わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸4(三代清風与平)

2011-12-31 17:06:38 | 現代陶芸と工芸家達
三代清風与平は、明治を代表する陶芸家でした。陶芸家として最初の帝室技芸員に選ばれ、最初の

緑綬褒章を授与されています。彼は、明治中頃から衰退していく京焼きに、新風をもたらし、京焼きの

芸術性を高める働きを示します。又、京都市陶磁器試験場の開設にも尽力しています。

1) 三代清風与平(せいふうよへい): 1851~1914年

 ① 播磨国印南郡に生まれた与平は、京都五条坂の名門の陶芸家の、青風家の養子に成ります。

  1878年(明治十一年)に義兄の二代目清風が没し、三代目与平を襲名します。

 ② 京焼きは桃山時代から、長い歴史のある、色絵を中心とした焼き物 です。

   しかしながら、明治維新後の急速な社会情勢の変化で、これまでの国内向けの伝統技法や生産

   方式では、対応し難く、西洋文化の影響を受け変化せざるを得なくなります。

   この間、各地の近代陶磁器製造も試行錯誤を余儀なくされます。

   明治の中頃までは、窯や窯焚き技法、新たな釉の研究が行われ、技術的にも、格段の進歩を

   遂げます。

 ③ 造形や意匠(図案)などでは、従来の精緻な技巧的な方法が取られ、金銀赤絵などが、豊富に

   使われ、装飾第一の風潮が蔓延し、これらの作品が高級陶磁器と思われていました。

   明治の初め頃までは、欧米の諸外国の人々には、好奇心を満足し貿易も伸長して行きます。

   しかし、明治の中、後期に成ると貿易も不振に成ってきます。原因は、粗製乱造と、表面技法が

   形骸化し、模倣が多く成った為と気が付きます。

   この事の反省から、新しい陶芸技法や意匠に対する関心が起こります。

 ④ 与平の陶芸

  ) 初期の与平は、当時の京の陶芸がそうであった様に、中国の宋や明の古陶磁器の写しを造って

    います。例えば、青磁や青華(染付)は「唐物」として高価に販売されていたからです。

  ) 写し物(模倣)からの脱却

    生来の画才を発揮し、日本的な意匠に基ずく独自の作風を築き上げていきます。

    京都の郊外の山林を歩き回り、草花をスケッチしたり、原料である土や石を探索し、素地土と

    したり、釉の原料としても利用します。

  ) 与平の創案した新技術も多数あります。

   a) 与平の代表的な陶芸技法は、カン白磁と天目釉瀧条斑(ろうじょうはん)と言われています。

    ・ カン(喚の偏が王)白磁とは、純白の白磁に柞(いす)灰釉を僅かに掛け、酸化焼成して

      白磁にほのかなローズ色に発色させた物です。

    ・ 天目釉瀧条斑とは、天目釉の釉肌に瀑布又は、雨滴の様な斑紋を呈したものです。

   b) 与平の文様の特徴に、浮盛の彫刻文様があります。

     白磁の器肌の上に、同じ磁土を泥状にしたものを、筆で盛り上がる様に塗って文様を

     表現する方法です。

   c) その他、色絵彩釉(百花錦)の製法、白磁大氷裂の焼成方法、辰砂釉の焼成、白磁や青磁

     黄磁の焼成方法など、新しい試みを多く取り入れています。

  ⑤ 与平の主な受賞や万博などの出品は、以下の通りです。

    ・ 明治23(1890)年第3回内国勧業博覧会において、陶磁器部門最高の、妙技一等賞を受賞。

    ・ 1878年パリ万博、1893年シカゴ・コロンブス、1889年パリ万博などに作品を出品します。

以下次回に続きます。

 
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現代陶芸3(宮川香山)

2011-12-30 21:34:48 | 現代陶芸と工芸家達
1873年(明治六年)のウイーン万国博覧会以降一躍有名に成った陶芸家に、宮川香山と三代清風与平

らがいます。

1) 宮川香山(みやがわこうざん): 1842~1916年

 ① 1842年京都真葛が原(まくずがはら)で、九代目茶碗屋長兵衛(初代楽長造)の四男として

   生まれます。元々、先祖は近江国坂田郡宮川村で、「楽茶碗」を焼いていた様です。

   八代目が著名な焼き物師、青木木米(もくべい)に師事し、高火度の本焼き製法を学び、

   京都の真葛が原に窯を築き「真葛焼(まくずやき)」として、陶磁器を生産する様に成ります。

   十代目を継いだ兄が夭逝(ようせい=早死に)した為、十九歳で十一代目を継ぎます。

 ② 香山は研究熱心でも有り、先見の明も有ったと見え、外国に向けて仕事をすべきと考え、

   当時、最も諸外国と活発に交易していた、横浜に進出し窯を築きます。

   勿論、彼の才能に惚れ込んだ、多くの後ろ盾がありました。(長州の井上馨、薩摩の小松帯刀、

   赤十字創始者の鍋島藩佐野常民などです。)千坪の土地を海運業の鈴木安兵衛から、提供されて

   います。彼は1870年(明治三年)に、京都より神奈川県久良岐(くらき)郡大田町(現横浜市

   南区)に転居し、「大田焼」と称して窯業を再開します。

 ③ 大田では、多くの陶工や職人を指揮し、工業生産的な操業で、香山自身の製作は少なかった様です。

   明治九年頃には、数十人を雇い入れ、増大する注文に応じていたとされています。

 ④ 原料の粘土は、始めこそ、地元の土や、神奈川県の秦野、伊豆天城山などから、取り寄せて

   いましたが、後に瀬戸や京都などに求めています。

2) 香山の活躍

  「大田焼」は次第に「真葛焼」と呼ばれる様になり、精緻(せいち)で華麗な大型の陶器や磁器を

  製作し、万国博覧会や、内国勧業博覧会(後で述べます)に出品し、数々の受賞を得て、「真葛焼」は、

  「マクズウエアー」「スワンコロン」と呼ばれ、諸外国で絶賛を浴び、購入されていきます。

 ① 受賞歴

   ウイーン万博(1873年): 名誉金碑受賞。フラデルフィア万博(1876年): 銅賞碑受賞

   第一回内国博覧会(1877年): 龍紋賞碑。 パリ万博(1878年): 金賞碑。

   シドニー万博(1879年): 銀賞碑。 メルボルン万博(1881年) : 銅賞。

   第二回内国博覧会(1881年): 一等有功賞碑。 アムステルダム万博(1883年): 銅賞碑。

   パリ万博(1889年): 金賞碑。 シカゴ・コロンブス万博(1893年): 名誉大金賞碑。

   セントルイス万博(1904年): 名誉大賞。 その他の万博や内国博覧会では、数々の賞を

   重ねています。

3) 香山の作品の特徴

 ① 初期の作品は、陶器でその表面に多彩な色絵を施す、錦手や薩摩焼風の色絵陶器を造って

   評判を得ます。

 ② 原料を瀬戸などから取り寄せる様になると、青磁、青華(染付け)、黄釉青華などの華麗で

   精巧な大型の花瓶や水盤などの、磁器も手掛ける様に成ります。

   これらの作品が、多くの受賞の対象に成りました。

   注: 黄釉青華とは、磁土で成型し素焼き後、呉須(酸化コバルト)で下絵の文様を描き、

    絵付けしない部分は蝋で伏せ、絵付け部分に透明釉を塗り、再度素焼きして蝋を抜きます。

    次に、逆に絵付け部分を蝋で伏せ、余白部分に黄釉(チタン5%を含む長石石灰釉)を施し、

    1300度で焼成したものです。

 ③ 明治二十年以降に成ると、仁清風の京焼きや、明や宋(中国)の古陶磁に挑戦しています。
   
4) その他の功績

  1897年(明治三十年)横浜陶画協会を組織し、陶磁器の図案や絵付けなどの、技術の向上を図ります。

  講師に岡倉天心を招き、審美の視野を養う講義も行われています。

  更に、三十六年には、全国陶画共進会を提唱、開催して国際的視野で明治の陶磁世界を指導して

  行きます。

 参考文献: 現代日本の陶芸(第一巻) (株)講談社 発行

以下次回に続きます。
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現代陶芸2(万国博覧会)

2011-12-29 22:01:20 | 現代陶芸と工芸家達
第一回の万国博覧会は、1851年(嘉永4)に英国のロンドンで行われました。

1) 日本政府がは初めて公式に参加、出品した博覧会は、明治六年(1873年)のオーストリアの

   ウイーン万国博覧会です。そこで日本の工芸品は大好評を博します。

   皇帝フランツ・ヨゼフ一世の治世25年を記念して、ウィーンのドナウ河に沿ったプラーター公園で

   開催されました。主会場の産業館の他に、機械、農業、美術などそれぞれに、個別の展示館が

   建設されていた様です。敷地内に設けた日本庭園は、開園式を兼ねた橋の渡り初めに、皇帝と

   皇后の来場もあり、日本の初参加を歓迎してくれたとの事でした。

2) それ以降、我が国の参加が続きます。尚、幕末~明治にかけての万国博覧会は以下の通りです。

  1851年(嘉永4): 第1回ロンドン万博(英国)

  1853年(嘉永6): ニューヨーク万博(米国)

  1855年(安政2): 第1回パリ万博(仏)

  1862年(文久2): 第2回ロンドン万博

  1867年(慶応3): 第2回パリ万博

  1873年(明治6): ウィーン万博 (オーストリア)(日本政府初参加)

  1876年(明治9): フィラデルフィア万博(米国)

  1878年(明治11): 第3回パリ万博

  1879年(明治12): シドニー万博(オーストラリア)

  1880年(明治13): メルボルン万博(オーストラリア)

  1888年(明治21): バルセロナ万博(スペイン)

  1889年(明治22): 第4回パリ万博

  1893年(明治26): シカゴ万博(カナダ)

  1897年(明治30): ブリュッセル万博(ベルギー)

  1900年(明治33): 第5回パリ万博

  1904年(明治37): セントルイス万博(米国)

3)万博の反響と改革

 ① 万博の参加は、明治政府の国策として、国威発揚、殖産興業、輸出の振興を目的に、奨励、援助を

  受けて出品したものです。

 ② 矢継ぎ早の万博への出品は、日本工芸品の名声を高めます。

 ③ 一部の工芸家を除いて、明治の中頃には、日本の工芸品は、次第に飽きられていきます。

   その原因は、陶磁器に施される図案(絵)が、狩野家に伝わる伝統的絵画を基にしていた為で、

   斬新な図案が求められて行きます。同時に、工芸家と言うより、職人として製作に当たっていた為、

   身分も低く、自覚が不足していたとも、言われています。

 ④ 帝室技芸制度の制定。

  明治二十三年(1890年)工芸家の地位と工芸技術の向上、及び新たなデザイン(図案)を

  作る事を目的に、政府は技芸制度を設けます。

  工芸家の加納夏夫、柴田是真、清風与平、宮川香山らが、推挙されています。

  ) 二十九年には、東京美術学校に「図案科」が新設され、横山大観らが指導に当たっています。

  ) その後、京都高等工芸学校、東京蔵前高等工芸学校にも、「図案科」ができます。

     この頃より、美術工芸と産業工芸が区別される様に成ります。

4) 1900年(明治33年)の第5回パリ万博では、政府も力を入れ、予め工人を集め、充実した製造所を

   設け指導します。更に、意匠の陳腐化や図案の貧困からの脱却や、用と美との峻別など、

   十分吟味した作品を出品する様にして、我が国の工芸品は再び好評を博す様になります。

以下次回に続きます。
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現代陶芸1(幕末から明治へ)

2011-12-28 21:50:39 | 現代陶芸と工芸家達
現代陶芸とは何かという定義から入りたい処ですが、これが諸説あって決める事が出来ませんので、

ここでは、定義付けはしない事にします。

 現代陶芸に対するものは、伝統陶芸と成りますが、その区分けも色々の説があり、時代区分による

 もの、作品の種類によるもの、社会情勢による区分け等、色々な区分け方が存在する様です。

1) 幕末の焼き物を取り巻く情勢。

  有田、九谷、京都、瀬戸、鹿児島(薩摩)などの窯場では、染付けや色絵の陶磁器等が、各藩の

  産業殖産として、企業化に取り組み始めていました。

  その背景にあるものは、幕府の開港により、諸外国の人々の来日であり、東洋的異国趣味として、

  お土産品や輸出品(貿易品)として、販売される様になった事が挙げられます。

  ① 外国人の好む色や作品に対応する。

   外国人の好む色調や、食器類の厳しい規格に対応するには、従来の方法では対処出来なく

   なって行きます。その為、海外から新しい近代的な窯業技法が、取り入れる必要が出てきます。

  ② 清水卯三郎が西洋の進歩した窯業技術を持ち帰る。

   パリ万国博覧会(慶応三年、1867年)を見学した江戸の商人「瑞穂屋(みずほや)」の卯三郎は、

   明治元年(1868年)の帰国の際、石膏型による製作方法(主に鋳込み製法)や、染付けの

   天然呉須に替わる人工の酸化コバルトや、我が国に無かった各種の顔料を持ち帰ります。

   これらを竹本要齋や、服部杏圃(きょうほ)に与え研究を行います。

  ③ この事を聞きつけた、佐賀藩ではドイツの化学者、「ワグネス博士」を招聘します。

    明治元年に来日していた、「ゴットフリー・ワグネス博士」を招き、化学顔料や、石膏型の

    使用方法、石炭窯の構築や焼成方法を学びます。更に、彼は石灰釉や、色釉の研究を指導し、

    必要な材料を、輸入する方法も伝授します。

    尚「ワグネス博士」は、その後、京都に設置された「舎密局」で、陶磁器や染織などの

    材料や化学的研究の為、招かれています。

  ④ この様な技術も、廃藩置県(明治四年、1871年)により、秘密であった藩窯の技術が、各地の

    窯場に広く拡散して行きます。瀬戸でもこれまで中国から輸入していた天然呉須から、

    ドイツから輸入された酸化コバルトを使う様に成ります。(明治六年頃の話です。)

2) オーストリア・ウイーン万国博覧会(明治六年、1873年)

  大熊重信参議を総裁として、「ウイーン万国博覧会」に参画します。(当時の予算で60万円)

  ①  明治政府が、国威発揚、殖産興業、輸出振興を奨励する為、積極的に参加したものと思われます。

  ②  この博覧会で、日本の工芸品は好評を得ます。

     特に、初代宮川香山、三代清風与平の作品は名声を得ます。宮川香山は名誉金碑を受賞します。

     この功績により二人は帝室技芸員に、推挙されます。

     尚、この二人については、後日詳細をお話する予定です。

以下次回に続きます。
  
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見る目を養う6(スケッチから読み取)

2011-12-27 21:47:17 | 陶芸入門(初級、中級編)
2) 写真ほど、はっきりした状況でない場合。 

 一瞬又は短時間見た作品を、素早くスケッチして、その様な作品を造りたいと思う事も多いものです。

 その場合、そのスケッチがどれ程正確に描かれているかも重要ですが、それを見た場所(状況)も

 重要です。更に、その作品に魅せられた理由がなんであるのかも、重要な事柄です。

 たぶん第一印象が良かった為で、心が引かれたと思います。その印象をスケッチと言う絵に成って

 しまうと、印象は極端に違ってしまうのが常です。それ故、他の人に絵を見てもらい、色々質問を

 受ける事により、よりイメージを膨らます事や、記憶を蘇(よみがえ)らせるが出来ます。

 この作業は、犯人の似顔絵を、絵心のある警察官が描く場合に似ています。

 描き手は、目撃者に色々質問しながら、犯人の似顔絵を仕上げていきますが、大事な事は、的確な

 質問が出来るかによっています。(質問者は当然経験のある人です。)

 ① 状況を把握する。どんな場面で目撃したのか?(テレビの一場面で、街中のショッピングで、

   友達の家で等が挙げられます。)

 ② どんな形であったか、丸ぽい、角ぽい、平べったい等。又、全体を見る事が出来たのか?

   全体の大きさは、周囲との関係で、解かる事もありますが、後から思い出してみる事も

   可能です。

 ③ 一番最初に目に入るのは、色(色彩)だと思います。どんな色をしていたかは、詳しく無くても、

   印象として残っているはずです。一色とは限らず、複数色がどの様に掛けられているかも、

   記憶に残り易いです。

 ④ 装飾となると、特別際立った場合を除き、印象が薄くなり易いですので、思い出すのが困難な

   場合が多いです。大抵の場合、作品からの距離が離れている為、装飾は見難いと思われます。

 人の記憶は、余り当てにはなりませんし、細かい点になるとまったく、お手上げです。

前回もお話した様に、見た物とまったく同じものを造る必要も無く、単に作品造りの「ヒント」として

 活用すれば良く、有効に利用する事です。

 ・ 更に、見えない(又は、覚えていない)部分は、作り手の「貴方、貴女(あなた)」が好みの

   形で補えば良い事になります。

 今回の話は、これで終わりにしますが、ある程度長く陶芸を楽しんでいると、何を造れば良いのか

 迷う時期がやってきます。作品造りに行き詰まったら、書物以外にも出来るだけ、注意を向けて

 造る「ヒント」を探すのも、一つの方法ですので、常日頃、関心を持って物事を見る習慣をつければ、
 
 結構色々発見する事が出来ます。 

次回から、別の「テーマ」でお話します。 
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見る目を養う5(写真を読み取3)

2011-12-26 21:57:30 | 陶芸入門(初級、中級編)
1) 写真からの情報を引き出す。

  ⑩  写真の作品の見せ所、表現したい所が、なんであるかを推測する。

    最後になりましたが、この事柄が一番重要な事では無いかと思います。

   ) この作品で表現したいのはなんであるのか?。即ち作品の「テーマ」と呼ばれる物です。

     今まで他の人がやっていない、新しい表現方法を取り入れたのか、新しい技術、より困難な

     技術に挑戦しているのか、古い技術の再現を目指しているのか、使い易い器(食器)などを

     作りたいのか等が読み取れれば、かなり写真から情報量の読み取り能力が向上している事に

     なります。当然、御自分が作品を作る際には、この点を重視する必要があります。

   ) その作品の見せ場はどこか。

     作品の大きさなのか、奇抜な形なのか、綺麗な姿なのか、更には今までに無い装飾なのか、

     又は釉の色や、焼き締めの肌なのか等々、その作品のポイントとなる所を、見つけます。

   ) 上記の事柄は、作者がどの様な状態で、作品を発表しているかによって、ある程度

     推察されます。例えば、大きな展示会(公募展)などのポスター類であれば、作品の難易度が

     高いはずですから、他の人とは違った表現方法がとられているはずです。

 上記の状態は、見る人が見れば、特別解説が付いていなくても、一瞬にして、認識される事項です。

 但し、馴れない人は、一つづつ確かめながら、メモして行く事です。

 出来れば、スケッチ(略画)程度の絵として、見えない部分も書き出してみる事です。

 尚、寸法が入れば、更に良くなります。

2) 実際に製作に取りかかる。

  造る作品は、そっくり同じ必要はありません。要は写真に載っている作品を参考にして、

  ご自分なりの作品を作る事が、目的だと思いますので、全体を「アレンジ」しても良い訳です。

  今まで述べてきた事を考慮に入れて、作品を作る事になりますが、問題は、焼く窯の大きさです。

  窯に入らない程の大きさの作品は、焼成する事が出来ませんから、先ず完成する事はできません。

  更に、素直に置いた場合、不安定になる形の物も、基本的には焼けません。

  (勿論何らかの工夫をすれば、可能にはなりますが・・)

 ① 造り方を決める。轆轤か手捻り、又はその他の方法か?

   造る(作業)順序を決める。一度で造り上げられる作品ならば、問題有りませんが、急須の様に

   部分部分を造り、集合させて作品に仕上げる場合には、造る手順を考えなければなりません。

   製作に数日を要する場合には、乾燥度合いにも注意が必要になります。

 ② 土の種類を選ぶ、練り込み文様である場合は、異なる二色以上の土を用意する必要があります。

   理想的には、同じ土の一方に顔料を入れて、色付けする事が望ましいです。

   下絵付けをする場合には、絵柄が映える様な色の土を選びます。

 ③ 作品によってはどの様にして造った物か、不明な場合がありますが、今まで習得した御自分の

   技術を総動員して、挑まなければ成らないかも知れません。勿論、相談出来る人がいたら、

   知恵を出してもらう事です。

以下次回に続きます。
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見る目を養う4(写真を読み取2)

2011-12-25 21:57:26 | 陶芸入門(初級、中級編)
1) 写真からの情報を引き出す。

  ⑤ 作品の裏側を推察する。

    一方向から撮影された写真からは、裏側は推測するしか方法はありませんが、作品は一番良い

    部分を正面として、撮影されていますので、良く出来ていても、表と同程度の出来と

    思われます。裏面だけ特別凝った形や、造りでは無いと思われます。

    但し、後で述べる装飾などは、注意する必要があります。

  ⑥ 作品の造り方を見極める。

    その作品がどんな方法によって、造られているかを見ます。即ち、轆轤(電動、蹴り)か、

    手捻りか、型を利用した物か、又は、鋳込み成型によるものかを、ある程度推測します。

   ) 轆轤を使用している場合は、円形又は、その組み合わせの形の物が多いです。

   ) 角ばった形や、不定形の場合には、手捻りに拠る場合が多いです。

      背の高い場合には、紐造りなどの方法で、平らな場合は板造りが考えられます。

   ) 大量製品や組製品と思われる場合には、鋳込みや機械轆轤が考えられます。

      作品の大きさの割りに安価な場合には、この様な方法で、製作したとも考えられます。

      特に旅番組などの、旅館で使用している器は、型物が多いです。

   ) 一見して、とても手が込み、手間隙が掛かったと思われる作品は、特別な方法で、

      製作したかも知れません。場合に拠っては、製作する為に、特別の道具(用具)が必要かも

      知れません。

    これらはあくまでも推測であり、当然、その通りの方法で作る必要もありません。

  ⑦ 装飾や付属物を見る。

   釉に拠る装飾も有りますが、ここでは、生の状態に施したと思われる、装飾方法を言います。

   ) 作品表面に施された、取り付けや貼り付け物、各種の削り、作品の変形などです。
 
    形が、左右(上下)対称でない場合は、何処が違っているかも、見て取って下さい。

   ) 本体に対して、付属物(例えば蓋や、敷き台など)も見逃すわけにはいきません。

   ) 刷毛目や化粧掛けがしてあると思われる場合には、それがどの様に施されているかも

     確認しておく必要があります。

  ⑧ 土の種類を確認する。先ず陶器又は磁器を判別します。

    写真を見ただけでは、判別できない可能性も大きいです。何度も言う様に、写真通りに造る

    必要はありませんので、製作が容易な陶器(粘土)の方が良いでしょう。

    土の色と質感が大切ですので、どの様な土を使うかを決めます。

  ⑨ 釉を確認する。

    先ず、釉薬が掛けられているかどうかを確認します。釉薬が掛けられている場合には、

    絵付けが施されているのか、釉薬のみで処理されているのかも確認します。

    どんな釉をどの様に掛けているかは、素焼き後の事ですので、直ぐに必要とする事項では

    有りませんが、ある程度頭に入れておきます。

    土の色の違いによって、同じ釉でも色に差がでます。

  ⑩  写真の作品の見せ所、表現したい所が、なんであるかを推測する。

以下次回に続きます。
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見る目を養う3(写真を読み取1)

2011-12-24 22:24:46 | 陶芸入門(初級、中級編)
プロの棋士(将棋を指す人)は、盤上の駒の様子を一目みて、数十手(又は百手)以上の指し手が、

一瞬の内に頭に浮かぶと言われています。

有る程度一芸に秀でた人は、どの場面であっても、最良の手(手段)や情報が、一瞬で読み取れるとも

言われています。陶芸でも、有る程度の経験を積めば、大なり小なり、この様な状態になるはずです。

前々回お話した様に、何処かで見掛けた写真や、作りたい作品の写真から、情報を読み取るには、

どんな視点で、写真を見たら良いかを述べたいと思います。

1) 写真からの情報を引き出す。

  ① 写真の出所

    陶芸関係の雑誌(本)などに載っていたもの、有名作家の作品集、個展や展示会等のカタログ、

    日展や工芸展などの公募展の入選作品カタログや宣伝写真、料理関係の書物、新聞に載った

    写真、その他ポスター類など、結構数多くの陶芸関係の写真などを、見つける事が出来ます。

    大部分はカラー写真が多いですが、中には白黒写真の物もあります。

  ② 写真の枚数。(当然、枚数が多い程、情報量は増えます。)

    有名作家の作品集では、一つの作品を角度を変えて、撮影している場合も多いですが、

    一方向からの撮影したものが、大部分です。

  ③ その作品の用途を見る。作品に名前が付いている場合は、その名前えから、それが何であるかを

    推定できますし、料理などが盛られていれば食器ですし、花が活けてあれば、花瓶類と

    と判断できますが、その様な手掛かりが無い場合には、その形状から推測する事になります。

    一般には、後者の方が多いかも知れません。特にオブジェ的な作品は、用途を考慮せずに、

    単に美的対象としている場合が多いからです。

  ④ 作品の大きさを推定します。

    高さ、幅、奥行きなどの寸法が記載されている場合には、明確になりますが、高さのみの

    表示や、全然明記されていない場合も多いです。この場合、その周囲に比べる物がある場合は

    大きさが推測されます。例えば、食器などに料理が盛られている場合は、その料理の量や、

    食材から、器の容量や大きさが推測できますし、花瓶なども活けてある花の大きさから、

    推察できます。但しこの様に、都合の良い場合は、少ないです。

   ) そっくり同じ大きさに作る必要もありません。

     写真から大きさが割り出せなくても、御自分が作りたい大きさに、造れば良い事です。

     即ち、相似形に造ると言う事です。

   ) 縦、横の比率を割り出す。

     写真をそのまま定規で、採寸するのですが、写真の撮り方によって、若干寸法が違ってきます。

     真横から撮影した場合には、ほぼ採寸通りですが、斜め上から撮影した場合には、縦方向が

     短く写っているはずですので、採寸を補正する必要が出てきます。

     採寸した寸法に、ある数を掛け合わせて、出来上がり寸法にしたり、生の作品の大きさに

     します。(写真は当然、縮尺されているはずです。)

  ⑤ 作品の裏側を推察する。

以下次回に続きます。
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見る目を養う2(轆轤作業)

2011-12-23 22:13:33 | 陶芸入門(初級、中級編)
1) 製作過程に注意する

  手捻りでの製作では、手を止めて全体をじっくり眺めてから、次の作業にとり掛かる事が可能です。

  しかしながら、電動轆轤の様に、回転している作品に、大量の水を使いながら、作陶する時には、

  時間的余裕も有りません。その事が心の余裕を無くす事に繋がり易いです。

  ① 轆轤作業に馴れていない方は、次々に変化する作業手順と形の変化に、気を取られ製作中の

    作品が、今どの様な状態で、どの様な危機に直面しているかを、見落としがちになります。

  ② 早い段階で、危うい状態を察知して、その対応(対策)を行う事で、危機を乗り越える事が

    出来るのですが、危機が広がった段階で、気が付く事が多いです。

  ③ 良く起こる現象は、以下の事項です。

   ) 土を上に伸ばした時に、全体がふら付く事。

   ) 伸ばした土の上面の高さが、狂っている事。

   ) 伸ばした土の途中の肉厚が、極端に薄くなっている事。

   ) 製作途中の作品に、拠(よ)れが発生しかけている事。

   ) 皿などの場合、作品の底の周辺が落ちてきている事。

   ) その他、轆轤のスピードが早すぎる場合や、遅すぎる為に、轆轤作業が上手くいかない事。

   などが挙げられます。当然、この現象に対する対処法はありますが、早く気がつかなければ、

   良い結果は得られません。(尚、ここでは、それらの対処方は、省略します。)

2) これらの危険をいかに察知したら良いのか。

   人は視覚が発達している為、目で見て確認し、発見(察知)したい処ですが、目では誤魔化される

   危険性も有りますし、何処を見ているかによっても、発見が遅れる恐れがあります。

  ① 作業は指を使う事が基本ですので、指の触覚で察知すべきです。

    製作作業しながら、肉厚や振れ、狂いを見つける事は、馴れない方には、意外と難しいかも

    知れませんが、轆轤作業では、必要な技術ですので、会得しなければなりません。

  ② 一呼吸入れて、作品全体を見渡す事。

    上記の様に、作業中に察知できる事が理想ですが、無理の場合には、一呼吸入れて全体を見渡す

    事です。但し、轆轤は回転させたままにしておきます。回転している方が、狂いが発見し易い

    からです。肉厚を見るにも、両手の指を向かい合わせにして、下から上に撫ぜ挙げれば、

    肉厚の差が、指で測る事が出来ます。

   ・ 場合に拠っては、轆轤の前から離れて、遠くから眺めると作品がどんな状態に成っているかを、

     判断できます。

  ③ 指導者のいる場合には、狂いを指摘してくれるかも知れません。

    但し、指導者が必ずしも、指摘してくれるとは限りません。有る程度轆轤に馴れてきた人には、

    あえて失敗させる事も、指導の一環に成るからです。失敗原因が何であるかを、本人に自覚(発見)

    させる事が大事だからです。何度も同じ失敗を繰り返す様な場合には、指摘する必要がありますが、

    言葉による、人の意見は意外と聞き流してしまいがちです、何度も同じ事を言われるのも、

    言う方も、言われる方も、余り気持ちのいい物では有りません。

以下次回に続きます。
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見る目を養う1(始めに)

2011-12-22 21:50:27 | 陶芸入門(初級、中級編)
あの人は「人を見る目がある」とか、「物を見る目がある人だ」とか言う事があります。

一般に、「見る目」とは、本物と偽者を見分ける目や、良い物か余り良くない物かを、見分ける時に

使う言葉です。長年かけて自然に身に付いたものともいえますが、普段の努力の結果ともいえます。

陶芸の世界でも、「鑑定(識別、鑑別)する目」を身に付けた方は、鑑定家としてあがめられている

場合も多く、その為には、良い作品を見る事や、実際に作品を購入し、失敗を繰り返す事により、

経験を重ねる必要があると言われています。

但し、今回のテーマは、この様に「鑑定の目」や「美的感覚」を身に付ける事とは異なります。

最初のテーマは、自分が現在製作中の作品が、どの様な状態にあるのかを、認識する為の目を

養う事です。

1) 製作に夢中に成っていると、作品の不備が見え難く、どんどん悪い方向に進んでしまうと言う

   事をたびたび見る機会があります。

2) この様な事が起きない様に、常に目や肌で確認しながら、作業を進める必要があります。

   その為の方法を、私なりに,お話したいと思います。

次に、一枚の写真(図)から、どれ程の情報が読み取れるかという事が、今回のテーマに成ります。

1) 私の陶芸教室では、自由に作品を作らせていますが、各自オリジナルな作品は、中々思いつかない

   事が多く、陶芸の書物や、雑誌の切り抜きや、町中や、テレビ番組で見掛けた作品などを、

   参考にして、作品を作る事も稀ではありません。

  (教室によっては、雑誌などの持ち込みを、禁止している所も有るようですが、私の所では自由に

   させています。)

 ① この様な作品を作りたいと、写真を見せられた時、そこからどれ程の情報が引き出せるかは、

   本人や見せられた人の経験や技量が、試される事に成ります。

 ② 陶芸関係の雑誌などで、作品の大きさ、粘土の種類、作り方、装飾の施し方、釉薬の種類や

   作る際の注意点まで、記載されている場合は、さほど問題がありません。

   (但し、その記事の意味が出来ない人も、意外と多いのですが)

   問題と成るとすれば、使っている釉薬が、その作者のオリジナルな釉であるかと言う事です。

   そうであれば、まったく同じ様な釉には成りません。これは仕方ない事なので、代用品で

   間に合わせる事に成ります。

 ③ 情報が限定的な場合

   写真と共に、作品の名前(用途)や、大きさなどの情報が有る場合には、有る程度、類推しながら

   同じような作品を作る様に、指導する事が出来ます。

 ④ 更に、情報量が少なく、写真のみの場合も多いです。勿論実物の寸法が記載されていない事も

   多く、写真の反対側も、類推するしかありません。

 ⑤ 写真も無く、うろ覚えのスケッチしかない場合も有ります。
 
   先ほど申しました、テレビ番組(料理、旅番組)などで、何処かで見た(しかも一瞬)物を

   スケッチした物の場合、情報量は極端に少なくなります。そのスケッチを見せられ、この様な

   作品を作りたいと、相談された時、本人の望む形や装飾、色に仕上げるのには、それなりの

   「見る目(読み取る目)」が必要に成ります。


今回はこの様な場面に遭遇した場合の、対処の仕方を述べたいと思います。

以下次回に続きます。
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