焼き物の着物とは、粘土や磁土などの素地を覆い隠す釉や灰などの事です。
・ 縄文や弥生土器などは、着物を着ていない裸の様な物です。
この頃はいまだ、釉が発見(発明)されていませんので、当然、裸の状態になります。
・ 焼締陶器は、裸の上に薄絹を纏った(まとった))様に思われます。
特に備前焼の「火襷(たすき)」などは、その感じがピッタリします。
黒陶などは、墨染めの衣を彷彿させます。
・ 素地に白化粧土を施した作品は、「色の白いは七難隠す」の諺通り、色黒の肌を綺麗に見せる
事で、欠点を隠す衣装と言えるものです。
・ 施釉した陶磁器は普段着や、お出かけ用の着物(晴れ着)を纏っています。
無地一色のものなどは普段着(家庭用、日常用)に、結晶釉の様に無地に小さな模様が入った
ものなどは一寸した余所行き(よそゆき)き用(特別なご馳走用)と、その着物の特徴を生かし
色々な場面で使い分けが行われます。
・ 下絵付けされた陶磁器では、染付け陶器は、藍染(あいぞめ)された普段着の絣(かすり)の様です
同じ下絵でも、多色の色を使う場合には、「友禅染」の様に、晴れの舞台に立つ着物の感が
あります。
・ 更に、上絵付は、貴族の十二単の様な優雅な感じにないます。
◎ 着物も陶磁器もその目的は同じです。
即ち、一般には自分(着物や陶磁器)が目立つのではなく、着る人や盛られる料理、活けられる
草花などを引き立てる、あくまでも、裏方(脇役)としての働きです。
但し、一部の美術品や歴史的価値のあるものは、単体で存在価値がありのも事実です。
馬子にも衣装と言われる様に、身に纏う衣装によって見栄えもし、評価の良し悪しも変わるものです。
特に陶磁器では形よりも釉、即ち着物の良し悪しで、評価される事の方が多いかも知れません。
今回のテーマは、色彩に付いて述べたいと思います。
1) 施釉する際、色に迷う事が多いです。
釉には色々の種類があります。世の中には、その数百~数千以上が存在します。
① 迷う原因は、色数が多い事もありますが、どの様な色を使えば、どの様な効果があるかが、
はっきり自覚できない事に由来します。
② 色には心理作用が存在します。
時代時代によって流行色が存在し、色は世相を反映する物とも言われる場合があります。
但し、時代に関係なく一般的(普遍的)な感情を引き起こす色も存在します。
a) 良く知られているのは、暖色系と呼ばれる赤、黄色、オレンジ系の色で温か味を引き
出す色です。冬場など寒い時期には打って付けです。
b) 寒色系と呼ばれるのは、青や緑色系で冷たさや、涼しさを表します。
c) 明度(めいど=後日説明します)の高い青色は、柔らかさや清潔感、若々しさのイメージです
し、明度の低い青色は、重厚さ高貴さ、落ち着いたイメージを醸し出します。
d) 反対色や補色(後日説明)を使えば、少ない色数で強く人目を引く事が出来ます。
以上の事はほんの一例で、色に関する項目は無数に存在します。それ故、色の性質を知れば
知るほど、色を決めるのは難しい事に成るのですが、より良い作品に仕上げる為には、ある程度の
色に対する知識を持つのも悪い事では有りません。
今回のテーマは色の持つ不思議な効果など、色に関わる事柄を、お話したいと思っています。
以下次回に続く。