わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

続 電動ろくろ32(トラブル9、削り作業1)

2019-12-25 09:11:32 | 続 電動ろくろに付いて

轆轤挽や手捻りした作品は、必ず削り作業が必要になります。

その目的は、余分な土が付いている為、作品が重くなる事を防ぐと共に、形を整え

る役割もあります。

尚、作品の形を維持する為に、素地の柔らかい時は余分な土は絶対必要です。

その為極限まで余分な土を取り除いて作品を作る事は、ほとんど不可能です。

力を加えても変形しない程度に乾燥すれば、削れる様になります。乾燥が進み過ぎ

ると、カンナ等の刃が立たなくなる程硬くなり、削れなくなる場合が有りますので

注意が必要です。(土が白っぽく成ると乾燥し過ぎです)乾燥し過ぎた作品は濡れ

た巾等で包み湿り気を与えたり、小さな作品では、一瞬水に漬けて濡らし削り易く

します。但し長く水に漬けると、作品が溶け出しますので注意が必要です。

理想的な削りの乾燥度は、削りカス(カンナ屑)が帯状に細長く続く状態です。

削る部分は、底(高台回り)と作品の腰の部分が大半です。

勿論急須の様に各部分を組み合わせて作品に仕上げる時には、各パーツを整形する

為に予め必要な部分を削り取る場合もあります。

1) 削る量の問題。

 多くの場合、削り不足の場合が多いです。特に初心者に多く見かけます。

 削る際、どの程度削れるかが不安の為です。削り過ぎると形が崩れるだけで無く、

 最悪の場合孔が開く事も珍しく有りません。

 その為、厚みを確認しながら削りたいのですが、実際には作品を上下逆さにし更に

 轆轤上に固定して高台を削り出しますので、一々轆轤より取り外して厚みを確認

 する事は、再度固定する事になり現実的ではありません。

2) 作品を轆轤の中心に置く。

 轆轤の回転力を利用して、カンナや掻ベラ等の刃物で削ります。轆轤で作る作品

 は円形の場合が大半ですので、削りたい部分の円周を均等の厚みに削る為には、

 轆轤の中心に作品を置く必要があります。中心よりズレると、片削りの状態に

 なり、場所により肉厚が変化します。

 ① 作品を上下逆さに置く場合と、逆さにせずに置く場合があります。

  高台や高台脇を削る場合は、直接轆轤上に逆さにセットするか、逆さに出来ない

  形状の場合は、シッタ(湿台)を据えてその上に作品を逆さに置きます。

  尚、シッタには、口径の大きな場合に使う内シッタと、口径の小さな作品の

  壺等の場合に使う外シッタがあります。

  器の内側や口縁等の上部を削る際には、上下逆さにせず轆轤上に作品をセット

  します。

 ② 中心に作品を置く方法も色々なやり方があります。

  更に轆轤上に作品をセットした後に、その作品を粘土等で固定する方法と、固定

  しない方法があります。各々利点と欠点があります。

  前者の場合、何らかの不注意で作品が動いてしまうのを防ぎますが、手間が

  掛かる欠点もあります。後者で有れば、容易に動く可能性が有りますが、削り

  終われば速やかに次の作品の削りに取り掛かる事も可能です。量産する職人

  さん達はこの方法を採っています。

 ③ 轆轤の回転方向も右と左回転の方法があります。

  電動轆轤では回転方向を自由に選ぶ事が可能ですので、削り作業のみを左回転

 (反時計方向)で行う人もいます。カンナ類を右手で持った場合、カンナの当たる

  方向が自然な形に成るからです。

3)作品の肉厚を確認する方法に、作品を爪で弾いてその音の高さで判断する

 場合が多いです。同じ様な作品を数多く作る場合は、一個を削って見れば様子が

 判りますので、一々厚みを確認しなくともほぼ同じ厚みに成りますが、一個作り

 や、轆轤の削り作業に不慣れな方は、上記の様に爪で弾いて厚みを確認しながら

 削ります。但し慣れない方は音を聞いても、判断できないかも知れません。

 先生や指導者がいる場合には、確認して貰いながら音の高さを聞き分けられる

 様にします。

 ① 肉厚が厚い場合は、弾いた音は高くなります。

 ② 肉厚が薄い場合には、弾いた音は低くなります。

 ③ 叩く場所によって音色も変化します。

  作品の乾燥度合いや底、高台脇、腰、口径近くと同じ力で弾いても音色に差が

  出ます。当然、作品の大きさ(径、高)によっても音色が変わります。

  どんな音色になるかは、経験を積まなくては判断できない事が多いです。

以下次回に続きます。 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

続 電動ろくろ31(トラブル8、蓋物2)

2019-12-13 15:52:22 | 続 電動ろくろに付いて

4) 蓋物のトラブル。

 ① 器と蓋の寸法が合致しない。

  良く起きるトラブルですので、注意が必要です。

  不都合なのは、器と蓋の接合部(合わせ目)がピッタリ合わない事です。

  蓋が大き過ぎ閉まらない事も多いです。但し蓋が小さくて隙間が大きくガタガタ

  しても、使用上は問題に成りません。当然、この様に成らない様に、一個作りの

  際には、現物合わせで隙間を調整する事になります。

  合わせ目が円形の場合には一か所だけでなく、どの方向でも蓋が合致する様に

  します。

 ② 蓋が歪む為に組み合わない。

  蓋の形状にもよりますが、蓋が歪む事も有ります。特に轆轤挽した直後では、一番作品

  が縮みますので、狂いも大きくなり易いです。その他焼成中にも歪みます。

  一般に、蓋は丸味のある凸状に成っている物が多いです。平らな物は凸状と比べて変形

  する事が多いです。更に蓋の直径が大きい程、乾燥時や焼成時に歪み易いです。 

  器の口縁周辺を若干高くし、落とし蓋にすると納まりの良い形になります。

 ③ 焼成で起こるトラブルは、釉が合わせ目に入り込み、溶着してしまう事です。

  その為、蓋を開ける事が出来なくなります。この場合の解決策は、溶着部分を物理的

  方法で剥がす事になります。具体的には、溶着部分が一か所の場合で、溶着範囲が比較

  的狭い時には、溶着部分を根気よくハンマー等で軽く叩き続ける事です。

  但し、溶着部分を破壊する恐れも大きいですので、クッション材を利用して慎重に

  作業します。ある程度蓋が動き始めたら、テコの応用で先の細い金属類で、こじ開け

  ます。更に細工用のダイヤモンドヤスリの先端が、蓋と本体の隙間に入る事が出来る

  場合には、その隙間にこじ入れて徐々に削り取る方法もあります。

 ④ 上記の状態に成らない為には、施釉の際接合部分に釉が付着させない事です。

  蓋側と本体側の両方共必要です。若し、釉が掛かった場合には、水で濡らした

  スポンジ等で綺麗に拭き取ります。更に、水で溶いだ水酸化アルミナ等の溶着

  防止剤を筆等で塗っておきます。

  基本的には、蓋をした状態で、本焼きしますが、蓋と本体を別々に焼成する

  事もあります。前者で有れば、例え形が狂っても、その位置でなら蓋が出来る

  事に成りますが、後者であれば、溶着する恐れは在りませんが、形が狂った

  場合には、何処でも合わない事になります。別焼きの場合、施釉する範囲は

  若干広くなりますが、施釉の為肉厚が大きく成りますので、釉の厚みにも注意

  が必要です。又、蓋に蒸気抜きの為に小さな孔を開ける場合があります。

  この場合も施釉後に、息を吹き掛けて釉を飛ばします。

 ⑤ 溶着部分が広い場合には、残念ながら蓋が取れず諦める事になります。

  蓋物の場合、蓋の取れない作品は、ほとんど使いものに成りません。

  最初から作り直す方が、肝銘です。

 ⑥ 蓋物で注意する点は、器内部の物(食品、料理等)を取り出す際に、器側の

  口縁が邪魔になり易いですので、成るべく簡単な構造にする事です。

  特に内側に反り返る蓋受けでは、器側の口径を狭くしますので、出来るだけ狭く

  するか、無くす構造にした方がより実用的になります。  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

続 電動ろくろ30(トラブル8、蓋物1)

2019-12-03 13:25:18 | 続 電動ろくろに付いて

焼き物では、急須を始め、湯呑茶碗や茶碗蒸し用の器、茶道の水指、重箱、更には骨壺など

で、同じ素材の蓋の付いた物があります。(同じ素材の蓋を共蓋と言います)。

蓋物のトラブルとは、主に蓋と本体(器)がピッタリ重ね合わない状態です。

最悪の場合、蓋が出来ない場合すら珍しくありません。理想的には、どの位置でも蓋が出来る

事ですが、ある一か所のみでしか合わない事も多いです。蓋と本体の隙間が合わず、ガタガタ

する事も、稀ではありません。これらの原因や対策などに付いて述べたいと思います。

更に、蓋の合わせ方にも幾つかの方法がありますので、どの方法を採ったら良いかものべます

1) 本体と蓋を作る時は、時間差が生じます。

 一般には本体(器側)を先に轆轤挽きした後、蓋を制作する事が多いです。

 素地は、轆轤挽直後から乾燥収縮が始まります。それ故、蓋を轆轤挽時には、本体はかな

 縮んでいますので、この際の口径を測定し一致させても、完成時の蓋と本体の直径は合い

 ません。即ち本体を轆轤挽した直後の口径を測定し、その値を基に蓋の口径を決なくては

 いけません。口径を測るには、物差し等も有りますが、一般にはコンパス状の内パス、

 外パスを使用します。

2) 蓋と本体の隙間に付いて。

 単に器の上に蓋を置く構造であれば、隙間(クリアランス)を考慮する必要は有りません。

 しかし実際には、蓋が横に滑らない様に、何らかの引っ掛かりを付ける必要があります。

 引っ掛かりを器側に設ける場合と蓋側に設ける場合もあります。

 この器と蓋との隙間が問題になります。隙間が小さいと蓋は閉まりませんし、広過ぎると

 ガタガタしてしまいます。

3) 陶芸で良く使われる蓋の種類と名称。

 蓋を受け止める本体部分を蓋受けといいます。勿論蓋受け部分の無い器も存在しまあす

 蓋の種類には以下の物があります。

 ① 載せ(ノセ)蓋

  平板な蓋で、蓋自体や器側にも蓋を受け止め、移動を止める突起物は有りません。

  例えば、群馬県の碓氷峠の横川にある、峠の釜めしに付いている蓋です。

 ② 浅蓋(アサブタ)と深蓋(フカブタ)。

  器と同じ外形で、器本体より蓋の直径が大きく、本体に被さる状態の物です。

  蓋の内径が、器の外形よりも若干大きく、蓋の内側が器の外形に被さります。

  被さる長さが短い蓋を浅蓋と言い、器側より蓋側が長い物を深蓋といいます。

  又浅蓋を被せ蓋(カブセブ)とも言います。

 ③ 印籠(インロウ)蓋

  一番多く見られる蓋の形状で、蓋側又は器側、更には両方の合わせ目に凹凸がある形状

  の蓋です。印籠蓋にも幾つかの種類があります。

  ⅰ) 送り印籠: 器側の口縁の幅(肉厚)を二分し、その外側を高くし、内側を

   低くして段差を設けます。蓋側これと反対に外側を低く、内側を高くしてしっかり

   蓋と器が噛合様にします。

  ⅱ) 逆印籠: 上記送り印籠の蓋側と器側の凹凸が逆に成っている形状です。

   何れも、凹凸は轆轤の削り作業で成形します。

  ⅲ) 付け印籠:削り作業ではなく、器本体又は蓋本体の内側に円形の物を張り付け

   凹凸を作る方法です。口縁の肉厚が薄く削りが出来ない場合に行います。

   即ち、器側(又は蓋側)の内側に器より背の高い同型の円筒を張り付けて、内側が

   高く、外側の低い段差を設ける物です。

 ④ 落とし蓋。

   器側の口縁より一段低い位置に蓋受け部分を設け、底に蓋を置く方法です。

   当然、蓋の直径は器側の直径より小さくいます。急須の蓋や水指の蓋等で多く見る

   事が有ります。食器等に使用うと、口縁の内側の出っ張りが邪魔になり易いです。

   尚、内側の出っ張りを無くす方法として、①で述べた載せ蓋の内側に器の内径より

   やや小さい円形の突起物を設け、蓋の滑りを止める方法もあります。

 ⑤ 懸子(掛け子)

  蓋が二重になる物です。内蓋と外蓋が別々に成ります。

  緑茶を入れる茶筒がこの構造です。内蓋は落とし蓋で外蓋は浅蓋に成っています。   

 ⑥ その他の蓋

  ⅰ) 台指(ダイサシ):本体(器)の高さが低く、蓋が深い形状で、器の中央部分

   を高くして、蓋の内側に合わせます。

  ⅱ) 桟(サン)蓋

   焼き物では余り見ませんが、桐箱などで見られる蓋です。

   四方桟と下駄桟(二方桟):蓋の内側に四角又は二本の桟を設けた物です。

   この桟が器の内側に当たり、蓋の座りを良くします。

以下次回に続きます。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする