」や兎
鴨、糸巻、小槌、琴型等の香合、人形型の水滴などがあります。
更に明治から昭和にかけて活躍した、備前焼の人間国宝の金重陶陽の獅子や鶏、みみずく
牛、寅などの動物の香炉などがあります。又、信楽焼きの型を使った狸の置物も有名です
7) 作りたい物によって作り方も変わります。又作る数も問題になってきます。
即ち、一個作りか型を使って複数個作るかです。いずれにしても、最初の一個は手作りに
なります。
掌に載る程度の小物であれば、一握りの粘土で事足ります。十分柔らかい粘土であれば
手指を使い捻り出して形造る事も容易です。
① 香合の歴史
小さな作品で代表的な作品に香合があります。香合を「こう合わせ」と呼べばお香の優劣
を競う遊びですが、ここではお香を入れる蓋つきの器、即ち合子(ごうす)を指します
合子は中国の戦国時代の遺跡からも銀製の物が発掘されており、化粧道具である白粉や紅
油等が入れられていました。古い時代から漆を塗った木製も発見されていますが、焼き物
として登場するのは、中国の唐の頃からと言われています。この頃では薬(仙薬)が収め
られている物が多く、蓋の裏側には薬名や量などが墨書されていた様です。唐の時代の
合子は我が国でも出土しています。
京都の仁和寺は、904年宇多天皇が建立されました。寺内の円堂の跡地から純金、銀
白磁、青磁製の小さな合子が出土しました。これは地鎮具地鎮として基壇の地下に埋納さ
れた物と思われ、中国から輸入されています。
我が国でも平安、鎌倉時代になると経塚から数多くの国産の合子が見つかります。
上面に草花や鳥、七宝文、小花文などが施されています。
室町時代になると、座敷飾りとして香炉や香合、花瓶が用いられる様になります。
この頃の香合は薬器として用いられていた様で、ほとんどが漆ぬりでした。
更に、侘茶(わびちゃ)が隆盛を極めると、香を入れる為の陶磁器製の香合が作られる様
になります。安土桃山時代以降、東南アジア産の小さな蓋つきの器も香合として使われる
様になります。江戸時代になると数多くの香合が作られ、手の中に納まる世界の中に自由
と創意を活かした作品が、各地の窯元でおびただしい程の数が作られます。
② 香合を造る。
ⅰ) 中に入れる香料は貴重な物ですので、蓋がピッタリ納まる様に、丁寧に作ら無けれ
ばなりません。勿論、轆轤で器と蓋を別々に作り合わせる方法もありますが、多くの場
合、一体物として作り上下に二分し、内側をくり抜く方法をとる事が多いです。
轆轤作りよりも手捻りの作品の方が、温もりと変化があり、香合として暖かみもで易
いです。
ⅱ) 全体の形を造る。
香合の形に決まりはありませんが、予め作りたい形を決めて置く必要があります。
更に平面上に安定して置きますので、底面は平である必要があります。
縦、横高さとも8cm下が多い様です。一般的には4~5cm程度が多いです。
作品によっては蓋を取り除く為の摘み部を設ける場合もあり、摘みの無い蓋は蓋の側面
を持って開閉します。
ⅲ) 土の塊から一部を捻り出し、好みの形にします。多くの場合土を足すよりも、不必
要部分を削り取る事が多いです。動物を模しの香合では、それらしく見える様に作り
ます。細かい作業が必要な時には、竹ひごや独自の工具を用意する場合もあります。
表面を綺麗に仕上げます。
ⅳ) 上下に二分します。
切り糸で切断します。蓋受けは内部をくり抜いてから設ける方法と、蓋受けを先に
作ってから作る方法があります。但し実際の高さは、蓋受けを設ける事で若干低くなり
ます。不定形の作品では内部をくり抜くのに苦労するかもしれません。
ⅴ) 型に取る場合は、石膏を使う事が多いです。
上下割の簡単な型から、数個に分ける割型の場合もあります。割型の場合どの様に分け
るかも考える必要があります。取り扱いが簡単な事が大切です。
以下次回続きます。