5) C-14法、TL法、以外の機器を用いた方法。(前回の続きです。)
② 中性子放射化分析法(NAA法)。
焼き物の胎土を構成する元素の分析から、その産地を特定する事が出来る方法です。
微量成分の分析法として優れている為、良く利用されている方法です。
昔は、各地の窯場で生産される焼き物は、その土地の土(磁土)を使いました。各地の土は、
同じような成分であっても、微量な成分構成に差があります。その違いを検出する方法です。
) 原理。
a) 安定している元素の原子核に、加速器や原子炉で作られた中性子を衝突させます。
中性子を原子核に吸収させて、不安定な原子核にする事を「放射化」と言います。
b) この不安定な原子核は、崩壊(放射性壊変)をして、再び安定な核に変わります。
c) 放射性核種が壊変し、原子核数が半分になるのに要する時間は常に一定であり、
これを半減期と呼びます。
注: 放射性核種とは、自然に放射線を放出して崩壊し、他の原子核に変わる原子核の
事です。自然界に存在する天然放射性核種(ウラン等)と、人工放射性核種とがあり
ます。
半減期は核種に固有であり、また壊変に伴って放出される放射線のエネルギーも核種に
固有になっています。
d) それ故、半減期と放射線のエネルギーを測定する事により、核種(元素の種類)が
判り、更に放射線の強度を測定する事により、核種の量(原子核の個数)を決める事
ができます。
) 放射化分析法における利点。
a) 試料の形状に制約がなく,少量の試料で多元素を同時に分析する事が可能です。
特に焼き物に於いては、胎土の構成元素の比率や、微量元素の測定が可能になります。
胎土の微量元素の量を詳細に比較できる事で、胎土の産地が特定できます。
b) 化学操作を行わないので、不純物の混入の恐れが少ないです。
c) 試料を破壊せずに分析でき、試料の化学組成の高感度分析を行うことができます。
) 放射化分析法の利用例。
「古九谷」が加賀の九谷で作られた物か、肥前の有田で作られた物かの論争が長く続いて
いましたが、この分析方法から「有田産」と判明しました。
③ 紫外線照射法(BL法)。
塗料を使った共色直しの贋作は多発しており、数年たっても変色しない塗料も登場してきて
います。それを見抜くのも容易ではないとの事です。紫外線照射法は暗い場所で、ブラック
ライト(近紫外線)を当てると言う、簡単な方法で見破る事が出来ます。
) 原理。
一般に塗料には、蛍光物質が含まれています。暗所で紫外線を当てると、塗料を塗った部分は
白っぽく発光します。
) 紫外線は「近紫外線」と呼ばれる、可視光線と紫外線の中間の波長ですので、人の眼には
無害との事です。
) ブラックライト(BL)の光自体は、人間の目にほとんど見えません。
BLを当てた物体はその中の蛍光体だけが発光するため、非破壊検査に使われるます。
) 但し、最近では、蛍光体の入っていない塗料もありますので、これには使えません。
) このライトは容易に入手が出来ます。電球型と蛍光灯タイプがあり、千数百円~一万円
程度の価格です。
6) 古陶磁に測定機器を使う事に付いて。
① 上記の検査で使う機器は、個人で持てる物と、持てない物があります。
規模の大きい物や、自分では検査できず、専門家に依頼する事が多いです。
各大学や研究機関が保有する特殊の機械です。それ故、誰でも簡単に検査に掛ける事は出来
ません。
② 重要な部分は人間が担当しています。
試料の採取と選定、機器の操作、データの収集と解析など人手に頼っています。
最終的な決定は、人間が行う事に成ります。
③ 現在の機器には、風化の具合や古色の様子を読み取る事さえ出来る、機器も登場しているとの
事です。
以下次回に続きます。
② 中性子放射化分析法(NAA法)。
焼き物の胎土を構成する元素の分析から、その産地を特定する事が出来る方法です。
微量成分の分析法として優れている為、良く利用されている方法です。
昔は、各地の窯場で生産される焼き物は、その土地の土(磁土)を使いました。各地の土は、
同じような成分であっても、微量な成分構成に差があります。その違いを検出する方法です。
) 原理。
a) 安定している元素の原子核に、加速器や原子炉で作られた中性子を衝突させます。
中性子を原子核に吸収させて、不安定な原子核にする事を「放射化」と言います。
b) この不安定な原子核は、崩壊(放射性壊変)をして、再び安定な核に変わります。
c) 放射性核種が壊変し、原子核数が半分になるのに要する時間は常に一定であり、
これを半減期と呼びます。
注: 放射性核種とは、自然に放射線を放出して崩壊し、他の原子核に変わる原子核の
事です。自然界に存在する天然放射性核種(ウラン等)と、人工放射性核種とがあり
ます。
半減期は核種に固有であり、また壊変に伴って放出される放射線のエネルギーも核種に
固有になっています。
d) それ故、半減期と放射線のエネルギーを測定する事により、核種(元素の種類)が
判り、更に放射線の強度を測定する事により、核種の量(原子核の個数)を決める事
ができます。
) 放射化分析法における利点。
a) 試料の形状に制約がなく,少量の試料で多元素を同時に分析する事が可能です。
特に焼き物に於いては、胎土の構成元素の比率や、微量元素の測定が可能になります。
胎土の微量元素の量を詳細に比較できる事で、胎土の産地が特定できます。
b) 化学操作を行わないので、不純物の混入の恐れが少ないです。
c) 試料を破壊せずに分析でき、試料の化学組成の高感度分析を行うことができます。
) 放射化分析法の利用例。
「古九谷」が加賀の九谷で作られた物か、肥前の有田で作られた物かの論争が長く続いて
いましたが、この分析方法から「有田産」と判明しました。
③ 紫外線照射法(BL法)。
塗料を使った共色直しの贋作は多発しており、数年たっても変色しない塗料も登場してきて
います。それを見抜くのも容易ではないとの事です。紫外線照射法は暗い場所で、ブラック
ライト(近紫外線)を当てると言う、簡単な方法で見破る事が出来ます。
) 原理。
一般に塗料には、蛍光物質が含まれています。暗所で紫外線を当てると、塗料を塗った部分は
白っぽく発光します。
) 紫外線は「近紫外線」と呼ばれる、可視光線と紫外線の中間の波長ですので、人の眼には
無害との事です。
) ブラックライト(BL)の光自体は、人間の目にほとんど見えません。
BLを当てた物体はその中の蛍光体だけが発光するため、非破壊検査に使われるます。
) 但し、最近では、蛍光体の入っていない塗料もありますので、これには使えません。
) このライトは容易に入手が出来ます。電球型と蛍光灯タイプがあり、千数百円~一万円
程度の価格です。
6) 古陶磁に測定機器を使う事に付いて。
① 上記の検査で使う機器は、個人で持てる物と、持てない物があります。
規模の大きい物や、自分では検査できず、専門家に依頼する事が多いです。
各大学や研究機関が保有する特殊の機械です。それ故、誰でも簡単に検査に掛ける事は出来
ません。
② 重要な部分は人間が担当しています。
試料の採取と選定、機器の操作、データの収集と解析など人手に頼っています。
最終的な決定は、人間が行う事に成ります。
③ 現在の機器には、風化の具合や古色の様子を読み取る事さえ出来る、機器も登場しているとの
事です。
以下次回に続きます。