わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 311 陶芸の手順とは28(本焼きの手順8)

2017-10-29 13:55:39 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

5) 窯の温度を上げる。 

 ⑤ 燃料を使用する窯では、温度が上昇し易い窯の雰囲気は、中性炎又は弱酸化炎(又は弱還元

   炎)と言われています。(以上が前回までの話です。)

  ⅴ) 温度の上昇スピードは徐々に落ちていきます。

   最終目的温度近辺に成ると、温度上昇は極端に遅くなります。最後の10℃、5℃を上げるのに

   30~1時間程度要する事も稀ではありません。勿論最高温度近くで長い時間を要する事は釉を

   安定的に熔かす作用もありますので、必ずしも悪い事では有りませんが、燃料を多く消費しま

   すので経済的ではありません。

   尚、釉はガラス質ですので、決まった融点は存在しません。あくまでもこの近辺で溶けると言う

   事です。更に言えば目的の温度より数℃~十数℃以前に完全に熔けている場合が多いですので

   若干低めの温度であっても、寝らし時間(一定温度で数十分保持する事)を長く取ればより

   安全です。

  ⅵ) 焼き上がり直前では酸化炎にする。

   還元焼成の場合でも、酸化炎にする必要があります。還元炎は炭素分(一酸化炭素))を

   多く含みますので、そのまま続けると釉に炭素成分が残り、釉を汚す事になります。

   それ故、速めに炭素成分を無くす為に酸化炎にする必要があります。

   尚、還元焼成が有効なのは、釉の表面がガラス化する迄です。表面がガラス化すると釉の中に

   まで炎の影響が届かなくなりますので、還元焼成の効果はなくなります。

   又、煙突の挽きが強くなる酸化焼成をする事で、窯内の上下の温度差を無くす事にもなります。

 ⑥ 所定の温度まで上昇したら、「寝らし焼成」に移ります。

  温度変化がない様に、ドラフトやダンパーを微調整し、燃料の供給と空気量を整えます

  寝らし時間は10分程度から1時間程度まで窯によって違いがあります。一般的には数十分程度が

  多い様です。

6) 窯の温度を下げる(窯を冷やす)。

  窯の温度を下げる行為も、窯焚きと見なされます。即ち、どの様に温度を下げるかによって、

  釉の発色に大きな違いが出るからです。又、窯の冷え方は窯の大きさや壁の厚みにも関係します

  ので、単に消火や炙りだけの問題では無く、窯毎に違いがあります。

 ⅰ) 窯の冷やし方には、急冷と徐冷があります。

  黒系の釉は急冷が良く、結晶釉では徐冷が良いと言われています。

  a) 黒天目などの黒釉では、徐冷すつと赤味のある釉に成ってしまい、真っ黒には成りません。

   当然、燃料を停止し、即消火する事に成ります(自然冷却)。高温では急激に温度が下がりま

   すが、温度の低下具合は徐々に鈍くなります。

   尚、ガス窯や灯油窯の場合、消火するには、最初に燃料の元栓を閉め、配管内やバーナー内に

   残さない方法と、バーナー内に残す方法(最後に元栓を閉める方法)があります。前者は何ら

   かの理由で、バーナー栓が開いても燃料の漏れを防ぐ利点があります。欠点として、次に点火

   する際バーナーまで燃料が届くのが遅れ、中々点火出来ない事です。点火に失敗したと感じ

   易いですので注意が必要です。

  b) 結晶釉の場合、釉内の結晶を発達させ、大きな結晶を析出させる為にも、ゆっくり温度を下

   げるか、ある一定温度を数十分保持する事が有効です。一定温度に保つ為に数本のバーナー

   を点火状態にして置く事です。その他、燃料の供給量を減らす方法もあります。

   釉は1100℃程度より温度が低下すると、凝固が始まると言われています。温度を下げるに従い

   結晶が発達し析出します。結晶釉の種類によって、一番結晶が発達する温度は、微妙に異なり

   ますが、辰砂釉の場合900℃程度で一番結晶が発達するとも言われています。

   それ故1100℃~800℃程度の範囲で徐冷すのが理想的です。実際には経験から温度を割り出す

   事に成ります。温度と徐冷時間が関係します。

 ⅱ) 還元冷却(還元落し)に付いて。


 以下次回に続きます。

  
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素朴な疑問 310 陶芸の手順とは27(本焼きの手順7)

2017-10-17 17:28:15 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

5) 窯の温度を上げる。 

  電気窯の場合には、電力(電流量)をあげるに従い、温度は上昇しますが、ガスや灯油の場合には

  一概に燃料を増量すれば、温度が上がる訳ではありません。空気量との関係で、むしろ温度が

  低下する事も稀では有りません。

 ① 窯焚きでの一番の失敗は、所定温度まで上がらない事です。

 ② 窯焚きに掛かる時間は、窯の容量及び窯の壁の厚み、作品の量(窯詰量)と種類(大きさ)、

  釉の種類に左右されます。

 ③ 素焼きと本焼きでは、温度上昇スピードが異なります。

 ④ 点火直後は窯も冷えていますので、温度は急上昇します。(本焼きの場合です。)

  窯の容積(大きさ)にもよりますが、個人で使う窯程度では、最初の1時間で250~300℃程度

  まで上昇する事は稀ではありません。急上昇させてもさほど問題になる事はありません。

  ⅰ) 200℃を超える当たりから水蒸気が発生します。(以上が前回までの話です。)

  ⅱ) 蒸気の発生が無くなったら扉を閉じる。

   水蒸気は最初湯気が出る程度です。冬場であれば目に見えますが、夏場ではほとんど見えませ

   ん。次第に蒸気量も増えるに従い、目に見えて蒸気抜き穴や扉の隙間より、勢い良く噴出して

   きます。特に、施釉直後に窯焚きを行うと顕著ですが、数日後に行うと水蒸気の量は激減しま

   す。場合によっては、ほとんど蒸気を認められない事もあります。500℃程度に成れば蒸気は

   無くなりますので(実際にはその後も水蒸気は出続けます)、扉や蒸気抜き穴を閉じます。

   この間燃料を増やしたり、電流を増やして、温度を急激に上げてもほとんど問題ありません。

   尚、窯が室内にある場合は、水蒸気で視界が遮られますので、換気扇を回して外に逃がします。

  ⑤ 燃料を使用する窯では、温度が上昇し易い窯の雰囲気は、中性炎又は弱酸化炎(又は弱還元

   炎)と言われています。

   ⅰ) 還元焼成は950℃前後から操作します。(この温度は窯を焚く人によって異なります)

    ドラフトやダンパー、バーナーの空気取り入れ等を操作し、煙突の引きと供給燃料のバランス

    を取る事により、還元の強弱が決ります。

   ⅱ) 還元焼成か酸化焼成の判断は、炎の色と色見穴からの空気の流れから判ります。

    即ち、バーナーがら出た炎が綺麗な青色であれば酸化炎になります。赤味が指すに従い還元炎

    となります。又酸化焼成の場合には、色見穴へ空気が引き込まれ、還元焼成の場合には、

    炎が外に出てきます。出入りの量は還元又は酸化の度合いによって決まります。どちらでも

    ない状態では中性炎と見て良いでしょう。

   ⅲ) 強酸性や強還元炎の場合には、温度上昇が極端に悪くなります。

    温度を上げようとして、燃料を増やしても温度が上がらず、逆に下がる場合もあります。

    これは、空気の量が少な過ぎたり、燃料の供給が多過ぎる場合(強還元)に起こり易いです

    ので、温度の上昇具合を見ながら、燃料と空気量を調整する必要があります。

   ⅳ) 窯の状態を見る時間間隔に付いて。

    窯の前に常時くっ付いて、状態を観察するのがベストですが、窯の状態によってある程度

    の間隔で窯の様子を観察するだけで大丈夫の事もあります。一般には30分程度に一回見れ

    ば良く、温度上昇具合を観察しますが、山場に差し掛かった時には、刻々状態が変化します

    ので、張り付いていなければ成りません。具体的な山場とは、点火時から炎が安定するまで

    の間、蒸気の発生が無くなり扉などを閉める必要がある場合、温度上昇が鈍く成ってきた

    状態、還元焼成を掛ける際、燃料を更に供給する際、最高温度に近づいている状態の時など

    です。その他、窯の中ので異常音がした時もしばらく付きっ切りで、様子を見る必要があり

    ます。

   ⅴ) 温度の上昇スピードは徐々に落ちていきます。


 以下次回に続きます。

  
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素朴な疑問 309 陶芸の手順とは26(本焼きの手順6)

2017-10-09 16:44:50 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

5) 窯の温度を上げる。 

  電気窯の場合には、電力(電流量)をあげるに従い、温度は上昇しますが、ガスや灯油の場合には

  一概に燃料を増量すれば、温度が上がる訳ではありません。空気量との関係で、むしろ温度が

  低下する事も稀では有りません。

 ① 窯焚きでの一番の失敗は、所定温度まで上がらない事です。

  作品の良し悪しは、焼きによって決るとも言われています。但し、これは所定(目的)の温度まで

  温度が上昇し、施釉の場合には釉が熔けた状態であり、無釉の場合には土が焼き締り被った灰等

  が必要程度熔けている事が前提になります。釉も熔けず焼き締りも不十分の場合には、窯焚きは

  失敗と見なされます。現在では所定の温度まで上昇しない事は、少なく成ってきましたが、稀に

  発生します。特に1200℃以上に成ると、最後の20~50℃が中々温度上昇が鈍くなり、時間が掛

  ます。最悪温度が停滞し、それ以上温度が上がらなくなる事も起こります。この場合には、

  一度火を止めて原因を究明し、再度最初から窯を焚き直す事すら起こりえます。

 ② 窯焚きに掛かる時間は、窯の容量及び窯の壁の厚み、作品の量(窯詰量)と種類(大きさ)、

  釉の種類に左右されます。それ故、最低何時間掛ければ良いかは、個々の窯によって異なります。

  容量の小さな電気窯等では、5時間程度で済む場合もありますが、大きめの窯では15~20時間も

  掛ける事があります。一般には一時間100℃の温度上昇とし、1250℃では、12時間半となります

  これは、ジェーゲルコーン(SK-8)が倒れるまでの時間に成っています。

  大きな窯の場合、窯を暖めるだけでも大きな熱エネルギーが必要に成りますので、小型な窯より

  温度上昇も緩やかになり、焼成時間も長くなります。

  又、窯の壁の厚みも重要です。薄い壁の場合壁を通して熱が外に漏れ、窯の表面が熱くなります。

  即ち、熱効率が悪くなります。

  窯の容量に対し、作品の量が少な過ぎる場合や多過ぎる場合にも、温度上昇が鈍く成ったり、

  停止します。少な過ぎる場合には、熱が作品の隙間や天井部分を素通りし、煙突から逃げてしま

  います。即ち、熱を蓄積できない状態です。この場合には焼き直しの作品や、棚板の支柱などを

  立て、蓄熱材を増やします。多過ぎる場合には、温度上昇は緩やかですが、蓄熱材が多量な為、

  少しづつ温度上昇が見られます。

 ③ 素焼きと本焼きでは、温度上昇スピードが異なります。

  本焼きでは素焼きより速いスピードで温度を上昇させる事ができます。素焼きの場合土に水分が

  含まれる為、早く温度を上げると水蒸気爆発を起こします。一方、素焼き後の本焼きでは施釉

  による水分が含まれていても、水分が蒸気と成って、素地の間を抜けていきますので、爆発の

  危険は有りません。勿論蒸気抜きの為、窯の扉を若干開いて置く必要があります。扉を閉じた

  状態で窯焚きを続けると、次々と発生した蒸気が窯の天井で結露となり、作品の上に落ち釉に

  染みを作ります。 色見穴も開けて蒸気抜きとして利用します。

 ④ 点火直後は窯も冷えていますので、温度は急上昇します。(本焼きの場合です。)

  窯の容積(大きさ)にもよりますが、個人で使う窯程度では、最初の1時間で250~300℃程度

  まで上昇する事は稀ではありません。急上昇させてもさほど問題になる事はありません。

  ⅰ) 200℃を超える当たりから水蒸気が発生します。

   施釉した直後の作品から多く水蒸気がでますが、400~500℃程度で水蒸気の発生はなくなります

   一般には400℃を超える当たりで蒸気の発生は少なくなりますが、大きな窯では、上下の温度

   差が大きい為、温度計で500℃と表示しても、下部では400℃以下と言う事になり、長い時間

   水蒸気が発生し続けます。

  ⅱ) 蒸気の発生が無くなったら扉を閉じる。


 以下次回に続きます。

  
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素朴な疑問 308 陶芸の手順とは25(本焼きの手順5)

2017-10-01 13:29:18 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

4) 本焼きの準備と手順

 ① 設備の点検作業。 

 ② 窯に点火(又はスイッチON)。

  ⅰ) 窯を焚く天候と時間。

  ⅱ) 電気窯の点火方法。

  ⅲ) ガス窯の点火方法。(以上が前回の話です。)

  ⅳ) 灯油窯の点火方法。

   以前は陶芸の窯と言えば、燃料の安さから灯油窯が多かったのですが、近頃は電気やガス窯を

   使う人が増えています。燃料が値上がりした事と、操作の難しさ及び騒音や黒煙、匂いなど

   近隣への悪い影響も出易く、住宅地などでは敬遠される様に成って来たのが原因と思われます。

   又、灯油用のバーナーは、電気で作動するブロアー(送風機)と一体に成っていますので、

   窯の横方向のスペースが他の窯より若干広くとる必要があります。更に灯油缶(タンク)等

   の設置も必要になります。但し、ガス漏れによる爆発が無い為、危険性は少ないです。

   a) 灯油窯もガス窯と同様に倒炎式が多いです。

    窯の両側面より噴出した炎は側壁を這って天井まで上り、その後下降に転じ窯底の煙道から

    煙突に抜ける構造に成っています。その為、比較的窯内の温度は一定になる利点があります。

   b) ダンパー(バカ穴)とドラフト、及び色見穴に付いて。

    ブロアーによる強制吸気ですので、煙突の途中に設けられているドラフトは、煙突の引きの

    影響が弱くなり易いです。それ故、外気を取り入れる煙突の底近くに設けられたダンパーの

    効果は大きいですので、ダンパーによる調整で煙突の引きの強さを調整する事に成ります。

    点火の際には、ドラフトは開け、ダンパーは閉じておきます。(窯を焚く人によって違いが

    あります。)バーナーの真上にある色見穴は、二次空気穴を兼ねていますので、開けておく

    のが一般的です。

   c) 点火の手順は以下の通りです。(操作手順は人によって変わる事も多いです。)

    イ) 灯油タンクの元栓を開く。

    ロ) バーナーの電源を入れる。

    ハ) 点火スッチの電源を入れ(ON)、点火ボタンを押す。

    ニ) 点火を確認したら点火スイッチをOFFにする。

    ホ) ブロアーから空気を送る。

   d) 灯油窯は油量の少ない低温時には、焔が不安定に成り易いです。

    その為、安定する迄の間は扉を開けて、焔の状態を確認する必要があります。

    灯油は電磁ポンプによってバーナーに送られます。それ故、タンクが高い位置に有る方が

    灯油の流れは良くなります。当然ですが油量が少なく成ると、圧力も弱くなります。

    焔を見ながら油量と空気量を調整します。両方とも目盛りがありますが、参考程度に利用し

    ます。バーナーは一個口と二個口(ヅインバーナー)があります。各々にブロアーが一個付

    いています。左右ある二個口のバーナーは二個とも同じ様な焔の状態に成る様に調整します。

    調整は空気量調整板を少しづつ開き、焔が明るくなり更に黒煙が出ない様にします。

  e) 全てのバーナーを同時に点火する事は少なく、順次個別に行います。但しツインバーナーは

   同時に点火します。

5) 窯の温度を上げる。 

  電気窯の場合には、電力(電流量)をあげるに従い、温度は上昇しますが、ガスや灯油の場合には

  一概に燃料を増量すれば、温度が上がる訳ではありません。空気量との関係で、むしろ温度が

  低下する事も稀では有りません。


  以下次回に続きます。


 参考文献:「陶芸窯焚きマスターブック」(株)誠文堂新光社:2016年発行
  
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