5) 絵唐津に付いて。
⑥ 絵付けされた作品。
作品の種類は、代表的な壷や茶碗の他、大皿、水指、花生、向付、大鉢、片口、茶入、香炉、
香合など多種多様です。中でも茶陶と関係深い、茶碗や向付、皿や鉢類に多く見られます。
) 作品のほとんどが轆轤水挽法で作っています。後で述べる、四方(よほう)向付や、
撫四方なぜよほう)、四方入隅(よほういれずみ)等の方形や沓形、編笠など歪んだ形の
作品も轆轤挽き後に変形させ作られています。
尚、絵唐津用の素地は、比較的白色の為、素地に直接絵付けしています。
) 壷: 器形は提灯(ちょうちん)形と算盤(そりばん)玉形に大別されます。
いずれも李朝で好んで作られていた形の壷です。
a) 提灯形は、胴が横方向に丸く張り出した形です。
やや縦長の物と、平らべったい形があります。
b) 算盤玉形は、張り出した胴が角度を付けて、折れ曲がった形をしています。
轆轤挽き時は緩いカーブであったものを、削り作業で稜を立てたものと思われます。
c) 絵柄は、草文、唐草文、菖蒲(あやめ)文、木賊(とくさ)文、葦(あし)文、千鳥
片車文、柿文などがあります。
d) 壷の用途は、小さな物は葉茶葉入れと思われます。口径がやや広い壷は、水指として
使用されていた様です。
e) 著名な絵唐津壷の逸品には以下の物があります。
・ 絵唐津柿文壷: 出光美術館蔵。甕屋の谷窯。小型の為、葉茶壷と見なされています
高さ 16.7cm、口径 9.4cm、胴径 17.9cm
器表面いっぱいに、実が成った一本の柿の木と枝が描かれています。
肩に三つ耳が付けられ、正面(柿の幹が描かれた方向)の耳には五個の擂座(るいざ)
が付けられているのが稀です。注:擂座とは、太鼓の縁の鋲(びょう)の事です。
・ 絵唐津葦文壷: 出光美術館蔵。甕屋の谷窯の名品。
高さ 16.1cm、口径 15.5~16.6cm、胴径 22.9cm、高台径 10.7cm
塩笥(しおげ)形の壷で、桧垣風に描かれた草むらの中に、一本の葦と花が
描かれています。
・ 絵唐津蘆唐草文壷: 日本民芸館蔵。 典型的な算盤玉形の壷です。
高さ 13.9cm、口径 15.0cm、底径 8.9cm
元来、台所の味噌や醤油を入れる容器として使われていた物と思われます。
還元焼成の為、釉肌はオリーブ色をしています。同寸で同様な文様の陶片が一之瀬
高麗神窯から出土しています。
) 茶碗類:
「一楽二萩三唐津」と言う言葉があります。茶道に使われる器に付いて述べた物です。
a) 唐津焼は、織部の様な奇抜で個性の強い焼き物ではない為に、逆に「侘び茶」に対して
最適な器になったと思われます。
b) 著名な茶碗に付いて。
・ 絵唐津木賊(とくさ)文茶碗: 甕屋の谷窯。 田中丸コレクション蔵。
高さ 9.0cm、口径 12.7cm、高台径 4.8cm
絵唐津の名碗として、大変有名な茶碗です。背が高く見込みの深い茶碗で、口縁が
やや外側に反っています。胴の両面に木賊(長さが異なる複数の縦線)の絵付けが
あります。
・ 絵唐津菖蒲文茶碗: 田中丸コレクション蔵。
高さ 9.3cm、口径 12.2cm、高台径 6.5cm
絵唐津の筆頭に上げられる半筒茶碗です。茶碗の裏表に鉄砂で菖蒲文が描かれ、描き方
に配慮された様子が見受けられます。失透性の長石釉が掛けられています。
表面には細かい貫入が多数あります。
・ 絵唐津草文茶碗: 初期絵唐津の名碗です。
高さ 8.2cm、口径 13.8cm、高台径 6.0cm
絵付けの方法も天衣無縫で素朴な感じですし、釉掛も無頓着に施釉した為、釉が片側に
大きく流れ落ちています。この無頓着さが唐津の良い処といえます。
・ 絵唐津山水文沓茶碗: 甕屋の谷窯
高さ 8.2cm、口径 11.6~17.9cm、高台径 5.7cm
轆轤で水挽した碗を楕円形に歪ませ、腰に強い段差を設けた典型的な沓茶碗です。
胴には、太い筆で判然としない山水風の絵柄と、黒い点々が付けられています。
) 皿、鉢類に付いて。
以下次回に続きます。
⑥ 絵付けされた作品。
作品の種類は、代表的な壷や茶碗の他、大皿、水指、花生、向付、大鉢、片口、茶入、香炉、
香合など多種多様です。中でも茶陶と関係深い、茶碗や向付、皿や鉢類に多く見られます。
) 作品のほとんどが轆轤水挽法で作っています。後で述べる、四方(よほう)向付や、
撫四方なぜよほう)、四方入隅(よほういれずみ)等の方形や沓形、編笠など歪んだ形の
作品も轆轤挽き後に変形させ作られています。
尚、絵唐津用の素地は、比較的白色の為、素地に直接絵付けしています。
) 壷: 器形は提灯(ちょうちん)形と算盤(そりばん)玉形に大別されます。
いずれも李朝で好んで作られていた形の壷です。
a) 提灯形は、胴が横方向に丸く張り出した形です。
やや縦長の物と、平らべったい形があります。
b) 算盤玉形は、張り出した胴が角度を付けて、折れ曲がった形をしています。
轆轤挽き時は緩いカーブであったものを、削り作業で稜を立てたものと思われます。
c) 絵柄は、草文、唐草文、菖蒲(あやめ)文、木賊(とくさ)文、葦(あし)文、千鳥
片車文、柿文などがあります。
d) 壷の用途は、小さな物は葉茶葉入れと思われます。口径がやや広い壷は、水指として
使用されていた様です。
e) 著名な絵唐津壷の逸品には以下の物があります。
・ 絵唐津柿文壷: 出光美術館蔵。甕屋の谷窯。小型の為、葉茶壷と見なされています
高さ 16.7cm、口径 9.4cm、胴径 17.9cm
器表面いっぱいに、実が成った一本の柿の木と枝が描かれています。
肩に三つ耳が付けられ、正面(柿の幹が描かれた方向)の耳には五個の擂座(るいざ)
が付けられているのが稀です。注:擂座とは、太鼓の縁の鋲(びょう)の事です。
・ 絵唐津葦文壷: 出光美術館蔵。甕屋の谷窯の名品。
高さ 16.1cm、口径 15.5~16.6cm、胴径 22.9cm、高台径 10.7cm
塩笥(しおげ)形の壷で、桧垣風に描かれた草むらの中に、一本の葦と花が
描かれています。
・ 絵唐津蘆唐草文壷: 日本民芸館蔵。 典型的な算盤玉形の壷です。
高さ 13.9cm、口径 15.0cm、底径 8.9cm
元来、台所の味噌や醤油を入れる容器として使われていた物と思われます。
還元焼成の為、釉肌はオリーブ色をしています。同寸で同様な文様の陶片が一之瀬
高麗神窯から出土しています。
) 茶碗類:
「一楽二萩三唐津」と言う言葉があります。茶道に使われる器に付いて述べた物です。
a) 唐津焼は、織部の様な奇抜で個性の強い焼き物ではない為に、逆に「侘び茶」に対して
最適な器になったと思われます。
b) 著名な茶碗に付いて。
・ 絵唐津木賊(とくさ)文茶碗: 甕屋の谷窯。 田中丸コレクション蔵。
高さ 9.0cm、口径 12.7cm、高台径 4.8cm
絵唐津の名碗として、大変有名な茶碗です。背が高く見込みの深い茶碗で、口縁が
やや外側に反っています。胴の両面に木賊(長さが異なる複数の縦線)の絵付けが
あります。
・ 絵唐津菖蒲文茶碗: 田中丸コレクション蔵。
高さ 9.3cm、口径 12.2cm、高台径 6.5cm
絵唐津の筆頭に上げられる半筒茶碗です。茶碗の裏表に鉄砂で菖蒲文が描かれ、描き方
に配慮された様子が見受けられます。失透性の長石釉が掛けられています。
表面には細かい貫入が多数あります。
・ 絵唐津草文茶碗: 初期絵唐津の名碗です。
高さ 8.2cm、口径 13.8cm、高台径 6.0cm
絵付けの方法も天衣無縫で素朴な感じですし、釉掛も無頓着に施釉した為、釉が片側に
大きく流れ落ちています。この無頓着さが唐津の良い処といえます。
・ 絵唐津山水文沓茶碗: 甕屋の谷窯
高さ 8.2cm、口径 11.6~17.9cm、高台径 5.7cm
轆轤で水挽した碗を楕円形に歪ませ、腰に強い段差を設けた典型的な沓茶碗です。
胴には、太い筆で判然としない山水風の絵柄と、黒い点々が付けられています。
) 皿、鉢類に付いて。
以下次回に続きます。