わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

陶磁器の絵付け (釉裏金彩)

2010-01-15 22:55:25 | 作品の装飾と陶磁器の絵付け
釉裏金彩(ゆうり、きんさい)

 金液ではなく、金箔を使った、装飾方法に、釉裏金彩と言う、技法が有ります。

 ① 厚さの異なった金箔を、切り取って、模様をつくり、その上から、透明度の高い釉薬を、掛けて

   焼き上げる方法で、絵の具を使って筆で描く、金襴手とは、大きく異なります。

 ② 釉裏金彩の技法は、昭和30年代、竹田有恒(たけだ、ありつね、1896~1976年)氏によって、

   生み出された技法です。

   その後、石川県小松市高堂町の、錦山窯の三代目、吉田美統(みのり)氏により、30年以上に渡り、

   釉裏金彩の研究が、続けられます。

   釉裏金彩は、九谷焼と、金箔の技術を融合して出来た、加賀地方ならではの、独特の技法です。

   吉田美統氏の、釉裏金彩の技法は、平成13年に、国の無形文化財(人間国宝)に、認定されます。

 ③ 釉裏金彩は、釉薬の下に、金箔を置くことで、金箔が透明の釉薬によって、柔らか味が出ます。

   又、従来の金彩は、本焼き後に、金を塗るので、使ううちに、剥がれるという、欠点がありました。

   釉裏金彩は、釉を金箔の上に施すので、金箔が剥がれるのを、防ぐ役割もあります。

 ④ 吉田氏の釉裏金彩では、2種類の厚さの金箔が、使われています。

   薄い金箔(薄箔)と、厚い金箔(厚箔)を、場面ごとに使い分けることで、立体感が出ます。
   
   薄箔は、出来上がると、釉に溶け込む様に、薄く透けて、見える様になります。

   一方、厚箔は金箔が、はっきりと現れれます。

 ⑤ 釉裏金彩は、多くの作業工程を要し、難しい作業と、手間が掛かります。

   窯焚も、5回は必要で、本焼きした後、漆を塗り、金箔を模様通りに、切り取り、

   漆の乾き具合を見て、丁寧に貼っていきます。

   本焼きした釉面は、金箔の背景色になり、金箔の表情も、大きく変わります。

  ⑥ 吉田氏の、釉裏金彩の、作業工程の概要

   ) 作品(磁器)を、成形し、素焼、本焼の2回焼くと、真っ白な磁器が、出来上がります。

   ) 白い磁器全面に、釉(上絵の具)を掛けます。吉田氏の作品にはグレー、紫、黄、緑、赤等の、

      背景の色によって、金箔の雰囲気が、異なって表現されます。

   ) 3回目の窯入れで、背景色を器に、焼き付けます。

   ) トレーシングペーパーにつけた、デザインを、ペーパーの上から、なぞり器に移します。

      器に付けた、下絵に合わせて、金箔を、鋏で一枚ずつ、切り取ります。
   
      細かいデザインでは、100枚以上の金箔を、用いる事もあります。

   ) 金箔の型が、全て切り揃ったら、一枚づつ、のりで貼り付けます。

      下絵の上に、金箔をピンセットで、置いていきます。

      薄い金箔に、皺がよったり、重なったりし無い様にします。

   ) 金箔を載せた後、軽く真綿で叩いて、金箔を器の面に、ぴったり合う様に、伸ばします。

   ) 金箔を貼り終えると、低温で金箔を焼き付けます。

      この4度目の窯入れで、器の表面にある、不純物を取り除く、効果もあります。

   ) 最後に、透明釉を掛けます。筆で丁寧に金箔の上から、器全体に掛けます。

   ) 5回目の焼成で、完成です。

      薄箔、厚箔が、はっきりと現れ、作品自体に、金箔によるコントラストが、できます。

  尚、釉裏金彩の技法は、手間隙の掛かる、手作業です。 現在この技法を使い、活躍している方に、

  佐賀県嬉野町の、小野次郎氏がいます。

 ・ 吉田美統氏や、小野次郎氏の作品は、インターネット上でも、見る事が出来ます。

   興味の有る方は、吉田美統、又は、小野次郎、釉裏金彩で、検索して下さい。


 以下次回に続きます。

 釉裏金彩 

 
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1 コメント

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Unknown (はな)
2024-11-23 05:08:53
こんにちは。
質問を受け付けているとの事で
お聞きしたいことがございます。

釉裏金彩(といっても、金粉を振る程度ですが)をしたいと思っています。
・高温だと溶けてしまうので、1000度以下の透明釉薬を探しています。市販では、楽焼き用の釉薬しか見つかりませんでしたが、かけてみると少し白濁していました。
どのような釉薬を1番上にかければ良いと思いますか。
○○系の釉薬を手作りするべき、等ご教授ください。

また、弁柄について
ベンガラの粉末で鉄絵をし、高光沢透明釉というのをかけ、1230度で焼成しました。
すると鉄絵が完全に消えてしまいました。透明釉の材料が良くなかったのでしょうか。(商品ページを見ても、材料が何なのか書いていませんでした……。)それとも、温度が高すぎたのでしょうか。
もしよろしければ、ご教授ください。
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