轆轤挽や手捻りした作品は、必ず削り作業が必要になります。
その目的は、余分な土が付いている為、作品が重くなる事を防ぐと共に、形を整え
る役割もあります。
尚、作品の形を維持する為に、素地の柔らかい時は余分な土は絶対必要です。
その為極限まで余分な土を取り除いて作品を作る事は、ほとんど不可能です。
力を加えても変形しない程度に乾燥すれば、削れる様になります。乾燥が進み過ぎ
ると、カンナ等の刃が立たなくなる程硬くなり、削れなくなる場合が有りますので
注意が必要です。(土が白っぽく成ると乾燥し過ぎです)乾燥し過ぎた作品は濡れ
た巾等で包み湿り気を与えたり、小さな作品では、一瞬水に漬けて濡らし削り易く
します。但し長く水に漬けると、作品が溶け出しますので注意が必要です。
理想的な削りの乾燥度は、削りカス(カンナ屑)が帯状に細長く続く状態です。
削る部分は、底(高台回り)と作品の腰の部分が大半です。
勿論急須の様に各部分を組み合わせて作品に仕上げる時には、各パーツを整形する
為に予め必要な部分を削り取る場合もあります。
1) 削る量の問題。
多くの場合、削り不足の場合が多いです。特に初心者に多く見かけます。
削る際、どの程度削れるかが不安の為です。削り過ぎると形が崩れるだけで無く、
最悪の場合孔が開く事も珍しく有りません。
その為、厚みを確認しながら削りたいのですが、実際には作品を上下逆さにし更に
轆轤上に固定して高台を削り出しますので、一々轆轤より取り外して厚みを確認
する事は、再度固定する事になり現実的ではありません。
2) 作品を轆轤の中心に置く。
轆轤の回転力を利用して、カンナや掻ベラ等の刃物で削ります。轆轤で作る作品
は円形の場合が大半ですので、削りたい部分の円周を均等の厚みに削る為には、
轆轤の中心に作品を置く必要があります。中心よりズレると、片削りの状態に
なり、場所により肉厚が変化します。
① 作品を上下逆さに置く場合と、逆さにせずに置く場合があります。
高台や高台脇を削る場合は、直接轆轤上に逆さにセットするか、逆さに出来ない
形状の場合は、シッタ(湿台)を据えてその上に作品を逆さに置きます。
尚、シッタには、口径の大きな場合に使う内シッタと、口径の小さな作品の
壺等の場合に使う外シッタがあります。
器の内側や口縁等の上部を削る際には、上下逆さにせず轆轤上に作品をセット
します。
② 中心に作品を置く方法も色々なやり方があります。
更に轆轤上に作品をセットした後に、その作品を粘土等で固定する方法と、固定
しない方法があります。各々利点と欠点があります。
前者の場合、何らかの不注意で作品が動いてしまうのを防ぎますが、手間が
掛かる欠点もあります。後者で有れば、容易に動く可能性が有りますが、削り
終われば速やかに次の作品の削りに取り掛かる事も可能です。量産する職人
さん達はこの方法を採っています。
③ 轆轤の回転方向も右と左回転の方法があります。
電動轆轤では回転方向を自由に選ぶ事が可能ですので、削り作業のみを左回転
(反時計方向)で行う人もいます。カンナ類を右手で持った場合、カンナの当たる
方向が自然な形に成るからです。
3)作品の肉厚を確認する方法に、作品を爪で弾いてその音の高さで判断する
場合が多いです。同じ様な作品を数多く作る場合は、一個を削って見れば様子が
判りますので、一々厚みを確認しなくともほぼ同じ厚みに成りますが、一個作り
や、轆轤の削り作業に不慣れな方は、上記の様に爪で弾いて厚みを確認しながら
削ります。但し慣れない方は音を聞いても、判断できないかも知れません。
先生や指導者がいる場合には、確認して貰いながら音の高さを聞き分けられる
様にします。
① 肉厚が厚い場合は、弾いた音は高くなります。
② 肉厚が薄い場合には、弾いた音は低くなります。
③ 叩く場所によって音色も変化します。
作品の乾燥度合いや底、高台脇、腰、口径近くと同じ力で弾いても音色に差が
出ます。当然、作品の大きさ(径、高)によっても音色が変わります。
どんな音色になるかは、経験を積まなくては判断できない事が多いです。
以下次回に続きます。