よし様より追加の質問をお受けしましたので、当方の見解を述べます。
私は円柱形で上下同じ高さ位のものを合わせています。上下合わせて20センチ弱程の
高さです。上部は本焼き後の沈みを防ぐために、少し丸みをつけています。半磁器の理由は
白磁が好きなのと個人の窯ではないのでSK7での本焼き温度に合わせているためです。
轆轤のあと、完全に乾燥させてから、もしくは素焼き後に再度調合した化粧土のようなもの
を高く塗り重ねて彫刻し、再度素焼き、本焼きというものをつくっています。
蓋の方の轆轤の時、本焼き後の沈みを防ぐために底を浅くカーブさせて作っているのですが
その厚さが、ご指摘の底の肉厚の問題だとは思うのですが、カーブをつけているため、中央
と側面側の底の厚さが2倍以上違うこともあります。その後、ある程度乾燥させたあと上下
合わせた状態で削るため中央から側面側に向かっての厚さのむらが解消されてないまま削り
を終え(蓋を何度も外したり合わせたりすることで、合わせ目が欠けたりするのが怖いため
一応指で叩いて確認しているつもりですが滅多に外してません。)、乾燥させていってること
に原因があると思うのですが、カーブはどの程度つけていれば沈みを防げるでしょうか?
作品としては外観をなるべく平らにしておきたいというので外側の削りが足らず厚いままと
いう状況になってしまっています。
また、上下それぞれ7キロ強の土を使っているので、一人ではサンドイッチでひっくり返す
のが難しく、元々土が柔らかい事もあり翌日でも、触れば指の跡がつくほどだったりするので
私の先生の提案で、天日干しさせて手で持上げて外せるほど乾燥させてたりしたのが、縦割れ
の原因かと20個近く作って今更ながら室内で(サンドイッチでひっくり返せないので)手で持
上げて歪まない固さまで風通しの悪く直射日光の当たらない部屋で数日乾燥させているのです
がやはりそれでは遅いでしょうか?
糸切りは、轆轤が終わったあと、その後、1日に朝夜確認のためやってます。
あと、削り後の乾燥のさせ方なのですが、上下合わせた状態でない場合、蓋の方はどちらを上
にし、乾燥させるべきでしょうか?蓋をひっくり返した状態だと、底がカーブつけて削ってあ
るため亀板との接地面が小さく、乾燥の際歪みがないでしょうか?スポンジ等で支えすれば大
丈夫でしょうか?
蓋を合わせ目を下に亀板に置くと蓋をして乾燥させているのと変わらないような気がするの
ですが、亀板と蓋の間に細い板かなにか挟んで隙間を作るといった風にするのでしょうか?
色々、長々と、まとまりのない文章で申し訳ありません。
どうしても途中で諦められず、しつこく質問させていただきました。
またお時間がある時で結構ですので、よろしくお願いいたします。
◎ 明窓窯より
質問の内容から判断し、電動轆轤を始めてから数年の方と見受けられます。
その為、電動轆轤がどの様な物(特徴)なのかの理解が不足している様にも思えて成りません。
失礼ですが、貴方様には荷の重い作品を作ろうとしている様に思われます。
何が問題かを具体的に述べると以下の様になります。
1) 上下それぞれ7キロ強の土を使っている事。
電動轆轤は、綺麗な形で薄く、速く作る道具です。逆に薄く挽ける事がその人の実力とも
言われています。それ故、直径35cm(生で)高さ20cm程度の作品を作るのにどう
してこれ程の土を使うのか理解できません。彫刻を施す為とも思われますが。この量では
かなりの肉厚になり、ひっくり返すのも一苦労します。その為、乾燥時に問題が発生する
のは、当然とも言えます。
実際問題として、作品が重過ぎて実用性はほとんど感じられません。但し、展示会などに
出品する場合には、あえて実用性を無視する事も有りますが・・・
勿論、実用性がなくても良いのですが、制作時や持ち運び時、使用時には重過ぎて取り扱い
が困難になります。もし私が電動轆轤で作るとすあれば、上下各々2~2.5Kgも有れば
十分です。
2) 明窓窯からの提案です。
上記作品を電動轆轤で水挽するのではなく、くりぬき(刳り貫き)方式で作る事です。
この方法であれば、水挽きを行いませんので、乾燥のトラブルを防ぐ事ができます。
実際に陶芸作家の方には、この方式で箱物を作っている方もいます。
その手順は以下の様になります。
① 素地を必要な外形にする。
良く練った素地を必要な形にし、素地を強く叩き締めます。出来れば亀板上に据えます
叩き棒や板が締めれば更に良くなります。実際には本体側の円盤と蓋側の円盤の二枚に
した方が均等に乾燥し易いです。当然この段階では、空洞は無く無垢(むく)の状態です
この状態で削れる程度まで乾燥させます。ちなみに今回の例ですと、直径35cmとし、
高さは蓋の合わせ目を削る事を考慮して、2~3cm高くし、11~12cmにします。
② 削りは電動轆轤上で行います。
ⅰ) 轆轤上にセットし、轆轤を回転させながら、カンナ等を用いて外形を大まかに削り
ます。
ⅱ) 本体(器)側、蓋側と別々に内部を刳り貫きます。
勿論、内側を先に削っても問題ありません。
今回は円形ですので、轆轤を回転させながら削る事ができます。当然蓋側はひっくり返
して削ります。蓋の内側は緩やかなアーチ(鍋底)にします。当然ですが、アーチが急
な程底は落ちません。但し、彫刻を施す部分は、若干肉を厚くします。その際底の肉厚
を測定して置きます。簡単な方法は針を中央に突き刺せば測定できます。尚乾燥が甘い
場合には、削っては乾かし削っては乾かすを繰り返します。問題は肉厚です、成るべく
偏肉に成らない様にします
ⅲ) 合わせ目を削り出す。
蓋物の合わせ方には色々な方法があります。基本的には本体と蓋がぴったり合わさる事
ですが、焼成時の歪みや、施釉の事も考慮して、若干のガタ(隙間)が必要です。
実際に合わせ、ガタを確認します。
ⅳ)上下合わせた状態で全体の外形を削り出します。
特に蓋の肩の部分が偏肉に成らない様にします。その為には、本体より取り外し実際に
厚みを指で確認します。(蓋を何度も外したり合わせたりすることで、合わせ目が欠け
たりするのが怖いため一応指で叩いて確認しているつもりですが滅多に外してま
せん。)とありますが肉厚が厚い場合には、この様な方法では、確認は取れません。
合わせ目の欠けが怖いと言う事は縁が極端に肉薄なのでしょうか?。それとも重たい
為でしょうか?一般には壊れる恐れはほとんど有りませんので、何度でも取り外す事が
可能なはずです。
ⅳ) 蓋の乾燥は、内側を上にして行います。
回転が掛かったり、天井部分に全重量が掛かる場合には、ドーナツ状にしたタオル等で
周囲を支えて下さい。又は布を敷いたボール等の丸い器の内側に置くとより安全です。
但し、乾燥が進んでいる事や、軽量に作る事で、そのまま逆さにしても。変形の恐れは
少ないです。
3) 最も重要な問題点は、「轆轤のあと、完全に乾燥させてから、もしくは素焼き後に再度
調合した化粧土のようなものを高く塗り重ねて彫刻し、再度素焼き、本焼きというものを
つくっています。」の部分です。失礼ですが、化粧土に付いての認識(知識)を余り持ち
合わせていない感じがします。化粧掛けを高く(厚く)塗る事は、大きな失敗に繋がり
ます。更にその上から彫刻を施したいとのご希望ですが、ほとんど不可能な事に挑戦して
いる様にみえます。なぜなら、素地と化粧土との相性(施すタイミング)、素焼き前と後
での化粧土の調合の違い、施す(塗る)方法等を理解していないと、化粧土はどんどん剥
がれてしまいます。当然厚く塗れば厚くなる程、剥がれや表面と素地自体の割れ(崩壊)
を招きます。
彫刻後に化粧土を、薄く施すならば、可能性は増えますが、厚く塗った化粧土に彫刻を施
す事はほとんどまず無理と思われます。化粧掛けはある意味、作品の形作りより難しい
作業と言えます。試作品は化粧掛けや彫刻まで進んでいるのでしょうか?
半磁器土なのに、危険を冒してまで白化粧を施す理由がいまいち判りません。半磁器土と
白化粧土との差は、それ程大きくは無いと思われるからです。
4) 結論
当方から見ると、失礼ですが、貴方様の技量(実力)では、かなり荷の重い作品です。
設計段階から再度検討が必要と思われます。いきなり大物ではなく、段階的に進める事を
薦めます。l
先生がおられる様ですので、良く相談して設計、段取り、制作方法等を決めてください。
以上、かなり厳しく述べましたが、轆轤技術だけでなくその他の分野でも、陶芸は奥の
深い物です。 判ったつもりでも思うように行かない物です。一つ一つ技術の積み重ね
が早道です。
尚、困難に挑戦する事はとても大切な事ですので、チャレンジ精神を持ち続けて下さい。
疑問、質問が有りましたら、随時コメントしてください。
以上
私は円柱形で上下同じ高さ位のものを合わせています。上下合わせて20センチ弱程の
高さです。上部は本焼き後の沈みを防ぐために、少し丸みをつけています。半磁器の理由は
白磁が好きなのと個人の窯ではないのでSK7での本焼き温度に合わせているためです。
轆轤のあと、完全に乾燥させてから、もしくは素焼き後に再度調合した化粧土のようなもの
を高く塗り重ねて彫刻し、再度素焼き、本焼きというものをつくっています。
蓋の方の轆轤の時、本焼き後の沈みを防ぐために底を浅くカーブさせて作っているのですが
その厚さが、ご指摘の底の肉厚の問題だとは思うのですが、カーブをつけているため、中央
と側面側の底の厚さが2倍以上違うこともあります。その後、ある程度乾燥させたあと上下
合わせた状態で削るため中央から側面側に向かっての厚さのむらが解消されてないまま削り
を終え(蓋を何度も外したり合わせたりすることで、合わせ目が欠けたりするのが怖いため
一応指で叩いて確認しているつもりですが滅多に外してません。)、乾燥させていってること
に原因があると思うのですが、カーブはどの程度つけていれば沈みを防げるでしょうか?
作品としては外観をなるべく平らにしておきたいというので外側の削りが足らず厚いままと
いう状況になってしまっています。
また、上下それぞれ7キロ強の土を使っているので、一人ではサンドイッチでひっくり返す
のが難しく、元々土が柔らかい事もあり翌日でも、触れば指の跡がつくほどだったりするので
私の先生の提案で、天日干しさせて手で持上げて外せるほど乾燥させてたりしたのが、縦割れ
の原因かと20個近く作って今更ながら室内で(サンドイッチでひっくり返せないので)手で持
上げて歪まない固さまで風通しの悪く直射日光の当たらない部屋で数日乾燥させているのです
がやはりそれでは遅いでしょうか?
糸切りは、轆轤が終わったあと、その後、1日に朝夜確認のためやってます。
あと、削り後の乾燥のさせ方なのですが、上下合わせた状態でない場合、蓋の方はどちらを上
にし、乾燥させるべきでしょうか?蓋をひっくり返した状態だと、底がカーブつけて削ってあ
るため亀板との接地面が小さく、乾燥の際歪みがないでしょうか?スポンジ等で支えすれば大
丈夫でしょうか?
蓋を合わせ目を下に亀板に置くと蓋をして乾燥させているのと変わらないような気がするの
ですが、亀板と蓋の間に細い板かなにか挟んで隙間を作るといった風にするのでしょうか?
色々、長々と、まとまりのない文章で申し訳ありません。
どうしても途中で諦められず、しつこく質問させていただきました。
またお時間がある時で結構ですので、よろしくお願いいたします。
◎ 明窓窯より
質問の内容から判断し、電動轆轤を始めてから数年の方と見受けられます。
その為、電動轆轤がどの様な物(特徴)なのかの理解が不足している様にも思えて成りません。
失礼ですが、貴方様には荷の重い作品を作ろうとしている様に思われます。
何が問題かを具体的に述べると以下の様になります。
1) 上下それぞれ7キロ強の土を使っている事。
電動轆轤は、綺麗な形で薄く、速く作る道具です。逆に薄く挽ける事がその人の実力とも
言われています。それ故、直径35cm(生で)高さ20cm程度の作品を作るのにどう
してこれ程の土を使うのか理解できません。彫刻を施す為とも思われますが。この量では
かなりの肉厚になり、ひっくり返すのも一苦労します。その為、乾燥時に問題が発生する
のは、当然とも言えます。
実際問題として、作品が重過ぎて実用性はほとんど感じられません。但し、展示会などに
出品する場合には、あえて実用性を無視する事も有りますが・・・
勿論、実用性がなくても良いのですが、制作時や持ち運び時、使用時には重過ぎて取り扱い
が困難になります。もし私が電動轆轤で作るとすあれば、上下各々2~2.5Kgも有れば
十分です。
2) 明窓窯からの提案です。
上記作品を電動轆轤で水挽するのではなく、くりぬき(刳り貫き)方式で作る事です。
この方法であれば、水挽きを行いませんので、乾燥のトラブルを防ぐ事ができます。
実際に陶芸作家の方には、この方式で箱物を作っている方もいます。
その手順は以下の様になります。
① 素地を必要な外形にする。
良く練った素地を必要な形にし、素地を強く叩き締めます。出来れば亀板上に据えます
叩き棒や板が締めれば更に良くなります。実際には本体側の円盤と蓋側の円盤の二枚に
した方が均等に乾燥し易いです。当然この段階では、空洞は無く無垢(むく)の状態です
この状態で削れる程度まで乾燥させます。ちなみに今回の例ですと、直径35cmとし、
高さは蓋の合わせ目を削る事を考慮して、2~3cm高くし、11~12cmにします。
② 削りは電動轆轤上で行います。
ⅰ) 轆轤上にセットし、轆轤を回転させながら、カンナ等を用いて外形を大まかに削り
ます。
ⅱ) 本体(器)側、蓋側と別々に内部を刳り貫きます。
勿論、内側を先に削っても問題ありません。
今回は円形ですので、轆轤を回転させながら削る事ができます。当然蓋側はひっくり返
して削ります。蓋の内側は緩やかなアーチ(鍋底)にします。当然ですが、アーチが急
な程底は落ちません。但し、彫刻を施す部分は、若干肉を厚くします。その際底の肉厚
を測定して置きます。簡単な方法は針を中央に突き刺せば測定できます。尚乾燥が甘い
場合には、削っては乾かし削っては乾かすを繰り返します。問題は肉厚です、成るべく
偏肉に成らない様にします
ⅲ) 合わせ目を削り出す。
蓋物の合わせ方には色々な方法があります。基本的には本体と蓋がぴったり合わさる事
ですが、焼成時の歪みや、施釉の事も考慮して、若干のガタ(隙間)が必要です。
実際に合わせ、ガタを確認します。
ⅳ)上下合わせた状態で全体の外形を削り出します。
特に蓋の肩の部分が偏肉に成らない様にします。その為には、本体より取り外し実際に
厚みを指で確認します。(蓋を何度も外したり合わせたりすることで、合わせ目が欠け
たりするのが怖いため一応指で叩いて確認しているつもりですが滅多に外してま
せん。)とありますが肉厚が厚い場合には、この様な方法では、確認は取れません。
合わせ目の欠けが怖いと言う事は縁が極端に肉薄なのでしょうか?。それとも重たい
為でしょうか?一般には壊れる恐れはほとんど有りませんので、何度でも取り外す事が
可能なはずです。
ⅳ) 蓋の乾燥は、内側を上にして行います。
回転が掛かったり、天井部分に全重量が掛かる場合には、ドーナツ状にしたタオル等で
周囲を支えて下さい。又は布を敷いたボール等の丸い器の内側に置くとより安全です。
但し、乾燥が進んでいる事や、軽量に作る事で、そのまま逆さにしても。変形の恐れは
少ないです。
3) 最も重要な問題点は、「轆轤のあと、完全に乾燥させてから、もしくは素焼き後に再度
調合した化粧土のようなものを高く塗り重ねて彫刻し、再度素焼き、本焼きというものを
つくっています。」の部分です。失礼ですが、化粧土に付いての認識(知識)を余り持ち
合わせていない感じがします。化粧掛けを高く(厚く)塗る事は、大きな失敗に繋がり
ます。更にその上から彫刻を施したいとのご希望ですが、ほとんど不可能な事に挑戦して
いる様にみえます。なぜなら、素地と化粧土との相性(施すタイミング)、素焼き前と後
での化粧土の調合の違い、施す(塗る)方法等を理解していないと、化粧土はどんどん剥
がれてしまいます。当然厚く塗れば厚くなる程、剥がれや表面と素地自体の割れ(崩壊)
を招きます。
彫刻後に化粧土を、薄く施すならば、可能性は増えますが、厚く塗った化粧土に彫刻を施
す事はほとんどまず無理と思われます。化粧掛けはある意味、作品の形作りより難しい
作業と言えます。試作品は化粧掛けや彫刻まで進んでいるのでしょうか?
半磁器土なのに、危険を冒してまで白化粧を施す理由がいまいち判りません。半磁器土と
白化粧土との差は、それ程大きくは無いと思われるからです。
4) 結論
当方から見ると、失礼ですが、貴方様の技量(実力)では、かなり荷の重い作品です。
設計段階から再度検討が必要と思われます。いきなり大物ではなく、段階的に進める事を
薦めます。l
先生がおられる様ですので、良く相談して設計、段取り、制作方法等を決めてください。
以上、かなり厳しく述べましたが、轆轤技術だけでなくその他の分野でも、陶芸は奥の
深い物です。 判ったつもりでも思うように行かない物です。一つ一つ技術の積み重ね
が早道です。
尚、困難に挑戦する事はとても大切な事ですので、チャレンジ精神を持ち続けて下さい。
疑問、質問が有りましたら、随時コメントしてください。
以上